これがお江戸のシャーロック・ホームズ 写楽が立ちどころに事件を解決する同人誌マンガ『江戸探偵写楽 まだらの組紐』:司書みさきの同人誌レビューノート
和風なホームズも面白い。
ひらりとページをめくれば、異世界や過去や未来……たちどころに違う場所にトリップできる本の世界。古今東西、多くのファンを魅了し、さまざまなバリエーションを生んできたシャーロック・ホームズの物語に、また新たな一面がプラスされました。
今回紹介する同人誌
『江戸探偵写楽 まだらの組紐』A5 12ページ 表紙・本文1色刷り
著者:桐丸ゆい
シャーロック・ホームズが江戸に登場!
時は江戸、雨の中尋ねてきた女人にいきなり、写楽法務(しゃらく のりちか)は言います。「ここまで駕籠でこられましたね?」と。まだ何も言わないうちに、細かな様相から相手の置かれた状況をばっちり把握してしまう、おそるべき観察眼。さすが、絵師にして江戸で唯一の探偵、写楽さん!
こちらの作品はコナン・ドイル著『シャーロック・ホームズ』シリーズの舞台を江戸に置き換えた4コママンガの同人誌です。
原作のどこを切り取るか? 知っていればなお楽しめそう
女人の願いは、「まだらの……くみひも……」と言い残してこと切れてしまった姉の死の謎を解くこと。依頼を引き受けた写楽は、藩医の経験を持ち写楽の助手を務める和田尊(わだ たける)とともに、現場へと向かうのです。ここまでで、シャーロック・ホームズの物語をご存じの方なら「ははーん」と思うポイントが幾つも登場しているのではないでしょうか。
短編の中でもなじみ深い「まだらの紐」をベースに、テンポよく4コママンガが進みます。テンポがいい、それもそのはず。こちらのご本は表紙や奥付も入れて全12ページにまとめられています。さっくり楽しく読み終わってから、はたと気付きました。本文は基本的に4コママンガで、ストーリーに使われているのは8ページ……総合計61コマ! 物語を追っているときには、あまりにスムーズに読めてしまうのですが、あらためていかに短編とはいえ、61コマのマンガで推理小説をまとめます!? と驚きです。原作を知っている方ならきっと、どこを採用し、どうまとめたか、そのポイントも楽しんでしまえることでしょう。
置き換えの面白さと江戸のムードの融合
なぜシャーロック・ホームズなのか、なぜ江戸なのか。それはこちらのご本では一切触れられていません。でも戸惑いもなくこの世界を楽しめてしまうのは、絵がとってもしっかりしているのが一因に挙げられると思います。
すがめた目つきのつんつん写楽さんと対照的な、目も頭もまんまるムードの和田さん。それぞれのキャラクターも立っている上、着ているものや使っているもの、江戸の暮らしの端々に描きこなれた筆致を感じます。実はプロとして江戸にまつわるマンガを描かれる作者さんのすっきりとした線で作品全体をまとめられているのがとても読みやすく、ロンドンから江戸への置き換えがちりばめられた世界に気兼ねなく飛びこむことができました。
江戸探偵写楽シリーズは『養生所患者』『独身の武家』『雷門の大地主』と続いています。毎回、中とじで薄い色の紙に1色のインクで刷られて、かわいくお手軽なのもうれしいポイントです。続刊も楽しみですね。
今週の余談
金曜日はカレーの日、とか曜日で区切りをつけるのっていいなと思い立ちました。日曜日って何をしているかしらと考えたら……同人誌即売会って日曜日が多いですね。土日に同人誌原稿に向かう方も多いですし、日曜日は同人誌の日!? この連載も微力ながら日曜日の同人誌のお楽しみになれますように!
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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104ページという力作。
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