日産自動車はなぜ赤字に転落したのか
ゴーン時代の負の遺産を払拭できるか
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。18日に行われた日産の臨時株主総会のニュースについて解説した。
日産が臨時株主総会、新体制が正式にスタート
内田社長)本日の皆様にご賛同いただけましたら、私をはじめ執行体制が3名、および期中で辞任した取締役1名の後任候補が、新たに取締役に就任いたします。
日産自動車は18日に臨時株主総会を開き、内田誠社長など4人を新たに取締役に選任した。日産自動車は2019年10月〜12月の決算で純損益が11年ぶりの赤字となり、2020年3月期の通期業績も下方修正している。
飯田)株主の承認を得ましたが、正式スタートの新体制は厳しい意見も飛び交っていたということです。
ゴーン時代の負の遺産を払拭できるか〜やり過ぎたコストカット
佐々木)これはゴーン時代の負の遺産を、どこまで払拭できるかという話です。ゴーンさんが日産の社長になったのは1999年です。「失われた20年」と言われた、平成の時代を象徴するような人です。当初彼がやったコストカットが批判されていますが、当時としては悪いことではありませんでした。日本ではバブル時代に野放図にコストを使いまくって、適当な経営をしている会社が多かったのです。そこをきちんと絞って、低コストでいいものをつくれる体制に変えること自体は、まったく悪いことではありませんでした。ところが、日本の他の企業もそうですが、コストカットをやり過ぎました。リストラしてコストを減らせば、何でもうまく行くと思いこんでしまった。外食でも人を減らして、深夜は1人だけの従業員にして行った。「人を減らせば儲かる」となってしまったのが、結局はよくなかったわけです。日産も同じで、当初の狙いはよかったのですが、やり過ぎました。普通であれば新車の開発期間は3〜4年で新しくするのが、10年くらい放置しているという。
飯田)同じデザインのまま放置している。
佐々木)ポルシェだったら10年放置してもいいですよ。でもそんなに放置している一方で、アメリカでは安売り合戦を行った。あとは個人に売れないからと無理をして、レンタカーに安く売りまくった。そうすると法人売りのものが中古市場に出まくって、中古価値が下がり、ますます売れなくなります。そして、どんどん値引きして、値引きしているわりには新しいものが出ず、いつまでも古いモデルが出回り、さらに売れなくなっているというのがいまの状況です。ここで開発にお金をかけて、いい車をつくってブランド価値を守れるかという、デフレ時代ではない、いまの時代に合わせた車の形をつくれるかが問われていると思います。
飯田)お話を伺っていると、かつては「いい車をつくろう」ということが前に出過ぎて、どんどんお金を使う体制だった。だからコストカットしたら、「コストをカットする」というところばかりになってしまった。その真ん中にバランス基点があると思うのですが。
佐々木)そうなのですよね。日本は一斉に走り出すと、みんな同じ方向に行ってしまう。
飯田)そればかりが評価されてしまう。
佐々木)そうではなく、バランスこそが大事なのだというところに立ち戻ることが必要だと思います。
飯田)その部分に、従業員への還元なども入りますよね。
自動運転をはじめ、新しい自動車産業の形にどう進んで行くか
佐々木)トヨタはものすごく進んでいますが、マース(MaaS/サービスとしてのモビリティ)や自動運転など、自動車産業の新しい形にどう進むのかということも問われていると思います。そこからも日産は遅れています。
飯田)もともと日産は電気自動車の部分で進んでいましたよね。
佐々木)最初は先進的でしたが、いつの間にか抜かれてしまいました。
飯田)ガソリン車から電動化と自動運転がセットになって、これからやって来るわけですよね。
佐々木)そうですね。ガソリン車などは売られなくなるでしょう。イギリスは売らないと言っていますからね。
飯田)環境面との整合性もあると。そうなれば莫大なコストがかかるわりに、つくる方は誰でもつくれてしまう。
佐々木)車自体が儲からない時代がやって来ます。そうすると、GAFAのようにプラットフォーム化しなければいけないのですが、そこまでの準備を日産ができているかという部分も問われて来ます。
飯田)日本の自動車産業全体の課題かもしれませんね。
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