「は!? なんで?」えちごトキめき鉄道の独特なダイヤ 急行は「急いで行かない」の意味だった!?:月刊乗り鉄話題(2021年7月版) えちごトキめき鉄道「急行列車」(3)(1/3 ページ)
えちごトキめき鉄道の「急行」には2つの意味があります。え? 「急いで行かない」なの……?
乗ってきました! 昭和の鉄道ファンに胸アツすぎる注目の列車、えちごトキめき鉄道の「急行列車」。前回は国鉄時代を感じまくってしまう「ここもかよ!」と驚く再現性のこだわりっぷりをじっくり解説しました。最終回の今回は、「は!? なぜだ?」と思ってしまう独特なダイヤにも実は深〜い意味があることを解説します。
独特なダイヤ、えちごトキめき鉄道の「急行」には2つの意味がある
えちごトキめき鉄道の観光急行はダイヤもユニークです。
観光急行1号・2号・3号は、各駅停車より所要時間が長くなっています。直江津〜糸魚川間、各駅停車は42分。しかし1号は54分、2号は49分、3号は48分と長くかかります。この3本は「急行」と言っても「急いで行かない」列車なのです。海が見える区間で徐行するほか、1号と3号は能生(のう)駅で時刻表に表記されない停車をします。
これは「運転停車」といいます。本来は単線区間で反対方向の列車と行き違ったり、特急に追い越されたり、運転士が交代したり、という鉄道運行の都合で停まります。乗客の扱いをしないので時刻表には掲載されません。
観光急行は、この運転停車を能生駅で「再現」します。しかし、複線なので行き違いのためではなく、別の列車に追い越されるわけでもなく、運転士交代でもありません。ただ能生駅に「運転停車するためだけ」に停まるのです。
その昔、国鉄時代の能生駅で「能生騒動」という事件がありました。
まだ北陸本線が単線だったころ、能生駅で特急列車同士が行き違うために運転停車(乗客は乗り降りできない)が設定されました。これが国鉄の手違いで旅客扱いと誤って伝わってしまいました。地元は「我が町の駅に特急が停まるぞ!」と大喜び。「ミス能生コンテスト」を実施し、選ばれた女性が運転士に花束贈呈、駅では踊りを披露して歓迎しました。
ところが列車のドアは開かずにそのまま発車していきました。「え……?」。地元の皆さんガッカリで大問題となりました。
観光急行はこの能生騒動のエピソードにひっかけて能生に停まります。ただしえちごトキめき鉄道はガッカリさせません。プラットホームで地元有志の方がお菓子やお弁当を販売するなど、乗客との交流イベントが行われるそうです。
観光急行「4号」は本物の「急いで行く」列車です。糸魚川〜直江津間を28分で走ります。各駅停車より14分も早く、かつて走っていた特急並みの速度。413系のモーターがギュイーンとフル回転します。そのスピードとモーター音を楽しむ列車です。
このダイヤには急いで走る裏の事情もあって、臨時のイベント列車として、もう一度糸魚川を往復できるように早く戻っているそうです。
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