「ここもかよ!」な再現ポイントありすぎ 国鉄急行の「懐かしさ」を感じるか、それとも「珍しさ」を感じるか月刊乗り鉄話題(2021年7月版) えちごトキめき鉄道「観光急行」(2)(2/2 ページ)

» 2021年07月21日 19時00分 公開
[杉山淳一ねとらぼ]
前のページへ 1|2       

快速列車の「間合い運用」まで国鉄急行に通じる演出だった

 「えちごトキめき鉄道」って面白い名前ですよね。

えちごトキめき鉄道 観光急行 出発! トキてつの皆さんがお見送り。何しろ今回乗った試運転車の乗客は株主さんです。えちごトキめき鉄道は発足時鉄道ファンや地元の有志を対象に個人株主を募集。しかし赤字なので配当なし。感謝の証として試運転に株主さんを招待したとのことです

 ワタシは当初「キラキラネームだな」と揶揄(やゆ)しましたけれど、今ではすっかり定着しています。愛称は「トキてつ」。新潟県の県鳥で絶滅危惧種の「トキ」にちなんでいます。本社は新潟県上越市の直江津駅。ここから長野県方面に向かう路線が「妙高はねうまライン」、富山県方面に向かう路線が「日本海ひすいライン」です。

 この2つの路線は、もともとJR東日本の信越本線とJR西日本の北陸本線でした。北陸新幹線が長野〜金沢間を延伸開業したときにJRから経営分離され、新潟県などが出資する第三セクター鉄道になりました。地元の人々の通勤や通学のために残された鉄道です。

 しかし、かつて収入源だった特急列車は一部を残して新幹線に移ったため、基本的に赤字経営です。そこで、観光客に乗ってもらおうというわけで、まず観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」の運行を開始しました。

えちごトキめき鉄道 観光急行 日本海が見える区間でゆっくり走る

 そして今年(2021年)、“もっと手軽に楽しめる”をコンセプトに「観光急行」をはじめました。観光急行は「日本海ひすいライン」の直江津〜糸魚川間と、直江津〜市振間を1往復ずつ。合わせて2往復の運行です。

 このほかに、妙高はねうまラインでは「観光急行」と同じ車両を使って直江津〜妙高高原間を「快速列車」として運行します。こちらは急行料金が不要です。妙高高原発直江津行きは9時44分発車。東京圏に住んでいる人は、東京6時16分発の北陸新幹線「かがやき」で長野へ、そこからしなの鉄道に乗り継ぐと当日出発でも間に合います。

えちごトキめき鉄道 観光急行 ロングシートからもいい眺め
えちごトキめき鉄道 観光急行 山側の景色も味わい深い

 このように、急行電車や特急電車が“アルバイト的”に他の路線で運行する運用を「間合い運用」といいます。車両不足だった国鉄が少ない車両を活用する施策でした。つまり妙高はねうまラインの快速列車は「懐かしの間合い運用」の再現でもあるのです。

 何から何まで懐かしの国鉄急行に通じる演出ですね。

えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道の運行エリア(地理院地図を加工)
えちごトキめき鉄道 観光急行 「観光急行」は日本海ひすいラインを走る。「観光急行」の車両を使った「快速」は妙高はねうまラインを走る(地理院地図を加工)

(続く)

 次回(最終回)は、トキてつの「急行」とは実は「急いで行かない」意味だった……!? 「は!? なぜだ?」と思ってしまう独特なダイヤのワケと魅力をおまけ写真たくさんでお届けします。お楽しみに。


フォトギャラリー

えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道 観光急行 えちごトキめき鉄道 観光急行

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。日本鉄道全路線の完乗率は100%(2021年4月時点)



前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」