プリキュア変身職人、板岡錦が描く「縦横無尽に動きまくる変身バンク」3選:サラリーマン、プリキュアを語る(3/3 ページ)
(3)キュアジェラートへんしんシーン
板岡さんの変身シーン、ラストは2017年「キラキラ☆プリキュアアラモード」より「キュアジェラートへんしんシーン」です。
ちなみにこの「キュアジェラート変身バンク」は、自分が世界で一番好きなプリキュア変身バンクです。
物語性のある変身シーンに説得力を持たせる動き
キュアジェラートのへんしんシーンには「物語」があります。
立神あおいが「お嬢様」から「ロックンローラー」へ。抑圧から自らの手で夢に向かうためにプリキュアへと変身していく。そんな姿がわずか70秒のへんしんシーンで描かれるのです。その姿がカッコイイのですよ。
このへんしんシーンはとにかく情報量が多いのも特徴です。
クラシックバレエから始まり、画面を飛び回り変身スタート、アイスクリームの意匠を展開しながら、ピシっとジャケットを羽織り、両足をついて、はかなげな表情、片足ソックスを上げてからのメロイックサイン、ギターをかき鳴らしフィニッシュ。
わずか70秒に、とんでもない情報量が詰め込まれています。
物語的に象徴的なのは、「片足ソックスを自らの手で上げる」シーンです。
勝手にパーツが装着されるのではなく、ソックスを上げるという自主的な動作を挟むことにより、プリキュアであることを自ら選択している姿が描かれます。
クラシックバレエをリスペクトし、ロックンロールで変身が終わる。お嬢様とロックを両立させていく意志が、わずか70秒のへんしんシーンで描かれます。
このものすごい情報量を1コマ打ちの滑らかさで描き切るのが、板岡さんのすごさなのです。
途中、ゆったりと表情を見せたかと思いきや、一気に加速して変身していく。緩急のつけ方がすごいのです。
このへんしんシーンは何度見てもそのたびに言葉を失います。世界一カッコイイイ変身シーンだと自分は思います。
板岡錦1コマ打ちのこだわり
板岡さんはこれ以外にも、キュアアースやキュアトゥインクル、キュアマシェリ&アムール、などたくさんの美麗な変身バンクを手掛けています。
日本のアニメでは通常1秒間に8枚の絵が描かれるのですが、板岡さんの描く変身バンクはほとんどが1秒間に24枚のいわゆる1コマ打ちで描かれます。もちろん手間も3倍かかります。それでも、限界に挑戦したい、と板岡さんは語ります。
もちろん変身バンクは、原画マンだけではなく動画、仕上げ、撮影などたくさんの方の力により完成します。板岡さんはTwitterでもこのようにつぶやいています。
ちょっと補足
ありがたくも変身バンク職人と言っていただいておりますが、やってる仕事は一原画マンであり、実際はアニメ映像制作の一工程を担っているにすぎません。
自分の仕事の後にも動画、仕上げ(色塗り)、撮影など、たくさんの職人のこだわり仕事があってステキ映像が完成しています。
そうやって多くの仕事人のこだわりの積み重ねの上でああいった映像が完成しているのです。当たり前だけど自分一人では到底できません。
いつも、本当に心からありがとうございます。
そして完成した映像を観て皆さんに喜んでいただければ仕事人冥利に尽きます。
明日からもまたいい絵を描こう。
「林修の今でしょ講座」での板岡さんの言葉がすてきでした。
板岡「小さい子が見て『私もあの変身がしたい!』みたいな感じでそのポーズとかやってくれるのを街で見掛けたら、ちょっと泣きますよね」。
子どもたちを魅了するステキな変身バンクをこれからも楽しみにしたいですよね。
板岡錦さん以外の変身バンク
もちろんプリキュアの変身バンクは、今回紹介した板岡さん以外にもたくさんの才能が活躍されています。超絶動きまくるキュアサンシャインやキュアビートでおなじみ(?)の志田直俊さん、キュアスカーレットの炎の表現がすごかった大田和寛さん、最新作「トロピカル〜ジュ!プリキュア」ではキュアキュアフラミンゴを担当された芳山優さんなど、紹介しきれないほどのたくさんの方が超絶技巧の変身バンクを描いています。
プリキュアのへんしんシーンは、変身アイテム(おもちゃ)のアップから始まり、最後はプリキュアの全身を映して決めポーズ、というお約束があります。
いわばおもちゃの広告塔としての大きな役割もあるのですが、その制約の中どのへんしんシーンも製作者が工夫を凝らしてキラキラですてきなものに仕上げています。
プリキュアのへんしんシーンは日々進歩しています。毎年の様に新しい表現が生まれ歴史を重ねていくのです。この先どんな進化をしていくのか楽しみです。
プリキュアのへんしんシーンは、これからも子どもたちを魅了し続けていくのです。
「トロピカル〜ジュ!プリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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