30%がメタバースでの“お砂糖”経験あり―― 既に身近になりつつある「メタバース恋愛」の驚くべき実態とは【バーチャル美少女ねむ寄稿】(4/4 ページ)

» 2022年03月18日 21時00分 公開
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メタバースでの恋人は物理世界では恋人ではない 68%

 ここまで読んできて「メタバースにおける恋人との関係は、物理現実においてはどうなるんだろう?」と気になったのではないでしょうか。

 前章では、物理現実と違う性別のアバターを使う理由について「単にアバターの外見が好みであるため」「より自分を表現しやすい、またはコミュニケーションしやすいから」が多く、「心身の性別の不一致」を挙げている方もいるにはいるが少数はである、という話をしました。また、本節では「ソーシャルVRの恋愛に物理性別は重要でない」という方が非常に多いという話をしました。

 つまり、「特に心身の性別の不一致を抱えているわけではないが、メタバースでは相手の物理性別を気にせず恋愛をしたりパートナー関係になったりしている」方が数多くいるということになります。これは男女間のカップルが割合として多いこれまでの物理現実の常識からすると、極めて奇異なことに写るのではないでしょうか。この関係を物理現実に持ち込むと破綻してしまいそうにも思えます。

 そこで、「恋愛パートナーがいる場合、その相手は物理現実世界でもあなたにとって恋人ですか?」という質問をしたところ、VRChatの場合、Noが68%でした。つまり、7割の方にとって「メタバースの恋愛は物理現実の人間関係とは一線を画した関係である」ということになります。

 実際にどう物理現実と折り合いをつけているのか、日本の「お砂糖カップル」のみなさんにインタビューしたところ、以下の全てのパターンの方がいらっしゃいました。

  • 1:物理現実ではお砂糖相手には会いたくない(お砂糖関係が破綻してしまうため)
  • 2:物理現実で(オフ会などで)お砂糖相手に会うこともあるが、恋人関係でなく、ただの仲のよい友達同士の関係である(メタバースはメタバース、物理現実は物理現実と割り切れる)
  • 3:物理現実でもお砂糖相手と恋人関係である

 ただし、恋愛感情の絡む話ですので、必ずしも事情は単純ではありません。

 例えば、元々物理現実では異性愛者と自認していた物理男性二人がメタバースで出会って誕生した仲睦まじいお砂糖カップルのケースがありました。元々二人は物理現実では遠く離れた場所に住んでいて、実際に会うことになるなどとは思っていなかったのですが、たまたま片方が仕事の出張でもう一人の近くまでやってきて、せっかくだから会ってみようということになりました。二人は、物理現実ではあくまで友人同士(つまり上記?のパターン)のつもりで会ったのですが、やはり会ってみると話しぶりや性格からメタバースでの恋人の面影が浮かび(同一人物なので当然ですが)感情を抑えきれなくなってしまい、結局物理現実でも恋人同士になってしまったという事例が実際にありました。つまり、メタバースでの影響を受けて、物理現実でも性別を超えた関係が生まれたということです。

 さらに、お砂糖相手との物理現実での関係について条件別でみたところ、どのサービス・地域でも「物理現実では恋人でない」が過半数を超えたのですが、唯一の例外として、物理女性では「物理現実では恋人でない」がわずか40%でした。物理男性は実に72%にも達しているので、ここに関しては物理男女によって大きな違いが生まれていると言えます。

メタバース進化論 メタバース恋愛 物理現実でのVR恋人(VRChat)- ソーシャルVR国勢調査

 「VR恋愛において相手の物理性別は重要か?」では物理男女の差はなくほとんどが「重要でない」であったことと対象的です。つまり、「物理女性はメタバース恋愛において相手の物理性別を気にしないが、実際にお砂糖関係になった場合は恋人関係を物理現実にも持ち込む傾向がある(あるいは現実での恋人関係をメタバースにも持ち込む)」ということになります。このあたりは物理男女の間の「メタバースのことはメタバースのことと割り切れるか」考え方の違いが出ているのかもしれません。

 これまで見てきたようにメタバースでは、物理現実同様に数多くの人が恋に落ち、そして時にはパートナー関係が生まれています。ただしそれは、物理性別に必ずしもとらわれなかったり、物理世界の人間関係とは一線を画していたり、これまでの物理現実の常識では考えられない、新しい愛の形なのです。それは私たちそれぞれの心の有り様や、社会全体に大きな影響を与えていくでしょう。

(「バーチャルセックス」の項へ続く)

 

『メタバース進化論』目次

第1章 メタバースとは何か

  メタバース前史

  メタバースの定義:実現に必要な七要件

  メタバースは世界と世界を結びつける

  メタバースではないもの

  メタバースがもたらす三つの革命

第2章 ソーシャルVRの世界

  ソーシャルVR:既にある「必要最小限のメタバース」

  VRChat:ソーシャルVRの概念を確立した存在

  Neos VR:メタバースを体現するソーシャルVR

  cluster:メタバース時代のイベントホール

  バーチャルキャスト:仮想空間の超高性能撮影スタジオ

  比較からわかる四大ソーシャルVRの個性

  ソーシャルVRユーザーのプロファイル

  Horizon Worlds:Metaの新サービスは何をもたらすのか

第3章 メタバースを支える技術

  メタバースのために積み重ねられた人類の技術

  「バーチャルリアリティ」とは何か

  VRゴーグル:VR体験の核

  トラッキング技術:仮想空間で自在に動く

  アバター技術:仮想世界でなりたい自分になれる

第4章 アイデンティティのコスプレ

  魂にアイデンティティを「纏う」革命

  名前:言霊世界のアイデンティティ

  アバター:視覚世界のアイデンティティ

  声:音響世界のアイデンティティ

  魂の新しいかたち

第5章 コミュニケーションのコスプレ

  本当のコミュニケーションを「加速する」革命

  メタバースでの距離感

  メタバースでのスキンシップ

  メタバース恋愛

  バーチャルセックス

  社会の新しいかたち

第6章 経済のコスプレ

  メタバース経済前夜:十年以内に百兆円の経済規模?

  ミクロ・マクロ両面で経済を「拡張する」革命

  分人経済:多面性が生むクリエイターエコノミーの究極形

  超空間経済:経済が地球の空間の限界から解放される

  メタバースで生まれる職業

  経済の新しいかたち

第7章 身体からの解放

  生まれ持った肉体を「脱ぎ捨てる」

  ファントムセンス概論

  ファントムセンス実態調査

  触覚スーツ

  BMIによる「フルダイブVR」

  私たちの新しい身体


 

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