JRにはないが「阪急」や「東急」にはある前面のちっちゃなライト、これは何? 知っておくと便利(?)な「標識灯」のお話

ヘッドライトにしては暗くて小さいようですが……。

» 2021年05月31日 20時00分 公開
[新田浩之ねとらぼ]

 都市部の私鉄に乗ると、ふと小さな前照灯が光っているのを見かけます。それがない路線もあります。ヘッドライトにしては暗くて小さいようですが……。実はこんなところにも「へぇ」な秘密があります。

photo 阪急電車「すみっコぐらし号」特急大阪梅田行き(標識灯点灯あり)

 京阪神を結ぶ阪急電車を見てみましょう。「すみっコぐらし号」の前面、顔に例えるとほっぺたあたり、「1016」と「すみっコぐらし号」とある文字の下に2つ小さくライトが点灯しています。

 前をガッと照らすヘッドライトはおでこあたりにあります。このように周囲を照らすためのライトにしては光量が足りない気がします。

 一方、普通大阪梅田行きの電車はどうでしょう。同じ場所にライトはあります。しかし点灯はしていません。運転士の気まぐれで、付けたり消したりしているのでしょうか。まさかそんなはずはありません。

photo 六甲駅を出発する普通大阪梅田行き(標識灯点灯なし)

 このライトは「標識灯」、あるいは「通過標識灯」「急行灯」などと言われます。

 阪急電鉄では、特急系(快速特急や快速急行)は「2標識灯」、急行系(準急、快速)は「1標識灯」、普通は「点灯なし」として列車種別を分けています。地上係員がこれを見分けて列車種別を確認するためにあります。

 ちなみに近鉄ではさらに細かく、急行と区間急行は「正面に向かって右側の標識灯」を、準急と区間準急は「左側の標識灯を点灯」させます。鉄道事業者別に意外とバラバラです。

photo 近鉄の電車。急行なので正面に向かって「右側の標識灯」だけ点灯

 筆者は8年前まで阪急電鉄でアルバイト(押し屋:朝夕のラッシュ時に、列車の扉に挟まりかかった乗客や荷物を車内へ押し込む係員)をやっていました。来た列車が何か、パッと見で種別を判別できるのですから、このときは本当に助かりました。

「標識灯」は鉄道誕生間もなく登場、長い歴史アリ

 標識灯は鉄道ができたばかりの英国で、ダイヤが乱れた際、係員が容易に列車種別を判別できるように設置した白色標識がはじまりといわれています。長きにわたり鉄道作業員をサポートしてきた大切な機能です。

 関東大手私鉄にも、京急、京王、京成に標識灯があります。

photo 特急として新宿に入線してきた京王電車。標識灯は上部にある

 なお、標識灯は法規で義務付けられているものではないので、設置していない鉄道会社もあります。むしろそれほど多くはありません。JRはほとんど採用していません。

photo JRは標識灯をごく一部を除き採用していない

 もっとも、乗客としてこれからやってくる列車の種別を知りたいならば、列車が来るのを待たずとも時刻表やホームの発車票を見ればすぐ分かります(笑)。

 また、「見たい」からと言って、白線、ホームからはみ出して覗くのは極めて危険です。くれぐれも電車が止まっているとき、正面から見られるターミナル駅など、安全を十分に確認した上で探してみてくださいね。

新田浩之(にったひろし)

1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める




Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/24/news088.jpg ヤフオクで出品されていた「20万円の引退品」→開封すると…… “まさかの中身”に賛否 「ゾッとしたわ…」「しゃーない」
  2. /nl/articles/2412/25/news115.jpg 辻希美&杉浦太陽、家族6人でクリスマスに豪華料理 長女・希空が作った“プロ級のケーキ”も…… 「凄くいい時間だった」
  3. /nl/articles/2412/24/news092.jpg 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  4. /nl/articles/2412/24/news037.jpg 毛糸で作ったお花を200個つなげると…… “圧巻の防寒アイテム”完成に「なにこれ作りたい……!!」「美しすぎる!」と100万再生【海外】
  5. /nl/articles/2412/25/news152.jpg 「思わず泣きそう」 シャトレーゼの“129円クリスマスケーキ”に衝撃 「すごすぎない!?」「このご時世に……」
  6. /nl/articles/2412/23/news078.jpg そば屋の看板のはずが…… 雪で“別の店”みたいになってしまった光景が北海道の豪雪のすさまじさを物語る
  7. /nl/articles/2412/25/news009.jpg 若かりしころの父と母→36年後…… 苦楽をともにしてきた“現在の姿”に「泣いた」「本当に素敵」と1700万再生突破【海外】
  8. /nl/articles/2412/23/news025.jpg 幼少期から“ディズニー”大好きな2人→25年後…… まさかまさかの“現在”が話題 「映画のワンシーンのよう」
  9. /nl/articles/2412/25/news021.jpg 大型ワンコが猫に育てられた結果…… 驚きの行動連発に「自分を猫だと思っていないっw?」「かわいすぎる!」
  10. /nl/articles/2412/24/news156.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」される夫婦の苦悩……“年の差33歳差”カップルに反響【個性的なカップル特集2024】
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  3. 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に【大谷翔平激動の2024年 「お菓子」にも注目集まる】
  5. 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  6. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  7. 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  8. 「昔モテた」と言い張るパパ→信じていない娘だったが…… 当時の“驚きの姿”が2900万再生「おおっ!」「マジかよ」【海外】
  9. トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  10. “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」