「何でもありの境目ギリギリを突いていく」 『テニスの王子様』連載開始から22年、原作者・許斐剛がファンの想像を超え続ける原動力(1/2 ページ)
アニメ、ミュージカルと多方面に展開される人気作。
“テニプリ”の愛称でおなじみの人気コミック『テニスの王子様』『新テニスの王子様』シリーズから、完全新作映画「リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様」が、9月3日から劇場公開されます。
アニメ、実写、ミュージカルと多方面へのメディアミックスに加え、原作者自らライブステージに立ち、声優陣やミュージカル版キャストと共演するなど独自の道を貫いてきたテニプリは、22年の歴史で初の全編3DCG作品に挑み、テニスにラップ、ダンス、アメリカで大冒険と新たな境地へ踏み込みます。
製作総指揮として同作にかかわるのが、原作の許斐剛先生。漫画家という枠を超え、クリエイターとして「誰も通っていない道を突き進んでいく」(『新テニスの王子様』33巻)と、原作でも「毎回がクライマックス」の矜持通り読者の予想を裏切る展開の連続。連載開始から22年が経過した今も常に読者へ新鮮な驚きと喜びを与え続けています。
新作映画製作のきっかけになったのは、2016年、2018年のワンマンライブで自らVRのキャラと共演した経験。「現状維持は面白くない」と豪語する許斐先生が目指した映画作品とはどんなものなのか、先生本人に話を伺いました。
「『テニプリ』を男の子に見てもらいたい、じゃあラップとテニスを融合させてみよう」
―― 映画をご覧になった 率直な感想からお聞かせください。
許斐 まだ未完成ですけど(編集部注:インタビュー日は6月28日)、見ていて驚きの連続です。思っていた以上にすごいものができたという実感があります。3DCGのアニメは、表情を作るのが難しいと聞きますが、神志那(弘志)監督の演出や、間の取り方が絶妙にすばらしくて、キャラクターにちゃんと心がある。表情がイキイキしていました。全く人形っぽく見えないのがすごいですね。
―― 主人公・越前リョーマとテニスギャングのラップバトルが注目されています。皆川純子さんのラップはレアだと感じましたが?
許斐 初めてですね。見どころです。リョーマにラップのイメージが全くない、過去に一度もやっていないという印象はあるかと思いますが、実は今までのキャラクターソングの曲中に入れ込んだりはしていました(※編集部注:「between you & me〜ここだけの話〜」など)。ただ今回は、普段そういったキャラクターソングを聴かない男の子にも見てもらいたいという思いがあって、ラップとテニスを融合したバトルをに挑戦してみようと思いました。
ラップとテニス、両方でテニスギャングを打ち負かすリョーマ。リョーマがラップをやりだして、本場アメリカのラッパーを倒してしまう。そのビジョンには、『テニスの王子様』が持つ“デカい大人たちを少年がバッタバッタとなぎ倒す”カタルシスが共通していて、うまく表現できたと思います。そしていろいろな方々に取り上げていただけたのもうれしかったです。
―― それはもう! リョーマが立ち向かうテニスギャングのリーダー・ウルフ役は、杉田智和さんが演じています。
許斐 杉田さんは当初「ラップは絶対やりたくない」と仰っていたのですが、ブースに入ってウルフというキャラクターについて打ち合わせを重ね、ラップという形で表現したいものの意図を理解していただいた上で挑戦していただきました。どうしてもウルフというキャラクターを杉田さんに演じてもらいたかったので。
結果、ものすごくかっこいい形になりました。(子分の)ブーとフーを演じる武内駿輔さんと竹内良太さんのラップがまたものすごく上手で。「ギャングたちはかなりうまいぞ、彼らを倒すにはさすがのリョーマも大変だ!」とプレッシャーのかかる中、皆川さんも見事なラップで応えてくれました。まさにリョーマそのものだなと、うれしくなりましたね。
―― さらにゲストとして朴ロ美(ロは王へんに路)さんが同じく劇場版オリジナルキャラクターのエメラルドという役を演じています。
許斐 朴さんも杉田さんと一緒に、今までの『テニプリ』にはなかったテイストを加えてくれました。リョーマの父・越前南次郎や、竜崎桜乃という初期からの登場人物がいる一方で、また新しい風が吹いて、そのぶつかり合いの相乗効果で魅力がどんどん高まっていく様がうまく表れていると思います。
かっこいいなと思ったのがエメラルドとリョーマの対戦シーン。3Dでのテニスシーンは新しい挑戦でしたし、2Dでは表現の難しい細やかなボールの回転の描写や、滑らかで迫力のあるラリーは見ていてワクワクしました。
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