日産にとって「魅力的なクルマ」とは?

「10年ぶりのブランニューモデル」として販売を開始した「キックス」や、7月15日に発表する「アリア」はなるほど、時流に乗っていると言えます。ただ……。

» 2020年07月13日 09時00分 公開
[ニッポン放送(1242.com)]
ニッポン放送

「報道部畑中デスクの独り言」(第198回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、日産における「魅力的なクルマ」について—

日産 日本に導入された日産のコンパクトSUV「キックス」(日産公式YouTubeから)

小欄では日産について、「とにかく魅力的なクルマを」と申し上げました。では、日産にとって魅力的なクルマとは何か? 仕向け地によって、魅力の“感度”は違いますが、特に日本のユーザーにとってはどうなのでしょうか?

軽自動車、コンパクトカー、5ナンバーミニバンはやはり「売れ筋」の分野でしょう。また、SUV(スポーツ多目的車)もまたしかり。そして「虎の子の技術」、電気自動車をはじめとする電動化技術も欠かせません。

そう考えると「10年ぶりのブランニューモデル」(星野朝子副社長)として販売を開始した「キックス」や、7月に発表される「アリア」はなるほど、時流に乗っていると言えます。ただ、先日発表された中期経営計画を見ると、「?」と感じざるを得ないところもあります。

例えば、日産は北米・日本・中国市場に集中するという方針を打ち出しましたが、日本らしさをどう出して行くのか。やはり“全体最適”のもとで、販売台数の多い北米、中国に寄せたクルマになって行くのでしょうか?

すべてとは言いませんが、サイズやデザインの面で北米や中国向けは大陸的でおおらかなクルマが多く、これらが日本になじむのかはやや疑問です。

国内販売における輸入乗用車の割合をみると、売れているのは欧州のメーカーです。例を挙げると、ダイムラーが展開するメルセデス・ベンツの5月の販売台数は、2691台(日本自動車輸入組合調べ)。新型コロナウイルスの影響で、各社とも台数を落としている事情はあるものの、これは三菱自動車、SUBARUの台数を上回っています。

日産 星野朝子副社長はオンラインによる発表会で「日本市場で10年ぶりのブランニューモデル」と語った(日産公式YouTubeから)

ダイムラーだけでなく、ドイツのVW、BMW、アウディ、BMWミニは、他国のメーカーより多い1000台以上の販売をマーク。クルマにおける日本人の欧州、とりわけ“ドイツ信奉”はかなりのものだと言わざるを得ません。日本人が好むのは大陸的なおおらかさではなく、ドイツ車のような合理的で精緻なクルマではないでしょうか?

もっとも、ルノーとの“すみ分け”もありますし、マネをすればいいというものではないのが、自動車ビジネスの難しいところではあるのですが…。

日産車のイメージは皆それぞれですが、私は適度なサイズで、見た目は多少武骨でも機能美にあふれ、「走る・曲がる・止まる」の基本性能がしっかりしているというものだと思います。そして、ユーザーによってその性能を自由に引き出す「懐の深さ」があるのが日産車ではないか…。

1960年〜1980年代に輩出した日産車のなかには、いまも愛されているクルマが多く、プレミアがついているものさえあります。ユーザーが「イジリ倒せる」に足る民間のパーツショップもあります。日産自身も予想できなかったことでしょうが、それはこのような「懐の深いクルマ」が多かったからではないでしょうか。

そういったクルマは畢竟、ユーザーに欲しいと思わせる「オーラ」を放ちます。翻っていまの日産車が30〜40年先に愛される存在となっているのか…日産の技術者には、ぜひそこを大事にしてほしいものです。

それは電動化や自動運転に技術がシフトしても決して矛盾しないはずですし、また、そうして行かねばなりません。求められる基本性能は時代によって変わるかも知れませんが、それさえも「懐の深さ」を示すことはできると思います。

また、「適度なサイズ」…これは日産に限ったことではありませんが、モデルチェンジごとに大きくなって行くクルマがいかに多いことか。国土の狭い日本です。登録車であればかつての小型車、いまでいうBセグメント、Cセグメントに日本車の真骨頂があると思うのですが、いかがでしょうか。

日産 2013年の東京モーターショーでお披露目されたコンセプトカー「IDx」 多くのファンから市販化が待ち望まれた

小欄では2013年の東京モーターショーで披露された「IDx」について、何度かご紹介しています。このクルマは、日産のかつての名車をモチーフにしたとみられるデザイン、サイズも手ごろで、これぞ日産のDNAと感じたものです。

ちなみにIDxという車名は、Dがローマ数字の500、xは同じく10、つまりDx=510でブルーバード510型のオマージュではないかとも言われました。ショーでの評判もよく、市販化への期待が高まりましたが、結局、実現には至らず。

ショーからしばらく経って市販化について聞いたとき、「ダメだった!」…当時の日産関係者の悔しそうな表情を思い出します。いま思うと、「魅力的なクルマ」になる素質は十分でした。

執筆中に、日産の歴代の名車をかたどった「カキノタネ」が発売されるというニュースが飛び込んで来ました。日産の開発拠点、神奈川県伊勢原市と伊勢原市内の食品メーカーが協力して製作したということです。

カキノタネと言えば、初代ブルーバード(310型)のテールランプを思い出します。これと関連があるかどうかは定かではありません。

名車がこういう形でよみがえるのはうれしいことではありますが、ファンにとって欲しいのはお菓子ではなく、皆をうならせる「本物のクルマ」であることは言うまでもありません。(了)

Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」