「女性はロボットとかかっこいい物を好きになるわけがない」 偏見を受けても好きなものを追い続ける女性ペインターの姿に心動かされる(1/2 ページ)
力強いメッセージに背中を押されます。
「『好き』は自分が選ぶこと」。ある女性が“ガンプラ”などのプラモデルの写真とともに投稿したツイートに、大きな反響がありました。
投稿したのはせなすけ(@l2Po3QMEtZd19wr)さん。プラモデルを着彩するプロの「筆塗りペインター」で、アニメのセル画に見えるよう手塗りでペイントするなど個性的なタッチで知られています。
YouTubeチャンネルでは、ガンダムの他、さまざまなプラモデルのペイントの様子を記録した動画も公開。陰影のつけ方で、立体なのにまるでイラストのように見えるペイントや、今にも動き出しそうなプラモデルを紹介しています。
「女性はロボットとかかっこいい物を好きになるわけがないので、プラモ作らないで下さい」と言われたことがある。
私のように子供の時から恐竜や飛行機とかかっこいいものばかり好きで親から「もっと女の子らしくしなさい!」と言われてきた女性は多いはず。
「好き」は自分が選ぶこと(せなすけさんのツイートより)
プロペインターとしての仕事のほか、せなすけさんと同じように「女性らしくない」「女性の領域ではない」とされがちな「かっこいいものばかりが好き」な女性へのメッセージを聞いてみました。
大人になってからハマったプラモデル
せなすけさんがプラモデルに興味を持ったのは、大人になってからのこと。イギリスのゲーム関連会社「Games Workshop(ゲームズワークショップ)」が発刊した冊子で、ミニチュアプラモデルを見たのがはじまりだったそうです。
「初めて見たときに『なんか面白そう!』と思いネットで調べてみたら、自分で組立てて色を塗るものだということを知ってますます興味が湧き、売っているお店を調べて買ってきたのがきっかけでした」(せなすけさん)
最初は小さなプラモデルから、どんどん大きなものに挑戦していくうちに、どんどんプラモデルの世界にハマっていったというせなすけさん。手掛けた作品も多岐にわたっていきます。
「模型雑誌の仕事として手掛けたガンダムの『RG 1/144 サザビー』がとても気に入っています。もともとは生物系のプラモデルを塗ることが多かったので、制作当時はメカニックなモデルを仕上げることにまだ難しさを感じていたのですが、思うように仕上げることができてとても嬉しかったです」(せなすけさん)
自分が選んだ「好き」を貫く
「本当にカッコいい!」とプラモデル作りやペイントにハマり、作品の写真や動画をSNSに投稿していたせなすけさん。ですが、性別を理由に、コメントやDMなどで全く面識のない人から心ない言葉をぶつけられてしまうこともあったといいます。
「コメントやDMなどで全く面識のない方から『かっこいいと言ってるのが嘘くさい』『誰かからの“いいね”を稼ぐためにガンプラ好きって言わされてるんでしょ』『ロボットのかっこよさが女性に理解できるはずがない。今すぐプラモデルを作るのやめてください』などと言われてしまい、とてもショックでした」(せなすけさん)
確かにプラモデル作りが趣味だという人には男性が多く、「女性がやるものではない」という固定観念を持つ人も少なくないのでしょう。それは、せなすけさんの家族も同じだったといいます。
「女性であることを理由に周りから『やめろ』と言われてしまうことはもちろん辛かったですが、以前は家族が理解してくれなかった部分でも苦労しましたね。親は私に女の子らしいことをしてほしいと考えていたので、プラモデルは男の子がやることでしょ? という感じで嫌がられていました」(せなすけさん)
せなすけさんがプラモデル作りやペイントに熱中していることが受け入れがたかった家族でしたが、模型雑誌の仕事で作った作品などを見るうちにだんだんと理解を示し、今は活動を応援してくれるようになったそうです。
「『かっこいいものが好き』というと同性から理解されないのは辛いこともありますが、自信を持って『好き』を貫いてください。世界は広いので、自分と同じ考え・趣向を持つ人、理解してくれたり応援してくれたりする人は必ずいます。自分の『好き』をたくさん楽しみましょう!」(せなすけさん)
自分の「好き」への思いがたくさん詰まったせなすけさんの投稿には、「『好きは自分が選ぶこと』素晴らしい言葉ですね」「自分が良いと思ったものは素直にYESでいたいよね!」など、共感の声が多数寄せられていました。中には、「心から共感するし、私もプラモやフィギュアが好き」という女性からのコメントも。
また、せなすけさんの作品に、「文面見てホントホントって思い写真見たら凄すぎた」「有機的な塗りすごい」と圧倒される人や、イラストではなくプラモデルだと知って驚く人も見られました。
性別や、それからくる偏見によって、自分の好きなことや興味のあること、そして得意なことを制限されるのはとても悲しいこと。まだまだ「好きなものは好き」と言い切ることに勇気がいる社会ですが、せなすけさんの言葉や作品に背中を押された人もいるのではないでしょうか。
せなすけさんはペインター、YouTuberの他、模型誌のライターや書籍執筆など幅広く活躍しています。
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