「同人誌」制作の“初心者あるある” 4人の経験をまとめた『印刷所を使ってみた体験談の本』:司書みさきの同人誌レビューノート
こういう体験談好き。
いよいよ桜咲く季節到来です。花咲き、植物が芽吹く頃の何かしてみたくなるような気持ちに、いろんな世界をのぞける同人誌はぴったりではないでしょうか。広く奥深い同人誌の世界。そんな中でも今回は、同人誌を作ることそのものがテーマのご本です。
今回紹介する同人誌
『印刷所を使ってみた体験談の本』A5 24P 表紙・本文カラー
著者:スイカ、まかろに、雨、オノイチカ
本づくりって楽しい! コツとおすすめを紹介
悩んで迷って初めての同人誌を出したら、本を作るのが楽しくなった! そんな体験を持つ4人の著者さんが参加され、おのおの4ページでエピソードを語ります。生まれたての子鹿のような時期から、次の同人誌印刷所さんをどうやって探したか、紙のサンプルを取り寄せたら豊富な種類に驚いた……とご自身の気持ち、行動、そして実際に使ってみた印刷所さんについても名前を挙げて書かれています。
初心者あるあるにうなずき、新しいヒントに出会う
著者さんたちの表現は、イラストを描いていらしたり、文章中心の活動だったりと、異なる視点がコンパクトにまとめられており、それぞれの初めてが4ページごとにやってきます。読んでいるとお声のひとつひとつに「そう、そこ迷いますよね。苦労しますよね」とうなずき連発。ノドってなんだ? 原稿のサイズは? と、初心者の戸惑いを実にリアルに伝わります。
さらに、迷いに寄り添ってくれる安堵(あんど)感に加えて、新しいヒントもちりばめられているのがうれしいポイントです。いきなり豪華な加工じゃなくてちょっとした工夫から始めるといいかもという提案や、発注数への言及、紙に“目”ってあるんだ! と驚いたことなど、次にやってみたいこと、知ると楽しくなることが、文中のあちこちにあります。
明るくかわいく、多彩な手招きのうれしさ
つづられているのは決して難解な説明ではなく、カフェでおしゃべりしているような気軽さです。それに加えて、ぽこぽこした表紙の手触りや、めくるたびに違う色が飛び込んで来るカラーページのかわいさ、読みやすいデザインも重なって、初めてに立ち向かう深刻さよりも、肩の力を抜いた緩いあたたかさが広がります。
そして、そのあたたかさは初心者だけでなく、ずっと同人誌を作ってきた人にも「そうだよね、本づくりって楽しいよね」と、いま紙の本を作るあらためての喜びを思い起こさせてくれるのではないでしょうか。
ご本の中に「みんなで印刷談義すると楽しいよ」と書かれていました。そうそう、このご本はそれが体現されているみたいなんです。楽しい輪に一緒に入っているみたいな気分になりました。
サークル情報
サークル名:印刷会社を使ってみた体験談の本製作委員会
Twitter:まかろに(@makaroninita)、ずつうがいたい(@5HT1B1D)、オノイチカ(@onoichica)
次回イベント参加予定:3月28日おもしろ同人誌バザール10(大崎)で頒布予定
今週の余談
曇天でも晴天でも、桜が咲いているとぱっと明るくなるようです。道ゆく人が次々と顔を上げて、思わず眺めてしまう様子、それだけで心うれしくなります。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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104ページという力作。
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