30%がメタバースでの“お砂糖”経験あり―― 既に身近になりつつある「メタバース恋愛」の驚くべき実態とは【バーチャル美少女ねむ寄稿】(1/4 ページ)
“お砂糖”“お塩”って知ってる?
バーチャル空間とアバターがあれば、人は「バーチャルセックス」ができるのか――。以前、VRを活用したバーチャルセックス体験について寄稿いただいた(関連記事)、VTuberの「バーチャル美少女ねむ」さんが、3月19日に初の単著『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』(技術評論社)を上梓します。
同書では、2017年からVTuberとして活動しているねむさん自ら、主にソーシャルVR(VRChatなど)に焦点を当てつつ、今話題の「メタバース」について解説。そもそもメタバースとは何なのか、メタバースは私たちにどんな世界や革新をもたらすのか。「メタバース恋愛」や「アイデンティティのコスプレ」「メタバース経済」など、さまざまな観点・キーワードからメタバースで今まさに起こっていることを読み解いていきます。
この記事では同書の出版を記念し、特別に第5章「コミュニケーションのコスプレ」より、「メタバース恋愛」の項目を出張掲載します。過去にねとらぼで掲載した「バーチャルセックス体験」コラムの前段に当たるともいえる内容で、「メタバースで人は恋に落ちるのか」「その際、相手の性別は気にするか」「メタバース上で“お砂糖(恋愛パートナー)”がいる人の割合はどれくらいか」など、現実世界とはやや異なる、メタバース上での恋愛活動についてまとめたもの。まだ見ぬメタバース世界の一端を、ぜひ垣間見てみてください(バーチャルセックスの記事を読んでいない人はぜひ併せてどうぞ)。
著者:バーチャル美少女ねむ(VTuber)
「バーチャルでなりたい自分になる」をテーマに2017年から活動している自称・世界最古の個人系VTuber。個人がVTuberを始める方法を公開し、その後のVTuberブームに貢献。2020年にはNHK人気番組「ねほりんぱほりん」に出演しお茶の間に「バ美肉(バーチャル美少女受肉)」の衝撃を届けた。ボイスチェンジャーの利用を公言しているにもかかわらず楽曲『ココロコスプレ』で歌手デビュー。自筆小説『仮想美少女シンギュラリティ』はAmazon売れ筋ランキング「小説・文芸」部門1位を達成。フランス日刊紙「リベラシオン」・朝日新聞・日本経済新聞などで、VR文化に関する掲載歴多数。
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/nemchan_nel
Twitter:https://twitter.com/nemchan_nel
メタバースでも「恋」は芽生える
以下は書籍『メタバース進化論――仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』の第5章「コミュニケーションのコスプレ」より、「メタバース恋愛」の項目を抜粋したものです。
第三に、メタバースにおける「恋愛」について見ていきましょう。恋愛が特定の相手への特別な感情や関係のことである点は、物理現実のものと違いはありません。これまで見てきたように、空間性とアバターがもたらす効果により、メタバースでは相手との距離感は近づきやすくなり、スキンシップも起こりやすくなります。メタバースでは場合によっては物理現実以上の親密なコミュニケーションが起こっています。人間である以上、そこで恋が生まれるのは至極当然のことでしょう。ただし、その性質は物理現実における恋愛と大きく異なっている部分も多く見受けられます。
メタバースで、私達はどのような恋をするのでしょうか。
メタバースで恋に落ちたのは40%
「ソーシャルVRで恋をしたことはありますか?」と聞いたところ、VRChatの場合、40%がYESでした。この数字は高いと思いますか? 低いと思いますか? その感じ方は、おそらく、メタバースでの体験をゲームだと思っているか、新しい現実そのものだと思っているかで大きく変わってくると思います。
ソーシャルVRで人生を送っている原住民たちの何人かに意見を聞いた限りでは、この数字はある程度実感に合う数字であると言えそうです。
「恋に落ちた」割合を条件別でみると、サービス別の違いがはっきりとしており、VRChatの40%が一番高く、clusterの21%が一番低い結果となりました。2章でみたように、VRChatはコミュニケーション自体を主目的としているユーザーが多いことがこの結果に現れていると思います。clusterは好きなVTuberに会いに行くなどのイベント用途が多く、イベントの場合、来場者同士は自由な会話を許されていないことなども理由としては考えられます。物理男女別では女性が42%と男性の38%をやや上回る結果となりました。
また、こちらも意外だったのがやはり地域別の結果なのですが、なんとヨーロッパの場合51%と半数を超えていることがわかりました。距離感やスキンシップでは他の二地域ほどではなかったヨーロッパですが、だからといって心理的距離が離れているというわけではないようです。やはりメタバースにおいてもコミュニケーションの仕方には大きく地域差がでると言えそうです。次点は北米の47%でした。日本は38%と、距離感は一番近かったにも関わらず、海外に比べると恋に関してはやや慎重なようです。
「恋に落ちた」割合とユーザーの累計プレイ時間との相関関係を分析したところ、プレイ時間が長くなるほどに恋をした人の割合がどんどん増えていき、1000時間で58%と過半数を超え、5,000時間だと76%に達しました。はっきりと時間との間に「相関あり」と認められました(相関係数 r=0.43)。
つまりメタバースで過ごす時間が長くなるにつれて、恋に落ちる人が増えていくということです。やはりメタバースを「人類が人生を過ごす新たな仮想空間」と捉えると、そこで過ごすうちにいつか恋に落ちるのは人間としては当然のことであると言えるのかもしれません。
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