“推される側”のミュージシャン「絶対に僕らよりもファンの人が楽しい」 1万通以上のファンレターから作った美文字練習帳「バンギャワーク」はなぜ生まれたのか
20年以上のキャリアを持つミュージシャンが考える「推し活」の楽しさとは?
みなさんは、最近手紙を書きましたか? 「YES」と答えた人は、誰に宛てた手紙でしょうか。友人、家族、あるいは「推し」?
スーパーコスプレバンド・Psycho le Cemuのドラマーとして2002年にメジャーデビューし、ミュージシャンとして20年以上のキャリアを持つYURAサマ(@YURAsamaTakeshi)は、「“ファンレターを書くこと”は無くなる事のない推し活」と語ります。
Dacco、THE BEETHOVEN、Brotherと4つのバンドをかけもちながら、エアロビクストレーナーの資格を生かした「エアロビコンサート」を開催するなど、幅広い活動を行ってきたYURAサマ。2021年には、のべ1万通以上のファンレターをもらった経験を生かし、ファンレターでよく使用される単語をセレクトした美文字練習帳「バンギャワーク」のクラウドファンディングを実施。目標金額の5倍の支援を集めプロジェクトを成功させました。
「バンギャワーク」は、例文の「あるある」感がバンギャ(※バンドギャルの略・主にヴィジュアル系ファンのことを指す)をはじめ、推し活をする人の間やTwitterで話題に。SNS全盛の時代、遠くの友人でもLINEやメールで済ませてしまうことも多い中、「推される側」を長い間経験してきたYURAサマは、なぜ今ファンレターに注目したのでしょうか?
――まずは、ファンレターのための美文字練習帳「バンギャワーク」を作ろうと思った理由を聞かせてください。
きっかけは、僕も年齢を重ねて「字を綺麗に書きたいな」と思うようになったことです。そんなとき、僕の主催するオンラインサロンのメンバーの中に字を教えることのできる人がいるということを知り、「皆で字を練習したい」という話になりました。そこから「もっと色んな人に届けよう」「ノートはどうか?」と話が広がっていったのですが、特に「ファンレターを書くときの字をきれいにしたい」という気持ちはサロンメンバーの多くが抱えていたようです。
――確かに、私自身もオタクなのですが、たまにファンレターを書く際、字に自信がないため何度も書き直したりしています。
僕自身も、そんな何度も書き直した形跡のあるファンレターをもらった経験があります。そこで「ファンレター」に特化した練習帳を作ることができたらおもしろいんじゃないかと、サロン内のメンバーと協力して作ったのが「バンギャワーク」です。僕のオンラインサロンなので、当然ながら僕のファン、僕を推してくれる人が多いわけですけど……なんていうんですかね、一番手軽にできる「推し活」って、ファンレターを書くことなんじゃないかなあって勝手に思っていて。
――手紙を書いている時間だけでなく、便箋選びの段階で相手(推し)のことを考えているわけですからね。
そういう気持ちは、もらう側としてもすごく伝わってきます。もう新年の挨拶だって年賀状じゃなくてLINEで終わらせる時代ですからね。形に残るものですし、手紙はもらうとうれしいです。
――「バンギャワーク」はクラウドファンディングも成功、現在は一般発売もされています。どんな反響が届いているのでしょうか?
思った以上に様々な方に刺さっているようで、「楽しい」という意見が多いですね。字の練習ができるというのはもちろんですが、読み物としても楽しめるようになっているんです。
――「ファンレターでよく使われる単語」の下に小さくYURAサマからのコメントが掲載されていますね。「ライブには行けませんが応援しています」に対して「有り難いです、また来てください」という素直なものから、「これはお布施ですので」に対して「なんか仰々しいですね笑」というユーモアのあるツッコミまで、読んでいて楽しいです。
「受け取る側の気持ち」って、なかなか知ることがないと思うので、そこも楽しんでほしいです。
――例文は「大切なお知らせは心臓に悪いです」など、なにかのファンをやっている人、推し活をしている人にとっては心当たりのある言葉ばかりです。こちらはどうやって選んだのでしょう?
僕がもらった手紙から印象に残っている言葉を抜き出して、サロンメンバー内でチョイスしてって感じですね。実際にもらったことのあるものばかりで、リアルだと思います。
――例えば、「配信に飽きてきました」も現代的でリアルな悩みですね。
これもよく言われます。「どうしたもんかなあ」って皆で思っています。
――他にも、「決してクレームではありません」も……。
100%クレームなんですよ(笑)。
――これはすごく難しいファン心理で、多少こじらせているかもしれませんが。本当に相手のことを考えているからこそ「クレームではない」と思っている可能性はあります。「物販のデザインがダサいです」も、否定ではなく「もっと応援したい」という気持ちなんですよ。
それは「愛ゆえに……」なんですよね。それもわかるんですよ。実際によく来る内容からワードを抽出しています。なので、今回の「バンギャワーク」が好評なら、同じく「あるある」を詰め込んだ第2弾も作ってみたいですね。
――クラウドファンディングのページには、「ファンの人を見て楽しそうだと思った」とコメントされていました。具体的にはどんなところでそう感じたのでしょうか?
これは、自分が年齢を重ねてからなんです。おそらく、ファンの方も同じように年齢を重ねていく中で、迷いが出てくる時期があると思うんです。「いつまでこういうことをやっていいんだろう?」って。
――ライフステージの変化などで、推し活のスタイルを変えざるを得ないことはありますからね。
もちろん、僕じゃなくて他に楽しいことが見つかってそれに向かって生きているならいいんですけど、バンドをおっかけていることに対して、ちょっと負い目に感じるのは違うなと思っていて。
――世間というか周囲というか、漠然とした引け目や負い目は少なからずあるかもしれませんね。
でも、ある程度年齢を重ねてからのほうが、より楽しそうに見えたんです。お金の面でも多少は余裕ができたころのおっかけを見て、「こんな楽しい事ある?」って思った(笑)。地方のライブに行くときの移動は新幹線だし、好きなお酒を飲みながら移動して、着いたら友達とお茶したり楽しんで、手紙書いて、好きなバンドのライブを観て、また友達とご飯食べて、一泊した翌日は観光なんかも……。そういうファンの姿を見たときに、僕は生まれ変わったらこれをやりたいと思ったんです。絶対に僕らよりもファンの人が楽しいんですよ(笑)。
ーーそれはYURAサマは「お仕事」で、ファンの方は「推し事」なので……(笑)。ファンの方は普段はお仕事で頑張っているはずです。
そうですね(笑)。まぁそんなこんなもあって、もっと推し活を楽しんでもらえたらいいなと思っています。
ーーそれこそ、若い頃は「いつまでそんなものに夢中になってるの!」と親や周囲から言われたことがある人も多いと思うんです。ただ、その経験が仕事やその後の人生に活きることもあるじゃないですか。例えば、おっかけの経験で全国の地理に詳しいとか。
皆さん、どのルートでどのチケットをとってどう行けば最安なのかとか、すごく詳しいですよね。一度僕たちのツアーの移動行程をファンの人に組んでもらいたいですよ(笑)。冗談はさておき、好きなことをやっている時間って絶対に無駄じゃないと思います。そもそも、「好きなこと」がある時点で人生勝ち組ですよ。
ーー今後「バンギャワーク」以外で考えている企画はありますか?
さっき話したような、新幹線移動やファンクラブ旅行などで、ファン同士が一緒に過ごす時間ってあるじゃないですか。2、3人で過ごす時間をどう楽しむか。そういうときのために、チェキ風のカードを使ったカードゲームを作ってみたいとサロンメンバーと話しています。いたんですよ、カードゲームを作れる人がサロン内に!
ーーいろんな技術を持ったファンの方がYURAサマのサロンに集まっているというのも、いい話ですね。
皆さん、アイディアをたくさん持っているから助かりますね。
ーーなるほど、楽しみにしています。ちなみに、YURAサマ自身は「推している人」はいるのでしょうか?
いいや、これがいないんですよ。僕は僕を推しているので(笑)。
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