働きながら休暇とるってどういうことだろう いきなり出てきた流行語「ワーケーション」って一体何だ?(3/4 ページ)
「L休暇」 浸透しなかった平成の死語に学ぶ
戦後から高度経済成長を経て「日本人は勤勉」と評価されていました。その一方で、健康な生活を送るために適度な休暇が必要という考え方もありました。そこで、1987年に総合保養地域整備法が制定されました。
バブル景気の元、日本にも南欧のような滞在型リゾートを作ろうという機運が高まっていました。しかし実際には、同法の下、国有林や保有林の規制が緩和され、スキー場やゴルフ場が乱開発されてしまい、バブル景気がはじけたあとは残骸が散らばる結果に終わりました。
1999年、日本がバブル経済からようやく脱却しつつあったころ、政府は「経済新生対策」を打ち出しました。ベンチャー企業支援、中小企業支援、少子高齢化対策、金融市場活性化、不動産の証券化、情報ネットワーク社会推進などのため、予算総額18兆円規模の事業を実施します。この中で「ゆとりある勤労者生活の実現、家庭と地域の連携強化等により少子・高齢化社会に適切に対応するため、長期休暇制度の早期実現」が盛り込まれました。
この政策を受けて、2000年に労働省(現・厚生労働省)が提唱した言葉が「L休暇」です。
L休暇は「働く人が活力をもって生き生きと働くためにも、しっかりと休み、働き方や家族・地域社会との関係を含めて生き方を考える契機にする」という意義でした。L休暇の「L」は「生き方(Life)を考える契機となるような長期(Long)の休暇」の意味がありました。何だか国鉄時代の「L特急」みたいな名付けですね。ちなみにL特急の「L」は「Limited、Liner、Lucky、Little」の意味を込めていました。
この施策により完全週休二日や有給休暇制度の整備が進みました。しかし、休暇の取得については欧米のような強制力のある法律がなかったため「有給休暇の取得も当然、あたり前になる」までは進みませんでした。2021年現在も「有給休暇は取りづらい」という声や意識があり、男性の育児休暇なども「制度はあっても実行が伴わない」のが現状です。
「L休暇」は掛け声だけで終わり、言葉は浸透しませんでした。鉄道用語に例えれば「L特急」のように流行らせようと思ったら「E電」(関連記事)のように沈没してしまいました。
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