目で楽しむ華麗なサイコロの世界 小説がテーマになったものや、4つ組み合わせると十字が浮かび上がるものまで司書みさきの同人誌レビューノート

手元に置いておきたくなるデザイン性。

» 2021年03月07日 12時00分 公開
[みさきねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 おうち需要の高まりで、室内で遊ぶゲームが人気だそうですね。今回の同人誌は、電源不要のアナログゲームでよくお目にかかる小さな小さなアイテム、サイコロのご本です。

今回紹介する同人誌

『せかいのぶひん』A5 12P 表紙・本文カラー

著者:ダイスデザイン/製作:珠(珠工房)、冊子編集/デザイン:ナカタヒサ(久遠堂)


同人誌 図書館 司書 さまざまな色とデザインで一辺16ミリの世界が多彩に

華麗なサイコロの世界が広がる

 英語でダイスとも言うサイコロ。白い本体にぽちぽち丸い模様がついているのが一般的なイメージでしょうか。一方でテーブルトークRPGやボードゲームなど、アナログゲームを楽しむ人たちの間では6面体だけでなく、8面体や10面体などの多様なサイコロが使われてきました。私も10面ダイスや、クリア素材のものを初めて買ったときにわくわくと胸躍らせた思い出があります。

 そのわくわく感が、このご本では倍増して繰り広げられているんです。形こそスタンダードな真四角ですが、一見して「わっ、これなになに?」と手に取ってみたくなるオリジナルデザインのサイコロ11種類が紹介されています。

同人誌 図書館 司書 12カ月のサイコロたち。思い入れのある月を選ぶか、逆に気に入った花から選んだりと、どれを手にするか迷ってしまいそう!

デザインから思いを知る面白さ

 まずはサイコロの大切な役割、数字を知らせるデザインの豊富さが目をひきます。普通なら1つの丸があるだけの「1」の面にお花が描かれていて、しかもそれは12カ月分それぞれの誕生花が模されているとか、月と蝶、金魚鉢と金魚など、すてきな作品が次々に登場します。例えば、サイコロを4つ組み合わせると十字が浮かび上がる仕様になっているものも。そんな仕掛けを知ったら4つそろえてしまいたくなるではありませんか! また色もカラフルで透き通っていたり、きらきらしたラメ入りだったりと、時に愛らしく、時に重厚な、それぞれに違った雰囲気を醸し出しています。

 こんな多彩なサイコロの世界がページをめくるたびに現れてくるのが、なんとも楽しいのです。本体写真、デザイン画、テキストがすっきりとまとまっているので読みやすいカタログ風でありつつ、モチーフや制作の裏話が添えられることで製作者さんの思いを伝える読み物にもなっていて、中とじの装丁と相まって軽やかに読み進められます。

同人誌 図書館 司書 4つ組み合わせると十字が浮かぶ! わくわくせざるを得ない

物語を秘めた“モノ”を楽しむ

 サイコロたちには名前がついていることも。例えば白詰草が刻印された作品は「はなあかりのよるに」。これは宮沢賢治の短編小説『ポラーノの広場』をイメージして作られたのだとか。それを知ると、透き通った緑に白く浮かぶ花は一層に明るく見え、薄青に金色模様のバージョンは「涼しくなった頃の様子かしら……」と深読みし、清廉なイメージのサイコロはどんなゲームで使おうか、もう、妄想がはかどるはかどる。手のひらに隠れる小さな四角にこんなロマンが詰まっているなんて。

 一方で製作者さんはご本の中でご自身のサイコロについて「一辺16mmの中で完結する作品ではありません」と書かれています。手に取って転がした皆さんとかみ合ってこそ、広がっていくのだと。このご本は“モノ”の背景を知ることができ、小さな16ミリにぐぐっと入り込みますが、それだけで終わらずに、このサイコロを手に取って遊んでみたいという気持ちにつながっていくように感じました。

 すてきなアイテムに実は秘められた物語があることを知ったら、ますますそのお品が魅力的に感じられてきますよね。思いを込めてサイコロを振ると、きっといい良い目が出る気がしてきました!

同人誌 図書館 司書 本体、数値部分で色違いがあるのもすてきです

サークル情報

サークル名:珠工房

Twitter:@tama_koubou

次回イベント参加予定:2021年3月28日(日)ゲームマーケット2021大阪(インテックス大阪)出展[C-04]、2021年4月10日(土)11日(日)ゲームマーケット2021春(国際展示場青海展示棟)出展(ブース番号未定)

Webサイト:珠工房BASEサイト

入手先:せかいのぶひん



今週の余談

 私はクリアなタイプのダイスに惹(ひ)かれることが多いのですが、奥行きを感じる不透明なものもいいなぁと眺めました。デザインと組み合わせでゲームが始まる前から、手持ちアイテムに物語が宿っているなんて楽しい世界ですねぇー!

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。


関連キーワード

同人誌 | 図書館 | コミケ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」