軽自動車界のカリスマ、鈴木修語録(前編)(2/2 ページ)

» 2021年08月26日 14時00分 公開
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非関税障壁の指摘は「内政干渉」

軽自動車は国内で販売全体の4割近くを占めるなど、いまや確固たる地位を確立しています。しかし、この間、決して順調とは言えませんでした。TPP=環太平洋連携協定では「非関税障壁」「軽は優遇されている」と指摘されましたが、修会長は突っぱねます。

「軽は優遇だとは思っていない。ひと様の税金をどうだこうだと言う前に、内政干渉なさる前に、(アメリカは)輸入税の2.5%を撤廃しなさい」(2013年5月・決算会見)

スズキ 鈴木修 好々爺のイメージの修会長だが……(2018年5月10日撮影)

弱い者いじめ、ほどほどに売ります、ダブルダブルパンチ

国内税制にもかみつきます。自動車取得税の廃止に伴い、軽自動車税の引き上げが検討されている現状にも公然と批判しました。

「弱い者いじめではないのか。こういう考え方がまかり通るのは、残念というよりも悲しい」(2013年8月の記者会見)

結局、軽自動車税は引き上げられ、決まったことには従うという潔さを見せる一方、負けず嫌いの修会長は、ちくりとした皮肉も忘れませんでした。

「来年売れ行きが落ちると増税になったからと言われるし、余計売れるとまだ大丈夫と言われたりするので、“ほどほど”に拡販して行きたいと思っている」(2013年12月・新車発表会)

さらに2度の消費税増税などで、軽自動車には逆風が吹きます。

「現状はトリプルパンチ、またまた値上げとなれば、何だ……?“ダブルダブルパンチ”」(2014年11月の決算会見後、記者団に対して)

修会長ならではの“造語”も生まれ、周囲は笑いに包まれました。

「2番でいいじゃないか」という心境にはなれない

ご存知の通り、軽自動車分野はダイハツと熾烈なシェア争いを繰り広げています。当然、トップのこだわりは修会長も持っていました。

「気にならないと言えばうそになる。れんぼーさんが言った『2番でいいじゃないか』という心境にはなれない」(2013年2月・新車発表会)

立憲民主党の蓮舫議員(当時・民主党)が行政の事業仕分けのときに言い放った「2位じゃダメなんですか?」という発言を引き合いに出しました。しかも名前は「れんぼー」。以前、名前を間違えて問題となった大臣がいましたが、“元祖”は修会長……しかし、修会長が言うと、どうにも力が抜けてしまいます。

あまり口を出さないと痴ほう症になる

2015年6月には、社長の座を長男の鈴木俊宏社長に譲り、自らは会長に専念することになりました。前述のVWの問題は「始末は私がきちんと取りたい」と引き続き担当します。

「古いタイプだから、怒って叱咤激励する方だが時代は変わった。ほめて育てるという方向にいつかは変わらなくちゃいかん」(社長交代会見)

そう言いつつも、仕事への意欲はまだまだ衰えていません。

「あまり口を出さないと仕事をやらなくなって痴ほう症になるから、適当にやって行きたい」

お行儀の悪い売り方はやめた

軽自動車のシェア争いはその後、ヒートアップし、乱売状態になって行きます。「自社登録」という、販売台数をかさ上げする手法も横行し、修会長は危機感を募らせます。

「軽自動車が白物家電の二の舞になるのではないか。お行儀の悪い売り方をやめた。1台ずつを大切に売って行く」(2016年5月・決算会見)

さらにその後、燃費検査の不正問題が持ち上がり、スズキは最大の危機に見舞われます。

(後編に続く)

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