『ちいかわ』が“幸福論を問う作品”であるという決定打 なぜ「オフィスグリコちゃんのカエル」でTwitterがどよめいたのかあのキャラに花束を(3/4 ページ)

» 2021年10月24日 20時45分 公開
[たまごまごねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

この世界の鍵となる存在・モモンガ

 『ちいかわ』の幸福論をより複雑にしているのが、準レギュラーとして出番の多いモモンガの存在です。一見かわいらしいふわふわのキャラクター。しかしなぜか色んな人に邪険に扱われています。鎧さんたちは普段、ちいかわ達に対して過保護ともいえるほど愛情を注いでかわいがっているのですが、モモンガにだけはやたら冷淡です。

 このモモンガ、中身はでかつよで、小さくかわいい元モモンガと魂を入れ替えたことでかわいい身体を手に入れた、という過去があるようです。でかつよ側が無理やりに乗っ取ったような形。理由は恐らく、かわいくなりたかったから。

 先ほどのオフィスグリコちゃんは自ら強くて大きな存在になる道を選びましたが、モモンガは一度大きく強い存在になったにもかかわらず、小さい身体になりたい、かわいくなって甘やかされたい、という欲望に飲まれた……ということなのかどうか。このあたりは「モモンガが誰にも相手にされず、邪険にされるギャグ」としてしか描かれていないので、周囲に本性が明らかになったときに大きく話が展開しそうです。少なくとも鎧さんたちは、既にモモンガの本性を知っている可能性はありそうですが……?

 問題は乗っ取られた元モモンガの方。この子はモモンガの姿に当然戻りたいわけで。しかし乗っ取られたままなので、他のでかつよのように凶暴ライフを楽しむわけでもなく、一人孤独に過ごしています。

 『ちいかわ』は基本的には、事件が少しでもいい方向に進もうとするのを繰り返す作品ではあるのですが、このモモンガ絡みは悪い方向にいったまま戻ってこれていない例の一つ。他にもちいかわの小さな友達の話など、「ちいかわ層とでかつよ層」の不一致による、悲しい結末のままの物語はいくつか存在します。やりきれない話ですが、どうしても価値観の違いで解決しないものはある、と認めざるを得ない。うまくいかなさも、『ちいかわ』という作品の魅力です。


ランカーさんが示してくれる、かわいくて強い生き方

 ただしちいかわやハチワレのように、小さくてかわいいまま強くなりたいという思いを持つものも少なからずいます。とても難しいことですが、それを体現する存在として出てくるのが上位ランカーさん(ラッコ)

 ふわふわ小さくかわいらしい姿ですが、明らかに他の子と違う歴戦の勇者の表情。実際討伐数はものすごい数のようで、巨大な相手も倒してバリバリ稼いでいるようです。それでいて甘いものが大好きだったり、一人だと歌を歌うのが好きだったりとかわいらしい一面もしっかりあります。

 ランカーさんはちいかわとハチワレの、少年漫画的な師匠ポジションとして登場します。2人の姿の中に何かを見いだしたのか、自らの経験から激励します。ふたりにとってのランカーさんは、他にない大事な「大人」の姿であり、憧れの人、師匠と呼びたい相手です。

 生き方は「小さくてかわいい」と「でかくて強い」の二極化されているわけではない。小さくてかわいくて強く生きることもできる。ただしそれには、強靭(きょうじん)な精神力がいる。『ちいかわ』世界には労働や命の危険など過酷な面が多々あって、人生と命の選択を迫られる場面があります。それが分かれば分かるほど、ランカーさんの存在はこの作品の光、ちいかわやハチワレやうさぎが成長していく道の可能性を開いてくれます。

 ちゃんと自身の武器で生き抜いて信念を貫くことはできる。ランカーさんは戦って強くなることに活路を見つけましたが、もちろん戦闘だけがこの世界を生き抜く術ではありません。

 ちいかわは戦闘面では決して強くありません。頭もいい方ではないようです(草むしり検定5級頑張れ……!)。しかし意外とダンスを覚えるのは得意なようで(パジャマパーティーズの代役の際に発揮された)、しかも歌が上手らしい。戦うことはできなくても、みんなを鼓舞する才能をちいかわは持っていることを、ランカーさんは見抜いています。果たしてちいかわは一歩成長したときに、どういう選択をするのか。少なくとも、幾多の困難をハチワレとうさぎとともにいることで切り抜けてきたのですから、強い友情のきずながある限りでかつよになるルートは選ばなさそうです。

 なあちいかわ、アイドルにならないか……?


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/08/news006.jpg 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  2. /nl/articles/2412/05/news178.jpg イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  3. /nl/articles/2412/07/news025.jpg 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  4. /nl/articles/2412/07/news024.jpg 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  5. /nl/articles/2412/08/news003.jpg ダイソー&セリアの毛糸6玉が、みるみるうちに…… たった4時間編んで完成したとは思えないオシャレアイテムが話題
  6. /nl/articles/2412/07/news039.jpg コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  7. /nl/articles/2412/07/news020.jpg “ひっつき虫”を簡単に取るには…… 身近なアイテムでスッキリするライフハックに「これでイライラしないで取れる」「今度、やってみます」
  8. /nl/articles/2412/07/news057.jpg その発想はなかった! 手に描いた“孫悟空” → 広げたら…… “まさかの変化”にテンション上がる「センスだね」
  9. /nl/articles/2412/08/news023.jpg お留守番を頑張った柴犬、飼い主がそのまま寝ようとした瞬間…… コントのような“お怒りモード大暴走”に「ほんまにおもしろいww」「いいぞもっとやれ」
  10. /nl/articles/2412/08/news016.jpg 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
先週の総合アクセスTOP10
  1. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  2. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  3. 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
  4. 勇者一行が壊滅、1人残った僧侶の選択は……? 「ドラクエでのピンチ」描くイラストに共感「生還できると脳汁」
  5. 「笑い止まらん」 海外産アプリで表示された“まさかの日本語”に不意打ち受ける人続出 「何があったんだw」
  6. パパが好きすぎる元保護子猫、畑仕事中もくっついて離れない姿が「可愛すぎる」と反響 2年以上がたった現在は……飼い主に話を聞いた
  7. アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
  8. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  9. 「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
  10. PCで「Windowsキー+左右矢印キー」を押すと? アッと驚く隠れた便利機能に「スゲー便利」「知らなかった」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」