限られた空間でどう魅せるか 設営の参考にしたい同人誌『サークルスペースの作り方』司書みさきの同人誌レビューノート

あるあるの体験を踏まえた試行錯誤。

» 2021年11月28日 12時00分 公開
[みさきねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 街のあらゆるところで、人が増えたなと感じることが多くなってきました。今までにない新型感染症に対策をしながら、実際の会場に足を運ぶ同人誌即売会も少しずつ開催が増えてきているようです。今回は同人誌即売会にサークル参加した場合の展示方法について描いた同人誌です。

今回紹介する同人誌

『サークルスペースの作り方』A5 24ページ 表紙2色刷り・本文モノクロ

著者:みどり


同人誌 図書館 司書 クラフトの紙に白と蛍光水色のインクが爽やか

“設営完了”できるかな? 同人誌即売会の卓上ディスプレイの記録

 こちらのご本は、1冊の同人誌を持ってはじめて同人誌即売会にサークル参加したときから、11種以上の発行物をテーブルに並べるようになるまでの、本の並べ方の記録です。作者さんが実際に同人誌即売会に参加された状況がイラストとマンガで描かれています。同人誌即売会では、おおむね長机の半分が自分の持ち場所です。その限られた空間でどんなところを工夫したのか、使用した道具類を具体的に挙げつつ解説され、さらにここは改善の余地ありという点も併せて随所にコメントが添えられています。

同人誌 図書館 司書 最初はぼんやりとしたイメージからのスタート

「常にスペースの限界と戦ってる」あるあるの体験を踏まえた試行錯誤が楽しそう

 発行物を持って同人誌即売会に参加するのって、うれしいです。しかし何度かやっているとある日、はたと「もう置く場所がない」と気付いたり、はたまた周りを見回して「なんかうちのスペース寂しく見える?」と思ったり。そんな、参加してみて分かる現場の空気や、困ったことのあれこれを、読んでいるうちに私も思い出しました。

 例えば、本を飾れる小さなイーゼルをどう扱われているかに注目すると、新刊1冊を飾るところからはじまり、やがて置き場所がなくなって撤去したかと思えば、複数の見本誌を並べるためにたくさん買い足された時期もあったとのこと。道具一つにもそんな二転三転っぷりが読み取れ、作者さんの努力と葛藤がわがことのように感じられてきました。

 「あっ、そういえば私もこれ困ってました」と自分のあるあるに置き換え、照らし合わせて参考にできるのは、ともすれば慌ただしさに紛れて忘れてしまいそうなイベントという非日常体験をきちんと振り返り、見える化・言語化された成果ではないでしょうか。卓上の様子はこつこつと試行錯誤を繰り返す図ですが、すっきり見やすく軽やかに描かれて、あるあるの気持ちと一緒に、やってみたい! なわくわくも浮かんできましたよ。

同人誌 図書館 司書 この頃はイーゼルが置けない期。もう並べられない…

作品を届ける力。同人誌即売会の面白さを存分に

 本を作るだけでなく、どう並べてPRするかという、いわば書店さんのような見せ方までも自分一人でコントロールできるのは、同人誌即売会の面白さの一つではないでしょうか。作者さんは最初のサークル参加からテーブルクロスやポップ、ポスターも準備されたとのこと。そんな、当初から「どうやって多くの人に手に取ってもらうか」をという作品を届ける力を意識しながら歩んでこられた奮闘記を、こうして同人誌という形で参考にできるのはすてきな循環ですね。

 どう見せたいか? は、どう作品を届けたいか? という自分との対話ともいえるのではないでしょうか。作者さんも「サークルの数だけレイアウト案って無限にあると思います」と書かれている通り、作品のサイズや、即売会ごとのルール、ジャンルなどによって、スペースへの置き方はさまざまにバリエーションが考えられます。本づくりに加えて、「届ける楽しさ」一歩前進! なご本ですよ。

同人誌 図書館 司書 悩みながらも前進!

サークル情報

サークル名:道草パレット

Twitter:@michipale

入手できる場所:BOOTHメロンブックス

次回イベント参加予定:ナレッジガレージ(12月5日)、ノーウェイマーケット(12月12日)、おうちdeクリスマスマーケット2(12月17日、会場A:う2)、NO WAY MANIACS(12月26日)、冬コミC99(12月31日、ネ36a)


今週の余談

 今回は現地に赴いて参加する同人誌即売会のスペースについてですが、オンラインイベントや委託など、それぞれに工夫があるのでしょうね。作品としてまとめられることで、後年になったら「今」の記録になりそうなのもとても面白いと思います!

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

関連キーワード

同人誌 | 図書館 | コミケ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」