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» 2020年12月03日 12時00分 公開

人生をリセットしたかった――所持品ゼロの生活をしてみたら、“足りない”のに“満たされた”話

映画に感化されて本当に所持品をゼロにしてしまった女性の話。

[のとほのか,ねとらぼ]

 自分の持ち物を全てリセットし、“所持品ゼロ”の状態から1日に1つずつ必要なモノを取り戻していく2人の男の姿を描いた映画「100日間のシンプルライフ」が、12月4日に全国公開。そんな映画に感化されて、本当に所持品をゼロにしてしまった女性がいます。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 (C) 2018 Pantaleon Films GmbH / Erfttal Film & Fernsehproduktion GmbH & Co. KG / WS Filmproduktion / Warner Bros. Entertainment GmbH

 同作は、全ての持ち物をリセットし、1日に1つずつアイテムを取り戻していく青年の実験生活を記録したフィンランドのドキュメンタリー映画「365日のシンプルライフ」(2014年日本公開)を基に描かれた物語。多くのモノに囲まれ、何不自由なく暮らしていたパウルとトニーが、所持品ゼロの状態から必要なモノを取り戻していく中で、“人生で大切なモノ”を見つめ直す姿が描かれます。

 ルールは、ほぼ同じ。(1)所持品を全て倉庫に預ける。(2)1日に1つだけモノを取り戻せる。(3)会社の食料は食べてもOK。(4)買い物は禁止。期間は100日間。ルールに従って100日間成し遂げられた者が勝ちです。

映画「100日間のシンプルライフ」予告

 そんな同作に感化され、実際に所持品をゼロにしてしまった女性が、タレントの藤岡みなみさん。映画同様、身ぐるみ剥がされた裸からのスタート……というのはさすがに無謀すぎるので、食料の購入OK、電気・ガス・水道のライフラインは完備、人として最低限必要なスタートアップ備品を用意。それ以外のルールはほぼ同じでスタートし、“シンプルライフ”を体験しています。

 この実験を行う前は、「悩むのが嫌だから、欲しいと思ったら全部買っていた」という藤岡さん。実際、モノを持たない生活は豊かなのか。藤岡さんにリモートで話を聞いてみました。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 マジでモノがない……!(画像は藤岡みなみTwitterから)

所持品をリセットして気付いた「私って何もない人間だな」

――所持品ゼロからの生活って結構思い切りましたね。なぜチャレンジしようと思ったのですか?

 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)による自粛期間は、たくさんの人が自分の生活を見直したタイミングだったと思うのですが、私自身の生活に目を向けた時、部屋がごちゃごちゃしていたんです。好きなモノもたくさんあるのですが、なんとなく持っていたモノもあって、「雑念があるなぁ」と思いました。

 それは、心の状態ともつながっている気がして、リセットしたかったんですよね。でも、整理するだけでは根本的な解決にはならないので、何か“決定的”に変わるようなことをしたかった。そんな時に、「100日間のシンプルライフ」を見て、「これだ! やってみたい!」と思い挑戦しました。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 初期装備(画像はYouTubeから)
【所持品なし】100日間のシンプルライフに挑戦します

――もともとどういう判断基準でモノを購入していましたか?

 「こっちがいいかな、それともこっちかな」と悩む時間がすごく嫌で、欲しいと思ったら全部買っていました。「ダメならダメでいいや」ぐらいの気持ちで買っていたので、買って失敗したモノもたくさんありますね。

――ワンクリックで購入できますしね。

 そうなんですよ。あと私、変なモノばかり買っちゃうところがあって、以前、旅行でネパールに訪れた際に、金属製のボウルを振動させて音を出すシンギングボウルを買いましたね。5000円くらいで。


――……使うんですか?

 帰ってきてから家では一度も使ったことがないです。

――そんな物欲にまみれている状態から、何もない部屋にぶち込まれた精神状態ってどうなってしまうのですか?

 何もすることがなく、暇すぎて「私って何もない人間だな」と不安な気持ちになります。モノに頼って自分を作っていたんですよね。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 1日目は布団をゲット(画像は藤岡みなみTwitterから)
100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 独房感……(画像は藤岡みなみTwitterから)

――モノがない状態の1日のスケジュールが気になります。

 家族と一緒に暮らしているので、昼間は2歳の息子と一緒に過ごしていました。でも、20時ごろに息子が眠ってから、私が眠りにつくまでの4時間は、“無”でした(笑)。悟りを開きそうな空気が流れていましたね。スマホがあれば4時間なんて一瞬で過ぎますが、モノがないので1日ぐらいに感じるんですよ。

 部屋も空っぽだし、私も空っぽだし。最初は「嫌だな」と思っていたのですが、2〜3日程で外の虫の音が聞こえるなという心地良さを感じて、なにもない“空白”に慣れ始めました。これまでは、人生は有限だから「埋めなきゃ」という気持ちを抱いていたのですが、逆にたくさん時間があるから「その瞬間を楽しもう」という風にシフトできるようになりました。

 私みたいに100日間とか実行しなくても、週末はPCやスマートフォンを触らないと決めれば、この感覚は味わえるかもしれません。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 5日目にパーカーワンピをゲットして初期装備からレベルアップ(画像は藤岡みなみTwitterから)

――現在、100アイテム中60アイテムほどゲットされていますが、これまでで選んでよかったアイテムはありますか?

 洗濯機ですね。それまでは手洗いだったのですが、手だけだと脱水しきれないですし、時間はかかる。筋肉も使うので疲れますし、それだけ頑張ってもシワシワになってしまう……。脱水って偉大だなと思いました。おまけに、洗濯物が乾いて出てくるんですよ? 愛ですね。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 脱水は偉大(画像は藤岡みなみTwitterから)

――脱水に愛を感じられるようになるのか……。

 56日目ではさみを手に入れた時は、「やった! いいんですか! こんないいものを!」という気持ちになれるんですよね。1日目から当たり前がすごくうれしい。そう思えること自体がすごくうれしいですね。

 4日目にバスタオルをゲットしたのですが、それまではずぶぬれだったんですよ。タオルがなくてお風呂上がりにビショビショとか、机がなくて床でご飯を食べるとか、人間の尊厳がない感じで、結構精神的につらい部分もありました。

 でも、その時期があったからこそ、机を手に入れた時に「机は私の尊厳を支えてくれていたのか……!」とか「タオルがあるから人間らしくいられるんだ……!」という発見があったので、ありがたかったです。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 机のありがたみ(画像は藤岡みなみTwitterから)

――逆に選択をミスったモノはありましたか?

 先日、外出した時用にジーンズを選んだのですが、ちょっと履かないうちに履けなくなっていたんです。100アイテムのうち1つが履けないジーンズって最悪じゃないですか。どうにかしてあと1カ月で履けるようにならなきゃなとは思っています。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 ジーンズは残念(画像は藤岡みなみTwitterから)

――ジーンズの戦力外通告悲しすぎる……。24日目にスマートフォンをゲットしていますが、しばらくネットと遮断された生活を経て、使い方に変化はありましたか?

 それが、スマホばっかりいじっちゃって、かつての依存症だったころに戻りつつあります。

 ただ、感覚として“スマホがない時の時間の流れ”を知っているので、電源をオフにしてみたり、ただ音楽をかけるだけだったりと、意図的にスマホを使わないようにする時間は増えました。

――現段階だとメリットが上回っているように見えます。

 便利か不便かと言われたら不便です、何もないから(笑)。友達とリモート同窓会をしようとなった時も、メイク道具が2個しかないので、ちょっと足したいな……と思ったこともありました。

 でも、やはりメリットが上回るというか、毎日、「これって何だっけ?」「何で必要なんだっけ?」と自分の持ち物と一つずつ出会い直すことで、これまで見過ごしていたモノや時間、季節、人間関係など、全てのことに対して1個1個立ち止まって向き合えるようになり、感性が開いていく感じがありました。19歳ぐらいの多感な時期に戻ったような。人生リセットできた気がします。

――確かに10代のころって、いろいろなことやモノが新鮮に感じられました。その当時好きになったモノは今も好きですしね。そう思うと、大人になって好きがアップデートされていない気がする……。

 すごく分かります! ミヒャエル・エンデの『モモ』という本で、大人たちの時間と子どもたちの時間の流れ方が違うということが書かれているのですが、この期間で、本来みんなが持っていた“豊かな時間”を取り戻せたと思うんです。


 今までは、「この本を読んで、あれをして、これをして……って時間が足りないわ!」と慌ただしく生活していましたが、ただ窓際に座って夜風にあたる、という自分が落ち着くための時間を設けるようになりました。

 ただ滑っていく時間ではなく、その時間の中に自分の気持ちがちゃんととどまっていることを意識できるようになったんです。今は、夜風に吹かれている時や音楽を聞いている時、虫の音を聞いているだけの時間をすごく幸せに感じます。この生活の中で読んだ本は、一生忘れないですね。

100日間のシンプルライフ 藤岡みなみ ミニマリスト 断捨離 所持品ゼロ モノなし生活 9日目に選んだ『読書の日記』(著:阿久津隆さん)(画像は藤岡みなみTwitterから)

モノがない生活は豊かなのか

――映画では、自分にとって大切なモノを見つめ直す中で、幸せについて触れている場面がありました。実際、所持品ゼロの生活をスタートさせて、藤岡さんの幸福度はどのくらいですか?

 この暮らしを始めてから幸福度がすごく高いです。モノを手放して、不便ではありますが、自分が「知っている」と思っていたことが「知らない」と気付けることがすごく楽しくて、“選ぶ力”の訓練ができていると思います。


――普段の生活の中で、選ぶことに対して「なんとなく」になってしまっているかもしれないです。

 いろいろなモノを剥がして出てきた、本当の意味での丸裸な自分をぼんやりと見つけることができたので、そんな自分が何を欲しいと思うのか、どういう瞬間に幸せを感じるのか、というのが少し分かったと思います。

――モノを購入するときの判断基準に変化はありましたか?

 その日に必要なモノを1日かけて考えるので、「君に決めた!」と選んだモノが手に入るとすごくうれしいんです。以前は、悩むのが嫌でしたが、今は悩んだ分、そのモノに対して覚悟を持ったり愛着が湧いたりするので、悩む時間はすごく大事だなと思えるようになりました。

――100日を終えた後でもその気持ちを維持できそうですか?

 こういう挑戦をしたからこそ維持したいですよね。たぶん、忘れていってしまうとは思うのですが、一度「こういう理由だから必要だ」と自分にとって必要な理由を知っていれば、その気持ちは続いていくのではないかと思います。もし忘れてしまっても、そのモノに、その時のうれしい気持ちが詰まっていればきっと大丈夫です。

――残りの日数が1/3ほどになりましたが、すでに必要なモノはそろいましたか?

 満たされていますね。最後の1週間とか、もしかしたら「今日は何もいらないです」という日があってもいいかもと思うくらい。でも、せっかくだったら100個ちゃんと出会いたいですね。

 最初の1カ月間でサバイブするためのモノをそろえて、次の1カ月で暮らしのためのモノをそろえたので、最後のフェーズでは、心に必要なモノとか好奇心に必要なモノ、暮らしを豊かにするモノがプラスされていくんじゃないかと思うんです。そのときに、自分が本当に必要なモノやどう生きていきたいかということが分かるような気がしています。

 きっと自分でも予想できないモノを選ぶんじゃないでしょうか。シンギングボウルだったりして(笑)。


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