「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」レビュー 忍者と極道がバイクと日本刀で戦う超絶アクション問題作(2/3 ページ)
こうした「少年ジャンプ的」な修行がハリウッドの大作アクション映画で見られることが、またうれしい。なお、この試練でメンター的な役割を担う「ブラインドマスター」は、分かりやすく「座頭市」をリスペクトしているのだろう。
任侠映画のような案外シリアスな物語
ここまで書いてきた内容であると良い意味でバカバカしい、頭空っぽで見られる娯楽映画だと思う方も多いだろう。だが、物語そのものは「復讐心」や「異なる価値観の板挟み」などを主軸にした、意外にシリアスなものだったりする。
あらすじはこうだ。幼い頃に何者かに父を殺され復讐心を捨てきれないでいるスネークアイズは、ある男の命を救ったことから秘密忍者組織「嵐影」への入門を許可される。 600年に渡り日本の平和を守り続けた嵐影は、悪の抜け忍集団と国際テロ組織「コブラ」連合軍による攻撃を受け続けていた。 スネークアイズはこの危機を救う真の忍者となるべく3つの試練に挑むのだが……。
ロベルト・シュヴェンケ監督自身、本作は任侠映画と呼ばれるヤクザ映画の特定ジャンルを想起させる物語であり、「任侠映画のヒーローたちは家族や集団の相反する価値観と自分自身の気持ちとの間で板挟みになる」「このジレンマは映画におけるスネークアイズと(ライバルキャラの)ストームシャドーの両方の運命においても軸となっている」と語っている。
主人公チームはヤクザではなく正義の忍者集団ではあるが、義理人情や「スジ」を通そうとする信念と、それにそぐわない復讐心を燃やす主人公との価値観との対立が描かれており、なるほど裏切りや共闘などの複雑なドラマが展開する任侠映画に通ずるものがあった。主人公とライバルキャラはまるで「コインの表と裏」のような関係性でもあり、主人公の忠誠心と己の目的とのせめぎあいなども、見応えのあるドラマになっていた。
賛否両論必至の衝撃の展開
……と、ここまで「漆黒のスネークアイズ」を称賛したが、終盤のとある展開がヤバい意味でヤバいので、賛否両論は免れないだろう、というのが正直なところだ。
ネタバレになるので具体的にどういうトンデモ展開になるかは一切明かせない。だが、「こうなるんだろうな」という予想の真逆を突っ走って行き、「そうはならんやろ! ていうかすんなや!」とツッコまざるを得ない、どんでん返しをどんでん返されたような衝撃があった、ということだけは告げておこう。
願わくは、SNSなどでネタバレを踏んでしまう前に映画館で見届けてほしい。はっきり言って怒る人もいると思うし、クライマックスの超絶アクションを純粋に楽しむどころじゃなくなる深刻な問題も発生していた気もするが、筆者個人としては「どういう気持ちになれと?」という困惑もむしろ面白かったし、通常の映画ではあり得ない方向に突き抜けた驚きのほうが勝ったので決して嫌いではない。
そんなわけで、日本を舞台にした忍者と極道の極限バトル、「ジョジョ」みたいなNINJA修行、意外にしっかりしたドラマなどまっとうかつ楽しい要素がそろっていながら、賛否両論必至の衝撃の展開のおかげで問題作に片足を突っ込んでいる気がしなくもない「漆黒のスネークアイズ」が、いかにたくさんの魅力を備えているかを分かっていただけただろうか。ぜひ、仲の良い友人と一緒に見て、会話に花を咲かせてみてほしい。他のアクション映画にはない何かが、そこにはきっとある。
最後に余談だが、敵の大ボスが「ケンタ」という名前で呼ばれるのが、日本人の感覚からするとズレを感じるのがちょっと可笑しかったりもする。本作の日本語吹き替え版は木村昴、小林親弘、井上和彦、竹内順子、白石涼子などとても豪華な配役かつ素晴らしいクオリティーであり、その大ボスことケンタを演じる子安武人が「怒りんぼさんだな〜!」と挑発する様も愉快なので、声優ファンはぜひ吹き替え版で楽しんでほしい。
(ヒナタカ)
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