ジッパーを閉める音で体が固まる 東日本大震災被災者に聞く“10年たった今なお続くトラウマ”(1/2 ページ)

緊急地震速報に似た音を聞くと、今でも体が固まってしまうとのこと。

» 2021年03月11日 08時00分 公開
[ねとらぼ]

 今からちょうど10年前、2021年3月11日14時46分に三陸沖で発生した東日本大震災。東北、関東地方の4県で震度6強の揺れが観測されたほか、津波、原発事故などの被害もあり、今でも記憶に焼きついている方は多いことでしょう。

 ねとらぼ編集部では、特に大きな被害があった地域の1つとされる宮城県(自宅は仙台市中心部)で被災したという方の体験談を伺いました。なるべくそのまま全文掲載します。

※修正は見出しの挿入、誤字訂正など軽微なものに留めました。編集部による補足情報は、このように注釈の形で追記しています

地震発生時の状況

 父は岩沼(津波が襲った地域です)、兄は栗原(揺れがとても強かった地域です)に仕事に行っており(※1)、自宅は私と姉と障がいのある母、それと猫1匹でした。

 当時私は2Fの自室で昼寝をしており、姉と母と猫は1F居間にいました。

 地震発生の前日か前々日に緊急地震速報を伴う震度5程度の揺れ(※2)があり、完全に油断していたと思います。ただ、「大きな地震があった後は靴下を履いて眠れ」(※3)と家族内で言い合っていたので、しっかり靴下を履いていたのを覚えています。

※1:岩沼市は海沿いに位置し、津波被害が発生。栗原市は最大震度である震度7を記録した地域。詳細は宮城県Webサイト「東日本大震災 宮城の記録」などからご確認できる

※2:総務省消防庁「東日本大震災記録集」によると、本震の前々日(3月9日)に宮城県で最大震度5弱の地震が観測。投稿者は「前日か前々日」としているが、これは3月10日にも前震が発生しているためかもしれない(つまり、地震自体は前日も前々日も起こっている)

※3:投稿者いわく「地震の後靴下を履いて眠れというのは、割れたガラスや食器を踏んで足をケガしないためです。それでも被災時は足裏を大きく切ってしまいました。あわただしくて、気付いたのは避難所に着いたときでしたが……」

本震発生

 地震直後、私は揺れる中2Fから駆け下りましたが、1F居間に行くことはできませんでした。1Fの戸が外れ、居間まで続く廊下も棚やら物やらすべてが吹き飛んでいきました。家の倒壊も覚悟しながら、出口の確保だけはと思い、玄関を開け放して道路に飛び出したのを覚えています。

 階段では左右の壁に殴られるように揺さぶられ、道路に飛び出しても地面に張り付いていることしかできない揺れでした。揺れる中、姉と母の名前を泣き叫んでいました。

 その後一度揺れが収まり、姉と母がところどころケガをしつつも家から這い出てきました。猫は驚きのあまり障子に挟まっており、引っ張り出すと一目散に逃げていってしまいました(その後無事帰宅しています)。

本震直後の避難

 母の障がいは脳出血による後天性のものです。常に飲まなくてはならない薬が多く、歩くのも1人ではままならない状態でした。たまたま姉の知り合いが車で駆け付けてくれ、家から徒歩30分の避難指定の小学校にいくことができました。

 私は移動手段の確保のため、原付で避難所に行くことにしました。途中、高台で街を見渡すと、ところどころ煙が上っていたり、ケガをした人が避難所へ向かって歩いていたり、電柱が倒れていたり、何を見たかも思い出せない光景でした。

 母、姉と合流し、私の原付で姉が母の持病の薬を家から持ってきました。薬にも限りがあるので不安でたまりませんでした。

 その後、強い余震に耐えながら携帯のワンセグで各地の情報を集めていました。父の職場に行くための大きな道路が津波に襲われているさまを映像で見て、姉と私で泣きながら震えました。

 兄もどこにいるか分からず、父も無事なのか分からず、ただ女3人固まっておびえるばかりでした。ふと外を見ると3月なのに吹雪はじめ(※4)、本当に恐ろしいことが起こったのだと理解し始めました。

※4:当時の気象状況については「東日本大震災 特設サイト」(ウェザーニューズ)などに掲載されている。同Webサイトによると、3月11日は「深夜12時頃まで宮城県や福島県、山形県では強い雪が降り、内陸で3〜5センチほど、海の近くでもうっすらと積雪します。寒さも厳しくなるため、避難の際は、厚手の靴下など防寒対策もしてください」。また、その後も毎日のように防寒対策の必要性を呼び掛け続けていた

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/25/news108.jpg 「ふざけてる」「作品を知らないのになぜ?」と怒りの声 マクドナルドと「HUNTER×HUNTER」コラボの“PR施策”が物議【台湾】
  2. /nl/articles/2410/26/news025.jpg 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた
  3. /nl/articles/2410/22/news162.jpg たった築8年で“ぶっ壊れた”マイホームのリアル おそろしい戸建て事情に「声出た」「我が家もそうでした」
  4. /nl/articles/2410/24/news052.jpg 大家に「好きにしていいよ」と言われて薄暗い部屋をDIY改装したら…… あまりの変貌に仰天「すっげえええ」 投稿者に話を聞いた
  5. /nl/articles/2410/25/news019.jpg 【今日の計算】「3+3÷3−3」を計算せよ
  6. /nl/articles/2410/13/news082.jpg 荒れ放題の“悪夢の庭”をたった1人で11時間掃除したら…… あっぱれすぎる働きぶりに「あなたはヒーロー」と称賛
  7. /nl/articles/2410/25/news207.jpg 一度も髪を切ったことがない女性が、髪をほどくと…… 美容師も驚がくのスーパーロングヘアに470万いいね「リアルラプンツェル!」【海外】
  8. /nl/articles/2410/26/news028.jpg 生後0日→1歳10カ月の赤ちゃん成長ビフォーアフターが衝撃の700万再生 それから2年たった現在は…… さらに驚く姿に反響
  9. /nl/articles/2410/26/news023.jpg 2歳娘が一時保育に行ってる隙に“空き巣”が…… まさかの正体に「留守を狙ったんですね」「かくほしちゃうぞ」
  10. /nl/articles/2410/23/news154.jpg 自宅の犬小屋に住み着いた野良猫が、1年後…… まさかまさかの“現在”に「うわあ!よかったねえ!」「お幸せに」と100万表示
先週の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  3. 「Snow Man」の映像が中国で物議→公開停止 所属会社「歴史的事象に対する配慮に欠けた」と中国語と日本語で謝罪
  4. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  5. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  6. 「かわいいってこういうこと」 生後1カ月の子猫が暖をとる場所は……幸せしかない姿に「この角度から見るのが最幸」
  7. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  8. 「ボットン便所を簡易水洗にしたい」→「どれどれ……」 建設会社スタッフが驚がくした“歴史的遺物”に大反響 「相当貴重なもの」
  9. 「その手があったか!」 ほぼ卵焼きだけの弁当?→“まさかのサプライズ”が800万再生 「天才すぎて泣いた」
  10. 飛行機で傷口が感染し「身体の一部を切除」 133万フォロワーの元アイドル「痛みで涙が止まらない」悲痛の現状報告
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声