責任はマンション住人が負う可能性〜逗子斜面崩落・女子高生死亡事故

民法上、「責任」はマンションの住人が負う可能性。

» 2020年02月14日 10時00分 公開
[ニッポン放送(1242.com)]
ニッポン放送

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月11日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。逗子の斜面崩落事故について解説した。

フォト 逗子市の道路脇斜面で土砂崩れ 通行人の18歳女性死亡 現場に集まった報道陣=2020年2月5日、神奈川県逗子市 写真提供:産経新聞社

逗子の斜面崩落、女子高生死亡事故〜責任問題の所在は

2月5日、神奈川県逗子市で市道沿いの傾斜地の一部が崩落し、土砂の下敷きになった女子高生が死亡した事故。崩落した斜面は県が2011年に土砂災害警戒区域に指定していたが、私有地のため、安全対策などは所有者にあることから、責任の所在の明確化が注目されています。

森田)神奈川県逗子市池子2丁目で道路脇の斜面が崩れて、歩いていた18歳の県立高校の女子生徒が巻き込まれて死亡したというものです。崩れた土砂の量はおよそ68トンです。崩れたのはマンションが建つ土地の脇にある斜面で、高さおよそ16メートルだったということです。斜面は私有地で、神奈川県が2011年に土砂災害警戒区域に指定しているのですが、建築制限はかかっていないということです。現場を訪れて調査した国土交通省の担当者は「崩落の原因は凝灰岩の風化だ」という見方を示しています。寒さや風の強さなどいくつかの悪条件が重なって、風化が進んだと考えられるということです。専門家も「風化で脆くなって崩れるということはどこでも起きうるが、崩壊の予測は困難だ」と言っているのですね。通勤、通学で行きかう人の安全に果たして誰が責任を負うのか。マンションの私有地であったこの斜面ですが、県はこの土砂災害区域に指定はしました。そして、市は斜面下の市道を管理しています。この責任が非常に曖昧な気がします。

フォト 石積み式の擁壁(練り積み造擁壁)-Wikipedia「擁壁」より

民法上の「責任」はマンションの住人

野村)まずは今回、この下敷きになって亡くなってしまった女子高生は本当に可哀想だと思います。何の罪もないのにこのような事故に巻き込まれてしまって。もう二度とこのようなことが起こらないようにしていくのが重要です。そのなかで、責任を負う人がそれにいちばん注意していくべきなので、誰が最終的に責任を負うのかをはっきりとさせることは非常に重要だと思います。驚く方がおられると思いますが、現在の民法の仕組みからいくと、その土地はマンションの住人の人たちの共有地になっているので、マンションの人たちが責任を負うのではないかと思うのです。これは民法のなかに土地、工作物についての責任の規定がありまして、土地に付属している工作物が原因で事故が起きた場合、普通以上に厳しい責任を負わせることになっているのです。まずは、建物や塀などの設置について瑕疵があった場合。通常の性能より劣っている状態にあった場合には、その土地を占有している人、例えば所有者が別にいて賃貸している人も占有者になるのですが、こういう人たちが責任を負うという規定になっているのです。それについては自分に過失がないということが立証できればそこで責任は免れることになるのですが、そのような場合には所有者の人が無過失で責任を負うということになっているのです。

今回については、その土地はマンションの下の部分ですよね。そこには擁壁というものがあって、その上の法面(のりめん)と言われる土地だと思うのですが、これは結局所有者がしっかりと管理していかなければいけないということで、管理に瑕疵があると所有者が無過失で責任を負うということになっているのですよ。これは寝耳に水だと思います。マンションに住んでいる人たちは、そんな責任を自分たちが負っているとは思っていないはずです。こういうことが起こってしまった背景には、その自覚を持っていない状況があって、自分たちの責任を回避するためにしっかり直しましょうという議論が起こってこなかったことにあるのです。万が一、自分たちの責任になるということがわかっていたら、多くの方々がちゃんとしなければいけないと思ったはずなのですが、ずっと長年にわたって放置されてきたことが今回の原因になってしまったという。

フォト 道路の両側に作られた法面(のりめん)- Wikipedia「法面」より

管理業者へ委託しても一次的な責任は負う

森田)でも、マンションは管理組合が所有者みたいな形で、管理組合から管理会社に契約して補修業務を担っていることが多いじゃないですか。そうすると、この管理会社が責任を取るということにはならないのでしょうか。

野村)基本的には、マンションの共有部分はみんなで所有していることになります。賃貸ではなく分譲マンションだった場合、マンションに住んでいる人の土地です。そこは「自分の土地が崩れて人に怪我をさせている」という状況になるわけです。しかし、管理組合にお願いして管理をしていた場合には、責任を負った所有者の人たちが管理組合のやり方に問題があったとして追及することがあるかもしれませんが、第一次的には所有者に責任がかかってくるということなのですね。

森田)しかし、こんな土砂崩れが起きそうな場所はたくさんあるということで、神奈川県は事故後に8,700ヵ所くらいを緊急点検したということですから、他にもこういう場所はたくさんあるわけで、これがマンションの所有者の責任だと言われたら困ります。

野村)それを気づかせる必要もあったと思うのです。県はこの場所を土砂災害警戒区域に指定していたわけです。今回は何もしていなかったのに急に崩落してきたのですが、急に災害が起こって大雨になった場合もそういったことが起こるのです。注意が必要なのですよね。

radikoのタイムフリーを聴く

Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/05/news022.jpg 「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
  2. /nl/articles/2410/05/news040.jpg 伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
  3. /nl/articles/2410/02/news116.jpg 余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
  4. /nl/articles/2410/05/news023.jpg 七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
  5. /nl/articles/2410/05/news018.jpg 野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
  6. /nl/articles/2410/05/news012.jpg 「あのお客さんに幸あれっ!」 小銭の出し方が完璧な“神客”にレジ店員感激 会計がスムーズになる配慮が参考になる
  7. /nl/articles/2410/04/news048.jpg 「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
  8. /nl/articles/2410/04/news040.jpg 50代女性「モンチッチみたいにしてほしい」→美容師がプロのワザを見せ…… 別人級の変身に「めっちゃお洒落」「すごい!」
  9. /nl/articles/2410/04/news025.jpg 「これが免許証の写真???」 コスプレイヤーが公開した“信じられない”免許証が話題 コスプレ姿との比較に「両方とも可愛いすぎる」
  10. /nl/articles/2410/05/news032.jpg 大型犬が18年間、ドアを開け続けた結果……そうはならんやろな驚きの末路に「どうしたらこんな風になるのよ」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
  2. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  3. トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
  4. 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
  5. そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
  6. 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
  7. 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
  8. “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
  9. 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
  10. 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声