【追悼】「イル・ディーヴォ」カルロス・マリン、日本を愛し愛された太陽の人 「日本のために何ができるか」熱い思いが実った「故郷」歌唱動画初公開(1/2 ページ)

日本への愛が詰まったパフォーマンスを初公開。

» 2022年02月14日 12時00分 公開
[小西菜穂ねとらぼ]

 多国籍ボーカルグループ「イル・ディーヴォ」のメンバー、カルロス・マリンが2021年12月19日に53歳で急逝しました。生前はグループ、ソロとして計16回来日し、日本武道館19公演を含む51公演を実現させる高い人気を誇る海外アーティストで、親日家としても知られるカルロスは東日本大震災後の復興を気に掛けていました。

「イル・ディーヴォ」カルロス・マリン 2021年12月に死去したカルロス・マリン(写真:土居 政則 写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)
メンバーからの追悼コメント

 カルロスの死去に際し、グループを結成のきっかけを作り、ワン・ダイレクションやスーザン・ボイルなどのプロデューサーとしても知られるサイモン・コーウェルは「人生を愛し、パフォーマンスを愛し、初期からグループを応援し続けるファンへ、いつも心から感謝をささげる人でした」と追悼声明を発表。ともにコラボレーション経験を持つ歌手のセリーヌ・ディオンとレア・サロンガもそれぞれ、「あなたの才能、パフォーマンスへの情熱はとても美しいものでした」「あなたの甘美なバリトンと一緒にパフォーマンスできるときは、いつだって胸が躍っていました」と故人をたたえています。

 SNSでは、死去から1カ月以上がたった現在もSNSではカルロスとの思い出やファンアートがハッシュタグ「#CarlosMarinForever」付きで投稿され続けています。「日本公演では震災後に来て、『花は咲く』『ふるさと』を歌って、いっしょに泣いてくれた」「彼ののびやかでパワフルなバリトンをずっと忘れません」「沢山のかけがえのないものを私の心の中に残してくれてありがとう」といったメッセージが天のカルロスへ向け寄せられています。

 今回、ねとらぼエンタではカルロス・マリンの追悼企画として、生前をよく知るレーベルスタッフや通訳担当者に寄稿を依頼。またカルロス自身の働きかけで実現し、生前最後の来日となった2018年の来日公演で日本語で歌唱する「故郷」を披露した際の映像をオンラインで初公開します。

「こういうセクシーさはtoo muchかな?」 音楽とファンを愛した色男

 当時ニューヨークに駐在し、主に海外でのレコーディングのコーディネートやアテンドを担当していた柴田さんはカルロスについて、「音楽と真摯(しんし)に向き合い自らの仕事へ真剣に取り組む熱い一面を持ちながら、普段はユーモアたっぷりでチャーミングな人物だった」とコメント。

 “特に女性には優しい方”だったとし、「ロマンチックな表現で女性の美しさを褒めたたえるところが、スペイン人だしカルロスらしいな〜といつも笑って見守っていました」と回想。本質としては気遣いの達人でファン思い、「まわりを見ながらチーム内に笑いを生む、まさにムードーメーカー」だったと撮影時の出来事を振り返っています。

 「日本での撮影時に、いつもシャツの第3ボタンくらいまで開いているカルロスの胸元から、ちょっとだけセクシーすぎる胸毛が……。『少しシャツしめた方がいいかもね』と言ってわれわれスタッフがシャツを直したとき、『こういうセクシーさはtoo muchかな?』とニヤリと笑って朗らかに応じてくれたことを覚えています」(柴田さん)

チャーミングだったカルロス 太陽のような人だったカルロス(写真:土居 政則 写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

 国内レーベルで現在イル・ディーヴォのマーケティングを担当する小山さんは、故人を“太陽のように明るい人”と評しています。普段は冗談ばかり口にして周囲をリラックスさせるキャラクターでありながら、「気を引き締めるときはきちんと引き締めてさりげなくリーダーシップを発揮していましたね」とテレビ番組の早朝収録時のエピソードを披露してくれました。

 移動時間確保のため、ホテルの朝食時間前に出発しないとならないスケジュールに、アーティストを気遣って奔走するスタッフの心情を先回りして察したカルロス。率先して「僕はコーヒーとサンドで十分だよ」と状況をまとめてくれたと感謝し、スタッフの立場にも理解がある人物だったと小山さんは語ります。

 2021年に交わした会話では「自分は根っからのラテン人だしエンターテイナー。パンデミックだからってふさぎ込んでいても何も始まらないので、ポジティブに考えるようにしている」と、いつも前向きな理由を教えてくれたそうで、コロナ禍でも変わらず周囲を明るくしていました。

「日本のために何ができるか、遠慮なく言ってくれ。いつでも力になる」 口癖が実現した「故郷」

「イル・ディーヴォ」 震災間もなく来日してくれたイル・ディーヴォ(写真提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

 日本を愛し、日本のファンからも愛されていたイル・ディーヴォ。レーベルサイドでは、「日本では全米や全英1位のアーティストよりも、イル・ディーヴォの方がヒットしているし、知られている」とマーケティングの成功例として挙げるほど。カルロス自身も日本から寄せられる熱狂的な愛情を認知していて、「日本のために何ができるか遠慮なく言ってくれ。いつでも力になるよ」というのが口癖だったと上述の小山さんは話しています。

 その言葉通り、2011年に東日本大震災が起き来日をキャンセルするアーティストが多かった中、イル・ディーヴォは予定通り同年6月に来日。“音楽の外交官”として観光庁長官を公式表敬訪問し、「美しく素晴らしいこの日本をみんなで訪れよう」と世界へ向けたメッセージを発信しました。

 また翌2012年3月にはジャパンツアーを敢行。「日本のファンを勇気付けたい」という動機で“日本の歌を日本語で歌いたい”という連絡があり、日本のスタッフの推薦を受けて「故郷」を披露するに至ったといいます。当時グループはアジアツアーで各地をまわる多忙なスケジュールの真っただ中。公演を打つ合間を縫って練習を重ね、初日の名古屋公演でお披露目となりました。

カルロスにとって最後の来日となった2018年の来日公演で披露した「故郷」

 「本当に会場全体が感動の涙でいっぱいになり、僕も思わずもらい泣きしてしまいました。これほど日本のことを思ってくれるアーティストもいないのではないでしょうか。また、その次のアルバム(※『グレイテスト・ヒッツ』)の日本盤ボーナストラックとして『故郷』を収録してくれることになり、日本語の発音指導として来てほしいというリクエストがあってメキシコまで飛んで日本語の発音指導とチェックをしたのも良い思い出ですね」

 「本当にいつも明るい人でした。天国でも女性たちに囲まれて楽しく過ごしていると思います。ありがとう、カルロス。いつまでもその美声忘れないよ」(小山さん)

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