杉田智和、阪口大助、釘宮理恵に聞く「銀魂」との15年 『銀魂 THE FINAL』で万事屋に去来したもの(2/2 ページ)
終わってる感覚はない、その真意
―― 原作や台本はどういう気持ちで見ていましたか?
杉田 原作はあるときからあえて読まなくなりました。先を知りすぎていると、新鮮に驚いた声が出ないかもとかいう不安に取りつかれてしまって。
印象的だったのが、高杉役の子安武人さんがテストが終わった後に、「大事なシーンだから何回もやりたくないよね」とおっしゃったのを聞いて全くその通りだと思いました。原作があるから原作通りじゃないといけない、という考えが全てではなく、そのとき出た言葉を信じれば、それが作品に合っていればいい。だから、良い意味で台本も極力見ないようにしていました。
阪口 新鮮でありたいですし、新八は基本的に巻き込まれるキャラで、リアクションが用意されたものであってほしくないなと思っていたので、僕も原作は後追いです。アニメの収録の後で読んでいました。今回の台本見たときは「終わるんだ……」って。映画の台本を見て、もう少し何らかの感情が湧くのかとも思いましたが、そこまでではなかったですね。
釘宮 私も同じ感じでした。台本を読み進めるうちにこういう終わり方なんだとすごく腑に落ちて、何ならちょっと爽やかな気持ちにもなれました。
―― 皆さん特別な感慨が湧いているわけではないようですね。
阪口 今作で描かれたのはデカい事件ですけど、銀魂が15年描いてきたのは基本的に日常です。日常を15年間描いてきたからこその大団円という終わり方ですが、同時に含みも持たせるというか、日常が続いてるのであれば、全然終わりではないんですよね、それでいいと思うんです。
釘宮 阪口さんがおっしゃったように、大きな事件を経た後も、また当たり前の日常に戻っていく未来を一人一人が自由に思い描いていいよと許されたような気がして、変に落ち込んだりすることもなかったです。むしろここまでやらせてもらえてありがたいとか、皆さんのおかげですみたいな感謝の気持ちも湧き上がってきて、幸せな作品だと思いました。
杉田 自分の人間性だと思いますが、僕は卒業式や葬式で泣くタイプじゃないんです。それで「お前血が通ってないのか」とか怒られたりもすることもあるのですが、僕は大局的な方に目が向きますね。
物事を盛り上げるためにエモーショナルなものを強要されることも多いです。が、僕には必要ないと思っています。だって作品の中の時間は動き続けるので、終わってる感覚はありません。
阪口 僕も自分はドライな人間だと思っていますけど、15年ですからね。何ならこの15年は、親より会っていますし。それが集まらなくなるのは単純に寂しいです。生活のルーティーンに組み込まれてるところもあります。ここまで長く続けた作品がこれまでなかったので、これからいろいろ感じるのかもしれませんが、今のところはまだ「ちょっと寂しいな」というぐらいです。
釘宮 私もドライですし、永遠に続くなんてことは絶対にないと思ってしまいますが、逆に希望がある終わり方だとすら思っています。現実を直視したくない気持ちの裏返し、終わってしまうことの寂しさをあえて見ないようにして、でも希望が持てる終わりだと自分に思い込ませようとしてるのかもしれませんが、自分が好きなように想像できる余地を残してくれているのは作品としてすごく素敵なことだと思います。
とはいえ、私は泣き虫なので、イベントなどで気持ちが高まって「みんなありがとう!(泣)」となってしまうかも。例えば身近な方が亡くなったりしても、私はお空の上から見守ってくれていると考えるタイプなので、いつでも会いたくなったら会える人たちがいっぱいいるという感じで自分の中では捉えています。
ただ、どこかのタイミングでまた何かあってもおかしくない作品だと思うので、それができるように自分から切り離しすぎない距離感は保っていたいですね。そう考えなくても自然に立ち返れるぐらい長い付き合いではあります。
「好き」を貫き通すために採るべき行動は、バカ騒ぎに同調しないこと――
―― 最後に向けて気持ちの揺れのようなものはなかったということでしょうか。
杉田 今回の現場の雰囲気としては、最後だからスポンサーやプロデューサーからあいさつ、みたいなものはなくて、自然と入っていきました。最後に音響監督の高松(信司)さんから「悔いはありませんか?」と軽く聞かれましたが、「ないですね」と即答しました。
アニメのレギュラー放送、あるいは映画としては終わりますが、それは銀魂の終わりとイコールではないと思います。現場レベルでは良い意味で普遍的なものは自然に身についていればいいなと思いますし、そして身についていると思ってます。もし違ったら僕を殴ってください。
阪口 さっきからちょいちょい殴ったり殴られたりしてるよな(笑)。
でも本当に普通だったんですよ。もしかしたらそういう空気を作ってくださったのかもしれませんが、ウェットな空気でスタートするわけでもなく。あえて挙げるなら、こんなにこいつ(感染防止のアクリルパーティーション)が邪魔だとは思わなかったですね。いつも新八と神楽が声を合わせるシーンでタイミングを外すことがなかったのに、隣にいるくぎみーの空気が全然感じ取れなくて合わせづらい……というのは感じました。
釘宮 確かに。いつも体の動きでタイミングを合わせるのですが、空気の振動で先にタイミングを計っていて、アクション自体は分かっても、肌感では全く感じられなくなって面白いくらい合いませんでした。いつもより大きくやってようやく合う感じだったので、結構感覚は違いましたね。
―― 最後に、これから映画をご覧になる方にメッセージを。
杉田 来場者特典というのがありまして……。
阪口 急にそれぶっ込むか。
杉田 見る映画間違えたかなって思うかもしれないんですけど、真面目に作ってるからそこはふざけてないなと。
釘宮 アレめっちゃ本気だった。
阪口 ふざけてないのかあれ?
杉田 このご時世、矛盾というか不条理をいきなり持たされることもあります。映画館で見てほしいという言葉と、人と距離を取ろうという言葉が同時に来ます。とてつもなく重いもので選べないまま苦しんでいる状況です。現場もいろいろ工夫はしていますが、明確にこうしようというガイドラインがないのも現実です。ただ、映画をみてほしいなと。
自分の中の「好き」を信じるのであれば、皆さんが「好き」を貫き通すために採るべき行動は、バカ騒ぎに同調しないことです。最後のバカ騒ぎが始まるのにそれに乗るなというのは全く矛盾していますが、今言えることはこの言葉かなと。自分を裏切らないこと、惑わされないこと、負けないこと、信じること……?
阪口 いやそれ大事MANブラザーズバンド! 刺さんないから! 若い人に刺さんないから!
杉田 それが……一番……。
阪口 そこまで歌っちゃうのかよ! まぁいいけどな。
でも、本当に長い作品になりましたね。約15年間追いかけてきてくれた人には本当にありがとうございますという気持ちですし、みんなに愛してもらってここまで来ました。ただただ楽しんでいただければいいかな、銀魂ってそういう作品だと思うんです。ギャグを楽しんでもいい、小難しく考えてもいい、アクションを見てもいい。どの角度から見ても楽しい作品になっているはずです。ぜひ。
釘宮 2人が今言ってくれたことが全てですが、私は、この作品に長い間携われて本当に幸せだと思いましたし、今まで一緒に銀魂とともに走ってきてくださった方たちにも同じ心拍数の上昇を感じてもらえるのではないかと思います。銀魂らしい銀魂が展開されているので、そこを感じ取っていただけるとうれしいです。
劇場で、といい始めると本当に矛盾してしまってきりがないですが、でも心の中では全力でワッショイワッショイしながら観ていただけるといいなと個人的には思います。
(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会
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銀さんでなかったら笑う。
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