「しずる」村上、“青春コント”誕生の瞬間に手応え 18年の芸人人生で欠かせなかった笑いの原体験と相方・KAZMAを振り返る(1/3 ページ)
青春コントといえばしずる。
2000年代のお笑いブームを支えたコンビ「しずる」――――「爆笑レッドカーペット」「爆笑レッドシアター」「エンタの神様」などで実力を発揮してから、現在に至るまで毎年単独ライブを行っている他、「キングオブコント」にも開始当初から出場し続けるなど、“コント師”として前線を駆け抜け続けています。
そんな「しずる」の村上純さんが、芸人人生を振り返り相方・KAZMAさん(旧芸名:池田一真/Zはストローク付き表記)への「恋文みたいになった」と語ったエッセイ『裸々(らら)』(ドワンゴ/1870円)を、3月25日に発売しました。
新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るった2019年。『裸々』は、コロナ禍の影響で芸人としての仕事が月に4つしかなくなった村上さんがメディア「note」につづった内容をまとめ、加筆を重ねたもので、2000年代お笑いブーム前線で活躍した若手芸人の重圧や、相方との確執、「しずる」の変遷などが赤裸々に書かれたある種のドキュメンタリーに仕上がっています。
かつて青春コントで大ブレイクし、2022年で芸歴19年目を迎える「しずる」。インタビューで村上さんは、初めて青春コントを披露したときを振り返り「風を感じるくらいの衝撃だった」とこれまでのネタとは明らかに違う周囲の反応を伝えてくれました。そんな若手芸人当時や、「アメトーーク!」で“存命の芸人の中で一番話題になる芸人”として反響を呼んだKAZMAさんの愛すべき生態にいたるまで話を聞きました。
しずる村上“悲しさの中にある笑い”の原体験
――エッセイ本では、村上さんに影響を与えたコンビとして「とんねるず」「ダウンタウン」「カリカ」「ピース」の名前が挙がりました。もう少し具体的に原体験についてお話を伺いたいのですが、お笑いに興味を持ち始めたそもそものきっかけはなんだったのでしょうか?
本では触れていませんが、そもそもをさかのぼると8個上の兄貴の存在かもしれません。兄貴がとんねるずさんMCの番組をむさぼるように見ていた影響で、「とんねるずのみなさんのおかげです。」を見るようになって、ノリ男のコント(※1)をきっかけにコントが面白いと思うようになりました。
※1 ノリ男:「とんねるずのみなさんのおかげです。」内のコント「青春の1ページ」で、木梨憲武さん扮(ふん)する男子学生
――お兄さんと仲はいいんですか?
仲良くはありますが、当時、兄貴の目立ち方にムカついてたんですよ。兄貴の方が明るいやつで、親戚の集まりがあるとみんなを笑わせていたんです。でも僕は、「そんなに大したことは言ってないだろ」「僕が兄貴の年齢になったら、絶対僕の方がおもしろい」と子どもながらに思っていました。でも、原体験でいうと、やっぱり兄貴のまねから入ってるんですよね。
――幼少期から漫才ではなくコントに興味を持たれていたんですね。
ノリ男や仮面ノリダー(※2)、トカゲのおっさん(※3)、ミラクルエース(※4)とか、くだらなくて笑えるけど一つの物語としても面白いコントがすごく好きでした。あとどこか悲しい話が好きでした。僕が吉本に入ったきっかけのカリカさんも、悲しい話が多いんです。
※2 仮面ノリダー:「とんねるずのみなさんのおかげです。」内のコントで、仮面ノリダー(木梨さん)と石橋貴明さん扮する怪人たちとの闘いを描いたもの
※3 トカゲのおっさん:「ダウンタウンのごっつええ感じ」(1991〜1997年)内のコントで、トカゲの胴体をしたおっさん(松本人志さん)が人間社会との共存の難しさと向き合っていく姿を描いたもの
※4 ミラクルエース:「ダウンタウンのごっつええ感じ」のコントで、いじめられっこのマサオ(浜田雅功さん)とさえない見た目の正義の味方ミラクルエース(松本さん)のやりとりを描いたもの
――しずるのコントに漂う哀愁はそうした体験が関係しているのでしょうか?
そうですね。あとは、僕が母子家庭だということも関係しているかもしれません。コントを作りはじめた当初は母子家庭のコントもあって、悲しい話だけど、その悲しさの中にあるおかしさを求めていました。
だから、当初は暗いネタが多かったんです。『嫁がしゅうとめを殺そうとするコント』とか、『ATMの画面に現れる受付嬢らしきイラストの女性が振り向いたら背中に大アザがあってめちゃくちゃDVされてるコント』『義理の父親を追い詰めるために英語の勉強を手伝ってもらうフリして父親をなじった英文出すコント』とかを作っていたんですけど、めちゃくちゃスベりました。ただただ悲しいだけだから(笑)。一時期は暗ければ暗いほど面白いと思っていたんです。
――笑っていいのか困りそうです……。しずるはお互いがネタを書かれますね。村上さんのコントはどんなときに誕生しますか?
日常の中で違和感を覚えたことから生まれることが多いです。普段からスマホのメモ帳に自分が面白いと思ったことや違和感を覚えた物、状況、会話とかをメモしていて、そこから広げたり、メモの中にあるいくつかを掛け合わせたりしてネタを作っていきます。
例えば、しずるの“青春コント”で最初に作った「視力検査」は、いろんな検査がある中で視力検査が一番変な検査だと思ったんです。視力測るために、遮眼子(しゃがんし)という専門道具まであるんですよ? この引っ掛かりから、視力検査と熱い青春ドラマという、みんなが接してきたものを掛け合わせてみたらどうなるんだろう、と思って出来たのが「視力検査」というコントです。
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