『連ちゃんパパ』作者が描く「あだち充を漫画家にした男」の豪快エピソード! 『あだち勉物語』ありま猛インタビュー(2/3 ページ)
ありま よく高田馬場の雀荘に行ってました。腕自慢がそろっていて普段はその人たちで囲むんだけど、早稲田の学生もいっぱい来てたんです。もう、そんなのいいカモですよね(笑)。たまに漫画家さんも来たりして。あとはイカサマをやってるのを勉さんが見つけて、「この野郎!」ってケンカになったりとか……。
――むちゃくちゃですね!
ありま さっきも言ったように寂しがりやだったから、基本的に一人では遊べない人だったんですよ。ただ麻雀だけは別で、1人で遊びに行ってました。それ以外は必ず誰かそばにいないと嫌だったみたいです。
後々、フジオ・プロのスタッフも独立しはじめて、遊び相手がいなくなっちゃったんです。そしたらどこで見つけてきたのか知らないけど、中央線沿線の暴れん坊を集めて宴会やってました。そこにも引っ張り出されたりしましたね。そういう人たちに対しても「よく言えるな……」って思うようなことを口走るし、漫画にできないネタも多いんです(笑)。こないだ描いた拘置所の話も、実際に入ってましたから。
――すさまじい……。
ありま 充さんも麻雀強いんですよ。毎年正月に群馬の実家に呼び出されて麻雀三昧だったんですけど、あだち兄弟は本当に強い。もともと強い上に、とにかく勝負から降りないんです(笑)。
散々な目にも遭いましたけど、おかげで僕が再デビューした時の漫画では麻雀をネタにしたんです。雀荘とかでいろんな人たちを見たのを漫画にしようと思って。結果的に後の仕事に生きたというのはありますね。
――勉さんは競馬みたいな公営ギャンブルはやらなかったんですか?
ありま 勉さんも充さんもやらなかったです。「パチンコも麻雀もカードも全部自己責任だけど、競馬や競輪は他人がやってることだから信じられるかよ」って言ってました。群馬って公営ギャンブルもそろってますけど、正月に行っても三が日の間ずっとパチンコやって麻雀やって、またパチンコやって麻雀やっての繰り返し。僕らがアシスタントの頃とか、周りの人もほとんど公営ギャンブルはやってなかったです。
――『あだち勉物語』にも描いてありましたが、そもそも当時の漫画家のアシスタントってトランプとか、室内でできる博打やゲームに馴染んでたんですね。
ありま 先生の原稿が上がってくるまで、カードだとかサイコロだとか室内でできるゲームをやってるしかないんですよ。今みたいにスマホとかゲーム機とかもないし。待つのが仕事っていうところもあるし、先生の方もずっと机に貼りつかれるより適当に遊んでてくれた方が楽だったんだと思います。
そもそも、「一番博打なのは、漫画家って商売自体でしょ」って話でしたね。生き方自体がギャンブルなんだから、パチンコなんか遊び。遊びすぎて痛い目にあってましたけど(笑)。とにかく仕事自体が一番のギャンブルでした。
落語とチンピラファッション、そしてあだち充の反応は?
――『あだち勉物語』では、ずっと落語を聴きながら作業しているシーンも印象的でした。
ありま 勉さんも充さんも落語は好きでしたから。酒抜きでもアドリブで落語やったりしてましたよ。あの頃はラジオでもテレビでも落語の番組が多かったですし、圓生のテープとかLP盤があって、それをずっと聞いていたと思います。
――勉さんは、後に赤塚先生と一緒に立川一門に入門していますね。
ありま もともと、高井研一郎先生が手品が大好きで、ご自身もかなり上手だったんですよ。それで寄席か何かの舞台に立つために立川一門に入って、その紹介で赤塚先生と勉さんも入ったんです。だから、立川一門と一番付き合いがあったのは高井先生だったはず。
――へー! それは知りませんでした!
ありま 弟子入りといっても、赤塚先生と勉さんのは一門の宣伝のために有名な人たちを弟子に入れて、ちょっとお金も出してって感じでしたね。タニマチみたいなもんです。ただ充さんも談志師匠は好きだったから、縁ができてすごく喜んでたと思います。昔の漫画家はけっこうみんな落語好きだったんですよ。原作なしのオリジナルで描くのが一般的だったから、知らないうちに落語がお話作りの参考になってました。
――あと、劇中の描写で印象的だったところだと、勉さんの服装が、言っちゃ悪いですけどけっこうヤクザっぽいというか……
ありま 勉さんはいっつもイタリアの某ブランドのシャツが好きでよく着てたんですけど、ここのシャツってあっち系の人に人気のあるブランドで、当時はチンピラのユニフォームみたいなもんだったんですよ。
勉さんと充さんが一緒に石垣島かどこかに旅行に行くのに付き合ったことがあるんですけど、充さんに「罰ゲームでこういうチンピラみたいなシャツを着せよう」ってことになったことがありました。
――本当に劇中同様のチンピラっぽい服装だったんですね……。対して、充さんはけっこう地味な服装ですね。
ありま 充さんはパーカーというか、ワイシャツというか、とにかく地味ですね。服装の好みは兄弟で全然違いました。古谷三敏さんが「自分が漫画家になれたのは、全て赤塚先生の逆をやっていたからだ」って話すのを聞いたことがありますけど、充さんは勉さんの逆をやっていたから漫画家としてうまくいったという説がありますね(笑)。
――本当に対照的な兄弟なんですね。
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