Amazonプライムにあふれる謎のB級映画を見てみるやつ 隠れた良作からZ級モンスターまで一挙レビュー

謎の映画紹介、3回目

» 2020年08月18日 19時00分 公開
[城戸ねとらぼ]
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 世界全体で年間2000本以上の映画が公開されるといいます。これは商業映画に絞った数であり、短編映画や自主映画まで合わせると、その数はすさまじいものになるでしょう。すでに数えきれないほどの作品が存在するのに、これから先も映画はずっと増え続けていくわけです。

 われわれ映画好きにとってはとても喜ばしい事ですが、その反面、寂しさを覚えてしまうのも事実です。

 来る日も来る日も映画を見ているのに、ツタヤに行けばまだまだ知らないジャケットがたくさん並んでいます。僕が映画を見るより速いスピードで、新たな映画が作られていく。この世にある全ての映画を鑑賞することは物理的に不可能であり、いくつもの傑作を見逃したまま人生を終えるのでしょう。

 すなわち、生きているうちに見られる映画の数は限られているのです。だとすれば貴重な時間を駄作にささげたくはないし、面白さが約束された有名作ばかり見ていたくもなりますが、それ以上に僕は人知れず眠るお宝に出会いたいと思ってしまうのです。



 というわけで、今回で3回目となる「Amazonプライムにあふれる謎のB級映画を見てみるやつ」をやります。大げさな前置きを敷いてしまいましたが、この企画で“お宝”に出会えた記憶は数えるほどしかないのでミスったかもしれません。いきましょう。



「コライダー 未来から来た者」



 養護施設で暮らす少女マヤ。ある日、自分の命を狙う男が現れたことをきっかけに、施設が時空警察による収容所であると知る。自分の出生の謎を追い、マヤはタイムマシンで過去に戻ろうとするが……。

 うーん、この映画は自分の頭を試す指針になるかもしれません。僕は全然分からなかったです。序盤からガチャガチャと時系列の入れ混じったカットが矢継ぎ早に登場し、「カオス理論」も絡んでくるとあって「バタフライ・エフェクト」のようなSFスリラーを期待したのですが、伏線はあまりキレイに回収されず……。

 この手のタイムトラベルSFって「ああ、あのシーンはこういうことだったのか!」という驚きが肝だと思うのですが、そうしたカタルシスが薄かったのは残念なところです。いや、僕が理解できていないだけかもしれませんが、映画を作る以上僕のようなバカが見ることも考慮しなければならないでしょう。本気で言ってます。

 ただ、肝心のタイムトラベルの方法はなかなか斬新で見応えがありました。映像そのものもセンスを感じさせる部分がちょこちょこあるので、IQに自信のある方なら楽しめるかも。ていうか、映像はホント悪くなかったです。ギリ当たりの部類でしょう、これは。



「キル・ウィットネス」



 アメリカ、パインヴィル。町の労働人口の5割を擁する製粉所が、地元の有力者スティーブンス氏により買収され、反発した労働者による銀行強盗が決行される。そんな中、スティーブンス氏の息子であるアーロンは、強盗犯が森に隠した500万ドルを偶然発見。父親への反抗心から金を自分の手に収めようとするが……。

 序盤で父と息子の確執を描き、中盤に発生する“とある事件”で物語が大きく動いたのち、そのまま学校を舞台にした強盗犯とのサバイバルアクションに突入するという、なかなか考えられた構成。しかしこの監督、あまりスリルを演出するのが得意ではないようで、後半のサバイバルパートに移行してからはモロにB級クオリティに……。銃は当たらないわ、犯人はバカすぎる上に弱すぎるわ、結局よくあるB級映画になってしまうのが残念なところ。

 とはいえ個人的にはなかなか好きな作品。前述の通りお話はしっかり考えられているし、軽いどんでん返しもあるので、広い心で見れば楽しめるかと思います。体調の良い時にご覧ください。



「アダム 潜む男」



 アメリカ製のホラー映画です。個人的にお気に入りのB級ホラー「ヒルズ・ラン・レッド」のデイヴ・パーカー監督ということで、少々期待の高まる作品。

 交通事故により脳振とうを起こし、一夜の記憶をなくしてしまった主人公、アンドレ。彼は休養も兼ね、友人の紹介で奇妙な一軒家に泊まることに。穏やかに過ごしたいアンドレだったが、奇妙な出来事が起き始め……。

 うーん……なんと言えばいいのか。非常に中途半端な作品でした。どこで怖がらせたいのかよく分からないんですね。主人公の背後に謎の人影が立っていたり、物の位置が変わっていたりと、「この家の中に別の誰かが潜んでいる……」系の演出が繰り返されたかと思えば、なんか普通に怖い顔の男が家にやってきたり、悪夢を見たり……という。もうサスペンスなのかサイコホラーなのかオカルトホラーなのかまったくハッキリしないのは考え物です。「こういうことがあったら怖いよね」と思いついたシーンをとにかく全部突っ込んで、当然ながら相互作用がまったく働いていないような、そんな印象を受けました。

 ラストの種明かしも「今時このオチか」という。前述したように単体で見れば怖いシーンもあるので、ホラー好きの方なら見て損は……いやどうかなあ。怒り出すほどヒドくもないというのが罪です、これは。

 怖い目に遭って、鏡の前で「俺はどうすれば……」と泣き言を漏らす主人公が、「どうすりゃいいか教えてやるよ。男らしくいることだ!」と自分を奮い立たせたあとまたビビりまくるところは面白かったです。



「ディケイド 腐敗する者たち」



 ストーリーを知ってしまうと面白さが半減してしまうので、最低限のあらすじで説明したいと思います。

 母親の残した家にひとりで暮らす孤独な中年男ジョナサンは、自宅の地下室に侵入した若い女性2人組に遭遇する。急に現れた彼にパニックを起こした彼女らは家から逃げ出し、あろうことか事故に遭って亡くなってしまう。ジョナサンに非は無いものの、「自分が疑われてしまう」と考えた末、女性の死体を地下に隠すことに決めるのだった……。

 まず断っておくと、映画としては今まで紹介した中で一番よくできています。とにかく映像がきれいで描写も丁寧。主人公は強迫性障害を患っているんですが、そんな彼の神経質な性格をあくまでさりげなく表現する演出や小道具の数々は、凡百のB級映画にはとうてい見られないクオリティー。こういった工夫だけである程度の満足度は保証された、かのように思えたのですが……。

 やはり作品としては難があって。まずこの監督、前述のような優れた映像表現からも分かる通り、自分の撮りたい画というのがしっかり定まっている方なのでしょう。それは素晴らしいことなんですが、お話の稚拙さが足を引っ張っている印象です。

 物語が動くのは、実質序盤と終盤だけ。映画のほとんどは、彼の人間性や死体との共存、そして子供時代の回想を描いているんですね。個々の映像は見どころがあるものの、あまりに話が進まないので飽きが来てしまいます。

 とはいえ、その終盤の展開には素直に驚かされました。ジャンルとしてはサスペンスホラーなのですが、ホラーではなくひとりの孤独な中年男を描いたドラマだと思ってみていただければ、なかなか興味深い作品ではないかと思います。



ブラックストーン 呪いの召喚石



 ああああああああ!!!! すごい駄作でした!!!! あああああ!!!!!!

 悪いところを羅列していけばキリがありませんが、特に文句を言いたくなるのが脚本のアホさ。本当に……。中学生が書いたのか……?

 かつて封印された化け物が現代にあらわれた。以上!

 いや、それはいいんですよ。B級ホラーなんてストーリーはお飾り。いかに化け物が大暴れするかが肝心なんですから。だというのに、やたらと展開をもったいぶるもんだから、1時間近くも主人公家族のファミリードラマを見せられる、ネタにもならない苦行が続きます。一応、お色気シーンなんかもありますが、「こんな映画のために……」と脱いだ女優さんがふびんになってしまうだけでした。

 ようやく惨殺シーンが始まってからも、それはそれは何の工夫もないシロモノで……。外に化け物がいると分かっているのに、芸人のコントのように順番に出て行って殺されていく家族たち。人物描写にひたすら時間をかけたくせに、ホラー部分に一切生かされていないんですね。「前半の描写は全部ムダでした」と作り手が言っているようなもので、これは本当に致命的です。

 かといって何か大きな破綻があるわけでもなく、突き抜けたクソさを笑うという楽しみにも至らない、虚無を見ているような体験でした。これだからAmazonプライム巡りはやめられませんね。



「ペイン 魂の叫び」



 半年もの間、自分が何者かに殺される夢を見続ける小説家、ヘンリー。悪夢のせいで精神が不安定な彼は、次回作に集中するため人里離れた別荘で過ごすことを決める。しかし、別荘への道中で不可解な現象が起こり……。

 一応はサスペンスですが、正しくは心理ドラマといえる作品。よくある“謎映画”だと思って見始めると、ヴィネッサ・ショウ、ロン・リヴィングストン、そして「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストンと、メジャー作品で活躍する豪華な面々が矢継ぎ早に登場するのでびっくり。それぞれ半日拘束くらいの出番ではありますが、やはり見知ったスターが登場すると画面が引き締まります。

 で、肝心の内容なんですが……良い! これはかなり良いですよ!

 全編モロにインディーズムービーといった趣で、基本的に登場人物の会話だけで話が進んでいく作品。普通は単調になりがちな手法ですが、本作の場合、確かな演出と伏線を配置することでそれを回避。B級映画をあまり見ない方は「当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、会話にちゃんと意味がある! それだけでちょっと感動してしまいました。有名な俳優たちがオファーを受けた理由も分かるなあという感じ。

 正直に言えば、それでも会話が長すぎてダレてしまう瞬間が何度もありました。だけどラスト……! 公式の惹句(じゃっく)「予想外の結末に驚愕するサスペンス・スリラー」に偽りなし……!

 というわけで、終わりよければ全てよしを地でいく作品でした。いや、決して珍しいオチではないんですよ、ないんですけど、その描き方に僕はやられてしまいました。これは埋もれさせておくには惜しい作品でしょう。ぜひご鑑賞ください。






 僕のチョイスが偏ってしまい、今回なんだか似たようなテイストの映画が多くなってしまいました。アマプラの謎映画は加速度的に増えていて、さまざまな国の作品が配信されているので、次回はそうした国際色豊かな側面を紹介したいですね。

城戸

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