御年77歳、老舗旅館の大女将によるロックな琴パフォーマンスに「カッコいい」と絶賛の声 旅館名物“女将劇場”はいかにして生まれたのか(1/2 ページ)

琴をバチでたたくなど破天荒。だが、めちゃくちゃカッコイイ。

» 2022年05月01日 18時30分 公開
[高橋ホイコねとらぼ]

 創業86年という歴史を持つ、山口県にある老舗旅館「西の雅 常盤」。ここの大女将・宮川高美さん(77)が繰り広げる「琴にマイクとギターアンプをつなげたパフォーマンス」が、ロックでカッコイイと話題になっています。

 宮川さんはこれ以外にも合計170以上もの芸を持ち、毎晩無償で行われているという「女将劇場」は今や同旅館の名物になっているのだとか(※)。一体どのようにして始まったパフォーマンスなのか、話を聞いてみました。

※現在は宿泊または食事の利用がある人に限り観覧可能です(詳細は公式サイトを参照

「西の雅常盤」女将の琴パフォーマンス 超パワフル!(櫛野展正@クシノテラスさんの投稿動画より)

 話題になっているツイートは、アウトサイダーキュレーターの櫛野展正さん(@kushinon)が投稿したもの。「20歳で女将となるが、旅館の経営が悪化。旅館再生のため、琴にマイクとギターアンプを直結した独自の演奏や踊りに水芸など、80種類を超える演目を誇る『女将劇場』を毎夜宴会場で無償で開催し続けている」と宮川さんを紹介しました(※)。

 投稿に添付された動画では、宮川さんのパワフルな琴演奏が見られます。大音量の太鼓に合わせてバチでたたく荒々しいパフォーマンスに、正確なリズムと和調のアルペジオが交錯する超絶技巧な速弾きが続きます。生で見たらもっと楽しそう。

「西の雅常盤」のサイトのキャプチャ 毎日開催されている「女将劇場」(「西の雅常盤」公式サイトより)

 投稿には大女将のカッコよさを称賛する声の他、「どこからどうやってこの音に辿り着いたんだろう」といった疑問が寄せられています。女将劇場を始めた経緯や芸への思いなどを宮川さんに聞いてみました。

―― 「女将劇場」をはじめるまでの経緯を教えてください。

宮川さん:私は3代目にあたります。両親には、旅館はいつ倒れるか分からないという危機感があったのでしょう。4歳のころから琴と踊りを教わりました。勉強よりも大好きで、中学生になると琴で作曲したり、踊りの振り付けを考えたりするようになりました。

 短大を卒業し20歳で女将になった後、「このままでは常盤は、またダメになる。何かお客さまにアピールすることを始めねば」と思い、仲居さん、管理のおじさん、売店のおばさん、親せきのおばさんと、私の5人で、踊りや琴を披露したところ、お客さまにとても喜んでいただけました。このショーが「女将劇場」として発展しました。

―― 動画で話題になっていた、「琴にマイクとギターアンプをつなげたパフォーマンス」はどういう発想から……?

宮川さん:普通は琴と太鼓で合奏することはないのですが、合奏してみたくなってしまったんです。太鼓は大きな音がしますので、琴との相性はよくありません。それならいっそのことアンプをつなげて“合奏”というより“対決”にしてみようと思いました。ついでにバチで琴を弾けばもっと面白くなるのではと思いつき、最後には、バチで琴のコマ(※音の高さを調節するための柱)をなぎたおすというパフォーマンスを考えました。

 良くも悪くも反響が大きく、琴の先生やインターネットからお叱りの言葉をいただきましたが、今は人気の芸のひとつです。悪い反応であっても、反響があれば当たるという自信がつきました。

「西の雅常盤」女将の琴パフォーマンス ついにバチで琴を叩き始める宮川さん(櫛野展正@クシノテラスさんの投稿動画より)

―― 公式サイトには「女将70芸の特技」とありますが、こんなにたくさんの芸をどのようにして発想したのですか?

宮川さん:私の芸は、現在175に増えております。発想は机に向かっていても浮かびません。日常生活の中にたくさん存在しています。毎日、感動しながら物を見ているか、何となく見ているかで変わってきます。芸はお客さまとのピンポンゲームです。お客さまが何を望んでいるか感じ取るのも芸のうちだと思います。毎日訓練し、毎日一生懸命生きていけばおのずと湧いてきます。

 また、時代を考え、時代を芸に反映させることも大事だと思います。常に挑戦していれば芸はついてきます。子どもが喜ぶ芸を考えると若い人もお年寄りも幸せを感じてくれます。時代は移り変わります。いくらでもその中にヒントがあると思います。

―― 客や周囲の方からは、どんな反応がありますか?

宮川さん:元気が出た、前よりずっと迫力があると言われると、とてもうれしくなります。私の芸は挑戦とスピード、迫力が主です。それと一見ふざけたり、失敗したりしているように見えて、あえてそうしている芸です。これは大変むずかしいもので、本当は中途半端ではありません。自分が目指しているのは、完璧を通り越した芸です。まだまだ勉強が足りませんので頑張りたいと思います。

圧倒的パフォーマンス

高橋ホイコ

 

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