Amazonプライムにあふれる謎のB級映画を見てみるやつ 隠れた良作からZ級モンスターまで一挙レビュー
謎の映画紹介、3回目
世界全体で年間2000本以上の映画が公開されるといいます。これは商業映画に絞った数であり、短編映画や自主映画まで合わせると、その数はすさまじいものになるでしょう。すでに数えきれないほどの作品が存在するのに、これから先も映画はずっと増え続けていくわけです。
われわれ映画好きにとってはとても喜ばしい事ですが、その反面、寂しさを覚えてしまうのも事実です。
来る日も来る日も映画を見ているのに、ツタヤに行けばまだまだ知らないジャケットがたくさん並んでいます。僕が映画を見るより速いスピードで、新たな映画が作られていく。この世にある全ての映画を鑑賞することは物理的に不可能であり、いくつもの傑作を見逃したまま人生を終えるのでしょう。
すなわち、生きているうちに見られる映画の数は限られているのです。だとすれば貴重な時間を駄作にささげたくはないし、面白さが約束された有名作ばかり見ていたくもなりますが、それ以上に僕は人知れず眠るお宝に出会いたいと思ってしまうのです。
というわけで、今回で3回目となる「Amazonプライムにあふれる謎のB級映画を見てみるやつ」をやります。大げさな前置きを敷いてしまいましたが、この企画で“お宝”に出会えた記憶は数えるほどしかないのでミスったかもしれません。いきましょう。
「コライダー 未来から来た者」
養護施設で暮らす少女マヤ。ある日、自分の命を狙う男が現れたことをきっかけに、施設が時空警察による収容所であると知る。自分の出生の謎を追い、マヤはタイムマシンで過去に戻ろうとするが……。
うーん、この映画は自分の頭を試す指針になるかもしれません。僕は全然分からなかったです。序盤からガチャガチャと時系列の入れ混じったカットが矢継ぎ早に登場し、「カオス理論」も絡んでくるとあって「バタフライ・エフェクト」のようなSFスリラーを期待したのですが、伏線はあまりキレイに回収されず……。
この手のタイムトラベルSFって「ああ、あのシーンはこういうことだったのか!」という驚きが肝だと思うのですが、そうしたカタルシスが薄かったのは残念なところです。いや、僕が理解できていないだけかもしれませんが、映画を作る以上僕のようなバカが見ることも考慮しなければならないでしょう。本気で言ってます。
ただ、肝心のタイムトラベルの方法はなかなか斬新で見応えがありました。映像そのものもセンスを感じさせる部分がちょこちょこあるので、IQに自信のある方なら楽しめるかも。ていうか、映像はホント悪くなかったです。ギリ当たりの部類でしょう、これは。
「キル・ウィットネス」
アメリカ、パインヴィル。町の労働人口の5割を擁する製粉所が、地元の有力者スティーブンス氏により買収され、反発した労働者による銀行強盗が決行される。そんな中、スティーブンス氏の息子であるアーロンは、強盗犯が森に隠した500万ドルを偶然発見。父親への反抗心から金を自分の手に収めようとするが……。
序盤で父と息子の確執を描き、中盤に発生する“とある事件”で物語が大きく動いたのち、そのまま学校を舞台にした強盗犯とのサバイバルアクションに突入するという、なかなか考えられた構成。しかしこの監督、あまりスリルを演出するのが得意ではないようで、後半のサバイバルパートに移行してからはモロにB級クオリティに……。銃は当たらないわ、犯人はバカすぎる上に弱すぎるわ、結局よくあるB級映画になってしまうのが残念なところ。
とはいえ個人的にはなかなか好きな作品。前述の通りお話はしっかり考えられているし、軽いどんでん返しもあるので、広い心で見れば楽しめるかと思います。体調の良い時にご覧ください。
「アダム 潜む男」
アメリカ製のホラー映画です。個人的にお気に入りのB級ホラー「ヒルズ・ラン・レッド」のデイヴ・パーカー監督ということで、少々期待の高まる作品。
交通事故により脳振とうを起こし、一夜の記憶をなくしてしまった主人公、アンドレ。彼は休養も兼ね、友人の紹介で奇妙な一軒家に泊まることに。穏やかに過ごしたいアンドレだったが、奇妙な出来事が起き始め……。
うーん……なんと言えばいいのか。非常に中途半端な作品でした。どこで怖がらせたいのかよく分からないんですね。主人公の背後に謎の人影が立っていたり、物の位置が変わっていたりと、「この家の中に別の誰かが潜んでいる……」系の演出が繰り返されたかと思えば、なんか普通に怖い顔の男が家にやってきたり、悪夢を見たり……という。もうサスペンスなのかサイコホラーなのかオカルトホラーなのかまったくハッキリしないのは考え物です。「こういうことがあったら怖いよね」と思いついたシーンをとにかく全部突っ込んで、当然ながら相互作用がまったく働いていないような、そんな印象を受けました。
ラストの種明かしも「今時このオチか」という。前述したように単体で見れば怖いシーンもあるので、ホラー好きの方なら見て損は……いやどうかなあ。怒り出すほどヒドくもないというのが罪です、これは。
怖い目に遭って、鏡の前で「俺はどうすれば……」と泣き言を漏らす主人公が、「どうすりゃいいか教えてやるよ。男らしくいることだ!」と自分を奮い立たせたあとまたビビりまくるところは面白かったです。
「ディケイド 腐敗する者たち」
ストーリーを知ってしまうと面白さが半減してしまうので、最低限のあらすじで説明したいと思います。
母親の残した家にひとりで暮らす孤独な中年男ジョナサンは、自宅の地下室に侵入した若い女性2人組に遭遇する。急に現れた彼にパニックを起こした彼女らは家から逃げ出し、あろうことか事故に遭って亡くなってしまう。ジョナサンに非は無いものの、「自分が疑われてしまう」と考えた末、女性の死体を地下に隠すことに決めるのだった……。
まず断っておくと、映画としては今まで紹介した中で一番よくできています。とにかく映像がきれいで描写も丁寧。主人公は強迫性障害を患っているんですが、そんな彼の神経質な性格をあくまでさりげなく表現する演出や小道具の数々は、凡百のB級映画にはとうてい見られないクオリティー。こういった工夫だけである程度の満足度は保証された、かのように思えたのですが……。
やはり作品としては難があって。まずこの監督、前述のような優れた映像表現からも分かる通り、自分の撮りたい画というのがしっかり定まっている方なのでしょう。それは素晴らしいことなんですが、お話の稚拙さが足を引っ張っている印象です。
物語が動くのは、実質序盤と終盤だけ。映画のほとんどは、彼の人間性や死体との共存、そして子供時代の回想を描いているんですね。個々の映像は見どころがあるものの、あまりに話が進まないので飽きが来てしまいます。
とはいえ、その終盤の展開には素直に驚かされました。ジャンルとしてはサスペンスホラーなのですが、ホラーではなくひとりの孤独な中年男を描いたドラマだと思ってみていただければ、なかなか興味深い作品ではないかと思います。
ブラックストーン 呪いの召喚石
ああああああああ!!!! すごい駄作でした!!!! あああああ!!!!!!
悪いところを羅列していけばキリがありませんが、特に文句を言いたくなるのが脚本のアホさ。本当に……。中学生が書いたのか……?
かつて封印された化け物が現代にあらわれた。以上!
いや、それはいいんですよ。B級ホラーなんてストーリーはお飾り。いかに化け物が大暴れするかが肝心なんですから。だというのに、やたらと展開をもったいぶるもんだから、1時間近くも主人公家族のファミリードラマを見せられる、ネタにもならない苦行が続きます。一応、お色気シーンなんかもありますが、「こんな映画のために……」と脱いだ女優さんがふびんになってしまうだけでした。
ようやく惨殺シーンが始まってからも、それはそれは何の工夫もないシロモノで……。外に化け物がいると分かっているのに、芸人のコントのように順番に出て行って殺されていく家族たち。人物描写にひたすら時間をかけたくせに、ホラー部分に一切生かされていないんですね。「前半の描写は全部ムダでした」と作り手が言っているようなもので、これは本当に致命的です。
かといって何か大きな破綻があるわけでもなく、突き抜けたクソさを笑うという楽しみにも至らない、虚無を見ているような体験でした。これだからAmazonプライム巡りはやめられませんね。
「ペイン 魂の叫び」
半年もの間、自分が何者かに殺される夢を見続ける小説家、ヘンリー。悪夢のせいで精神が不安定な彼は、次回作に集中するため人里離れた別荘で過ごすことを決める。しかし、別荘への道中で不可解な現象が起こり……。
一応はサスペンスですが、正しくは心理ドラマといえる作品。よくある“謎映画”だと思って見始めると、ヴィネッサ・ショウ、ロン・リヴィングストン、そして「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストンと、メジャー作品で活躍する豪華な面々が矢継ぎ早に登場するのでびっくり。それぞれ半日拘束くらいの出番ではありますが、やはり見知ったスターが登場すると画面が引き締まります。
で、肝心の内容なんですが……良い! これはかなり良いですよ!
全編モロにインディーズムービーといった趣で、基本的に登場人物の会話だけで話が進んでいく作品。普通は単調になりがちな手法ですが、本作の場合、確かな演出と伏線を配置することでそれを回避。B級映画をあまり見ない方は「当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、会話にちゃんと意味がある! それだけでちょっと感動してしまいました。有名な俳優たちがオファーを受けた理由も分かるなあという感じ。
正直に言えば、それでも会話が長すぎてダレてしまう瞬間が何度もありました。だけどラスト……! 公式の惹句(じゃっく)「予想外の結末に驚愕するサスペンス・スリラー」に偽りなし……!
というわけで、終わりよければ全てよしを地でいく作品でした。いや、決して珍しいオチではないんですよ、ないんですけど、その描き方に僕はやられてしまいました。これは埋もれさせておくには惜しい作品でしょう。ぜひご鑑賞ください。
僕のチョイスが偏ってしまい、今回なんだか似たようなテイストの映画が多くなってしまいました。アマプラの謎映画は加速度的に増えていて、さまざまな国の作品が配信されているので、次回はそうした国際色豊かな側面を紹介したいですね。
<城戸>
関連記事
- 恐怖の記録映像「コリアタウン殺人事件」はマジなのか? スタッフ・キャスト一切不明のアマプラ映画がSNSで話題に
Amazon Prime Videoに突如現れた謎の映画。 - 君はAmazonプライムビデオに溢れる“謎映画”を知っているか? 「カメラは止めない!」「何か」「黒可能打開白皿」
めちゃくちゃいっぱいある。 - 君はAmazonプライムビデオに溢れる“謎映画”を知っているか?
映画館に行けないなら家で映画をディグろう。 - あらすじは短くあってくれ! ネタバレ嫌いがおすすめする「一行のあらすじで見たくなる映画」8選
ライター・城戸の映画コラム。 - 夏だ、海だ、北野映画だ! ビートたけしが描く「美しい夏」「恐ろしい夏」「いとおしい夏」
海、山、川、北野映画。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
岡田紗佳、一連の騒動を生中継で謝罪 頭を深く下げ「申し訳ございませんでした」
-
がん闘病の森永卓郎、容態急変後にモルヒネ投与で“結構厳しい状況” スタジオ出られず弱々しい声で「そう長く持たないかもしれない」「本格的に転移が始まったよう」
-
新潟のお葬式で香典返しにもらった“謎の白い物体” パッケージにも情報なし「これなんだかわかりますか?」
-
「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
-
鮮魚店で売れ残ったタコを水槽に入れたら、数週間後まさかの展開が…… 胸を打つ光景に「目が腫れるくらい泣いてます」
-
大人なら5秒で解きたい!「9+0÷2−3」の答えは?【算数クイズ】
-
「うちの祖父(81)わけてほしいわこのセンス……」 衝撃的な私服コーデに驚きの声「本物のイケジイ」「目標にします!!」
-
買ったばかりの家の風呂場に”ありえない欠陥” 信じられない状況に「そんなことある?」「取り付けた業者……」
-
「昔はモテた」と自慢げな父→娘は“絶対ウソやん”と思っていたけど…… 当時の姿に「ハハハ冗談だろ?」【海外】
-
正方形のスカーフ1枚→切ってゴムを縫い付けるだけで…… 魅力的な完成品に「デザインがきれい」「簡単に作れました」【海外】
- 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
- DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
- 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
- スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
- 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
- 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
- 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
- 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
- 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」