クイズ番組の答えになることが最も少ない都道府県はどこ? 12番組を1年間調査した同人誌が趣味の塊:司書みさきの同人誌レビューノート
きっかけは「数えてみたくなった」から。
「今年は梅雨入りがうんと早くて」と天気予報の声が聞こえてきました。いつか行きたい、また訪れたいと思っている地のお天気はどんな感じでしょうか。日本列島のまだ行ったことのない土地にも思いをはせながら、今回はそれぞれの県が気になってくる同人誌を手にしました。
今回紹介する同人誌
『47都道府県の中でクイズ番組の答えになることが最も少ないのは佐賀県』A5 64P 表紙・本文モノクロ
著者:いわのふみや
12番組を1年間継続調査。クイズになる都道府県の数は驚き? 納得? の結果
結果から言うと、1位は36回問題になった北海道で、最も数が少ないのは10回の佐賀県でした。こちらのご本では、2018年〜2019年にテレビ放送されていた12のクイズ番組を確認し、都道府県別に結果をまとめ、問題として登場した回数が多い順に並べられています。
1位北海道(36回)、2位神奈川県(31回)、3位静岡県(26回)、4位山形県(25回)……と続くランキング形式になっていますが、その結果は魅力ある県調査や観光地ランキングとは必ずしも一致しないようです。実際の出題は観光スポットや名物はもちろん、駅弁、農作物の生産量など多岐に及んでおり、まとめられた問題を眺めていると、この土地ならこれを見ておくといいよ! とおすすめされているような、ガイドブックを読んでいる気分になりました。
脳内のアップデートも。土地の新たな一面を見る
ご本は番組ごとにどんな問題が出されていたかの記録が主な内容ですが、ところどころに作者さんの見解が垣間見えるのも楽しいです。「農作物の収穫量問題で迷ったらとりあえず茨城と答えておくといいかも?」と書かれたコメントに、あらためて出題をたどるとメロンやいわし、ピーマンなどが挙げられており、「そうだったんだ!」と、この調査から都道府県の新たな一面を再発見しました。
こちらに掲載されているのは2018年〜2019年のものです。現在の生産量や出荷量などは変わっていたり、いまならば新名所や新名物が問題になっているかもしれません。そんな「あの名物は問題になっていないの?」「今ならこの野菜は他県が伸びてるはず!」と己の知識と比べながら読むのも味わい深いのではないでしょうか。
流れゆくクイズを誌面に留めて
クイズ研究はジャンルとして大きく、高校生や大学生のクイズ研究会さんの存在、そのOBさんたち、クイズ番組の人気を見ても裾野は広く、問題の作成や解き方を楽しんでいる人も多くいらっしゃいます。そんな中でこのご本は、普段は映画評論の活動をされている作者さんが「数えてみたくなっただけ」という実にライトな理由でスタートされたことが記されています。けれど淡々と1年間カウントし「順位がおおよそ判明したころには、途中で打ち切ろうかなあと思ったこともありました」と迷いに揺れながらも調べきって作られたとのこと。面白そうと思った解を求めていくフットワークの軽さと、継続してやり遂げるこつこつとした調査力が、実直な誌面づくりながら突き詰めすぎない“ぬけ感”となって、ご本の親しみやすさにつながっていると感じます。
テレビ番組のクイズは一瞬で解かれ、次の瞬間には新たな問題が提示され、まるで流れるように画面から消えていきます。それをあえて誌面に留め、振り返る面白さ。それに気付くと、クイズ番組もまた一味違った楽しみ方ができるかもしれません。
今週の余談
47都道府県、まだまだ行ったことのない場所があちこちあります。旅先で図書館をのぞくのも楽しみの一つなのですが、土地ごとにいろんな傾向があるんですよー。いつか訪れたいところたくさんです。
みさき紹介文
図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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104ページという力作。
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