かつて「旅客機のジェットエンジン」を搭載した魔改造列車があった ……やっぱソ連だった

飛んでいきそうなすてきなお姿。

» 2021年06月23日 21時00分 公開
[新田浩之ねとらぼ]

 「超電導リニア」「超音速旅客機」のように「速さ」への夢あふれる乗りものはいろいろありますが、「旅客機のエンジン」を搭載した列車もなかなかロマンあふれるのものではないでしょうか。実はそんなブッ飛んだ列車、ソビエト連邦などが試作車を作っていたのです

photo 現在は先頭部のみが保存されているソ連の「ターボジェットトレイン」
Photo by Eskimozzz
動画が取得できませんでした

 ターボジェットトレインは、先頭車の運転室の上に2基の旅客機用ターボファンエンジンを搭載した車両です。何だかカブトムシの角が生えたような、SF映画に登場しそうなブッ飛んだ姿ですが、本当に線路上を走行していたのです。

 試作車が製造されたのは1970年のこと。当時、ソビエト連邦は列車の高速化に関するさまざまな試みが行われていました。1966年にはライバルの米国からターボエンジンを搭載した試作車も登場しており「アメリカには絶対に負けられん」という気持ちで製造したのではないでしょうか。

photo 試作車の元になった車両はER22という普通の近郊型電車(「ラトビア鉄道歴史博物館」で筆者撮影)

 試作車はヤコブレフ航空工学設計局、カリーニングラード車両工場などの協力で製造。新造ではなく、近郊電車ER22形からの改造です。ER22形は1964年にデビューしたソ連でよくある一般的な近郊電車でした。

 イーウチェンコ AI-25ターボファンエンジン2基と空気抵抗を減らすフェアリングが搭載されました。AI-25ターボファンエンジンはソ連で開発・製造された名エンジンの1つで、旧東側諸国にも輸出されました。

 ソ連のターボジェットトレインは1972年、ウクライナ・プリドネプロフスク線での実験にて時速249キロを記録しました。一定の成果を納めた試作車でしたが、高速電車ER200形の登場もあり、結果的に生産には至りませんでした。

 試作車は長年にわたり放置されていましたが、2021年現在、ロシアのトヴェリ車両工場に先頭部のみがモニュメントとして保存されています。

 昨今はどこであってもコスト重視、効率重視、安全性重視の風潮なので、このようなロマンあふれる列車はもう夢なのでしょう。が、ついつい期待してしまう自分がいます。

新田浩之(にったひろし)

1987年神戸市生まれ。関西大学文学部卒、神戸大学大学院国際文化学研究科修了。主に鉄道と中欧、東欧、ロシアの旅行に関する記事を執筆。2018年からチェコ政府観光局公認の「チェコ親善アンバサダー2018」を務める




Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/05/news022.jpg 「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
  2. /nl/articles/2410/05/news040.jpg 伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
  3. /nl/articles/2410/02/news116.jpg 余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
  4. /nl/articles/2410/05/news023.jpg 七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
  5. /nl/articles/2410/05/news018.jpg 野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
  6. /nl/articles/2410/05/news012.jpg 「あのお客さんに幸あれっ!」 小銭の出し方が完璧な“神客”にレジ店員感激 会計がスムーズになる配慮が参考になる
  7. /nl/articles/2410/04/news048.jpg 「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
  8. /nl/articles/2410/04/news040.jpg 50代女性「モンチッチみたいにしてほしい」→美容師がプロのワザを見せ…… 別人級の変身に「めっちゃお洒落」「すごい!」
  9. /nl/articles/2410/04/news025.jpg 「これが免許証の写真???」 コスプレイヤーが公開した“信じられない”免許証が話題 コスプレ姿との比較に「両方とも可愛いすぎる」
  10. /nl/articles/2410/05/news032.jpg 大型犬が18年間、ドアを開け続けた結果……そうはならんやろな驚きの末路に「どうしたらこんな風になるのよ」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
  2. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  3. トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
  4. 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
  5. そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
  6. 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
  7. 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
  8. “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
  9. 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
  10. 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声