いつか新明解を全版そろえたい――小6で辞書の面白さに気づいた人の10年後が「すてきな夢の叶え方」「初志貫徹」だと話題に
投稿主さんに辞書を好きになったきっかけなど伺いました。
辞書の面白さに気づいた小学生が10年後、卒業文集へと書いた夢を変わらず持ち続けている姿が話題に。「すてきな夢の叶え方」「貫いててすごい」といった声が上がっています。
投稿したのは、Twitterユーザー・んちゅたぐい(@iwanttobeJinrui)さん。小学6年生当時の卒業文集を振り返ると、“家にある5冊の辞書で「一つの言葉を引き比べる」ことの面白さ”にハマっていると書かれており、
いつか新明解(※新明解国語辞典)を全版そろえたいと思っています。全版そろったら読み比べて解説、例文がどう変わっていったのか調べてまとめたいです。絶対おもしろいと思います。
と、いつか実現したい夢が語られています。どれだけ辞書が好きだったのかが伝わってくる、確信のこもった力強い最後の言葉よ。
そして「10年後にはこうなります」と公開された写真には、新明解国語辞典から広辞苑、明鏡国語辞典、三省堂国語辞典などなど、たくさんの辞書に囲まれて過ごす現在のんちゅたぐいさんの姿が。まさに初志を貫徹している……!
コメントでは、辞書への変わらない愛と有言実行ぶりに「すごい!」「本当に叶えたとは」と驚く声から、「尊敬する」「ほんとに好きなことがあるのいいな」など、羨ましいといった声も寄せられています。
辞書の面白さに小学生時代に気づいた、んちゅたぐいさん。その気になるきっかけや魅力について詳しく伺いました。
――辞書を好きになったきっかけは?
んちゅたぐいさん: 小学校5年生ごろに、家の本棚から『新明解国語辞典』の第四版を見つけたことがきっかけで興味を持つようになりました。父に「動物園」を引いてみるように言われ解説を見てみると、小学生の私にもわかるほど衝撃的な解説があり一気に惹(ひ)かれました。
――現在どれくらいの辞書を持っていますか。
んちゅたぐいさん: 『新明解国語辞典』第二版〜第八版、『広辞苑』初版・第六版・第七版、『三省堂国語辞典』第四版・第七版、『岩波 国語辞典』第三版・第五版・第八版、『新選国語辞典』第九版、『明鏡国語辞典』第二版・第三版、『新漢語林』第二版。さらに『三省堂 現代新国語辞典』『三省堂 例解小学国語辞典』『旺文社国語辞典』『集英社国語辞典』『国語小辞典(永岡書店)』『旺文社古語辞典』『NHK漢字表記辞典』の計26冊です。
――実際に引き比べてみて面白かった言葉はありましたか?
んちゅたぐいさん: 【ティーシャツ】の解説からファッション感覚の変化が見えます!(以下『新明解国語辞典』の各版より)
- 第二版・第三版:そでを広げた形がTの字に似ている、丸首半そでの、男子用シャツ。
- 第四版:そでを広げた形がTの字に似ている、丸首のシャツ。若向き。
- 第五版:頭からかぶって着用する丸首のシャツ。形がTの字に似ていて、カジュアルウェアとして好まれる。若者向き。
- 第六版・第七版・第八版:頭からかぶって着用する丸首のシャツ。形がTの字に似ていて、カジュアルウェアとして好まれる。
新明解から見た“Tシャツ”の捉えられ方が、第三版が出た1985年頃は「男子用シャツ」、第五版が出た2001年頃は「若い人向きのカジュアルウェア」、第六版が出た2005年以降は特に性別や年齢関係なく着られる「カジュアルウェア」と変化していることがわかります。
――卒業文集では「いつか新明解を全版そろえたい」とありましたが、当時、特に新明解にこだわった理由がありましたら教えてください。
んちゅたぐいさん: その作文を書いた小6の時点では『新明解国語辞典』にしか興味がなかったというのがその文の一番の理由だと思います。しかし、新明解を引き比べていくうちに他の国語辞典の個性にも気づき始め、興味が広がっていったため、今では新明解にこだわらず他の国語辞典も全版そろえるべく収集を続けています。
――辞書収集の魅力、楽しさはどんなところにあると思いますか?
んちゅたぐいさん: 国語辞典を1冊買うことで新たに何万語分もの情報が増えるというところに魅力を感じながら収集しています。
持っている国語辞典がここまで増える前は、「この語の岩波国語辞典での解説が気になるのに手元にない」など、もどかしい思いをすることが多くありました。気になった語を気になった時点で幅広く比較できるようになり便利なので、これからも収集を続けます。
ちなみに、『新明解国語辞典』は2020年11月に第八版が発売(関連記事)。『広辞苑』は2018年1月に10年ぶりの改訂版(第七版/関連記事)が発売されました。
なんとなく「国語辞典は1冊あればいいや」なんて思っていましたが、改訂による語釈の修正・新語の追加から、上記のように社会の変化や、各辞書ごとの個性や編者の考えを読み解いたりできるのは、別辞書および複数の“版”を持っている人だけの特権だとわかると、確かに集めたくなってきます。この沼は思った以上に深そうだ……。
なお、Twitter上では『新明解国語辞典』公式Twitterアカウント(@shinmeikoku)や岩波書店の公式Twitterアカウント(@Iwanamishoten)も反応。さらに他の出版社アカウントからも、んちゅたぐいさんの「絶対おもしろいと思います」に同意する声が寄せられています。
画像提供:んちゅたぐい(@iwanttobeJinrui)さん
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