競技人口1人の謎スポーツ「フリースタイルノートブック」が熱い! 22年連続世界1位の三浦靖雄さんを取材(1/2 ページ)
競技人口1人で22年温め続けてきたという謎スポーツを取材。
手のひらで自由自在に“ノートを操る競技”を14歳で発案し、プレイし続けてきた人がいます。競技人口“1人”の「フリースタイルノートブック」、22年連続世界1位・三浦靖雄(@torinikukaraage)さんを取材しました。
「フリースタイルノートブック」は、市販されているノートを自由自在に操ることを目標としたスポーツ。空中でノートを内側に180度ひっくり返す「天地返し」を基本に、外側にターンさせながらトスする「サイドトス」、足の下をトスで通してから天地返しする「レッグスルー」など、さまざまな技の表現で出来栄えを競います。
この競技を考案したのは三浦靖雄さん。中学2年生のころにテスト勉強をしていた際、手元にあったノートで何か遊べないだろうか、と練習し始めたことがきっかけでした。
三浦さんが住んでいたのは、最寄り駅まで10キロ以上で現在でも上水道・下水道が通っていない広島の田舎。三浦さんは「そこらへんにあるものでなんとかして遊ぶという昭和初期みたいな子どもだった」と当時を振り返りつつ、人気を博していた「しあわせ家族計画」(TBS系)で、「シガーボックス」という3つの箱を操るジャグリングを見かけたことからインスピレーションを受け「フリースタイルノートブック」が誕生したと明かしてくれました。
なぜ22年も1人で? 三浦さんを取材
――「フリースタイルノートブック」の基本的なルールを教えてください。
三浦:ルールは「ノートをホールドせずに操ること」の1点です。“ホールド”というのは手で掴んだり手のひらに乗せてノートを静止したりする行為のことなので、競技中は常にノートを動かし続ける必要があります。
ホールドしていいのは開始前と後だけなので、繋ぎ技である「エイトノット」という八の字を描くようにノートを動かす技やそのほかの技で動きを繋いでいくことになります。ただ途中でノートを落としても減点にはなりますが失格とはなりません。
――三浦さんは「フリースタイルノートブック」世界ランク1位とうかがっていますが、評価・採点はどのように行われるのでしょうか。
三浦:体操競技やフィギュアスケートのように技の難易度や芸術性で決まるはずですが、競技人口が1人なので公式な試合は行ったことがありません。
――1人で長く競技を続けられてこられた理由を教えてください。
三浦:これは単純に、やっていてめちゃくちゃ楽しいということに尽きます。
誰かと競っているわけでもないですし、自分のやりたいタイミングでやりたいだけ練習して楽しんでいたら22年経っていました。完璧なコントロールで美しくノートを操れたときは非常に気持ちが良いです。中学・高校で少し披露したくらいでほとんど人に見せてこなかったせいもありますが、なぜ競技人口が増えないのか疑問です。
この1年半ほどはコロナ禍で家にいることも多かったのでフリースタイルノートブックをやる機会も増え、22年ぶりに新技も開発できました。室内でできる上に意外にかなりいい運動になります。
――プレイしやすいノートはどんなノートですか。
三浦:使用ノートに関しても規定はなくどのノートでも可能ですが、ノートによって難易度が大きく変わってくるのでノート選びは重要です。ノートの表面がサラサラしているとすぐにどこかに飛んでいってしまうので私はデルフォニックスというメーカーの「ロルバーンノート」を長く愛用しています。このロルバーンノートは表紙がラミネート加工のようなテカテカした加工になっており、手を当てた際の非常に強いグリップ力が特徴です。
似たような性能のノートでより手に入りやすいのはショウワノートの「ジャポニカ学習帳」でこちらも扱いやすいです。これらのノートで始めないと習得までに時間がかかります。私は中学当時使っていたのは日本ノートのカレッジノートだったので最初は苦労しました。
YouTubeにアップしている動画では2種類のロルバーンノートの表紙を切り貼りして裏表で違う色になるように自作改良したものを使用しています。これはノートを返したときにより視覚的にわかりやすくするためのものでここ数年で使い始めました。
また、ももいろクローバーZさんの番組「ももクロちゃんと!」に出演させて頂いた際に「フリースタイルノートブック公式ノートブック」が誕生したということもありました。競技専用のものなので4辺が閉じられていてノートとして使えないのですが、表面のグリップ力がいいですし、代わりにとても安定感があります。
――お話を聞いているうちに少しずつ「フリースタイルノートブック」をやってみたいという気持ちが高まってきました。初心者がまず取り組むべき技、注意点があれば教えてください。
三浦:まずは上記のような滑りにくいノートを用意して、開く側をテープで留めてください。ここを留めていないと回転させるときの摩擦で表紙がめくれて上手く技ができないことがあります。
またフリースタイルノートブックは風に非常に弱いので屋内でプレイすることを推奨しており、秋から冬にかけて手が乾燥する時期は手にハンドクリーム(ベビー用がおすすめ)を塗るとやりやすいです。
初心者でもノートを八の字に動かす「エイトノット」はすぐにできると思います。その「エイトノット」からノートを上にトスして、同じ手で上からひっくり返す「天地返し」を練習してみてはいかがでしょうか。「天地返し」はフリースタイルノートブックを代表する技ですし、これができると応用することで「サイドターン」「サイドトス」「レッグスルー」といった技もすぐにできるようになります。
――最後に今後の展望があれば一言お願いします。
三浦:すでに22年続けていますが、今後も足腰が立たなくなるまでは「フリースタイルノートブック」をライフワークとして続けて行こうと思っています。これから20年、30年続けて還暦を迎えた自分がどんな老練なノート繰りを見せるのか、今から我ながらとても楽しみです。
「こういう情熱は好き」「漢の生き様」「労働ばかりじゃなくて、こういうことに頑張れる人のいる社会って素敵」と多くの人に感動を与えている三浦さんの競技に対する姿勢。これからも世界1の座を守り続けてほしいですね。
画像提供:三浦靖雄(@torinikukaraage)さん
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