自分を変えるチャンスもあるー「神は見返りを求める」吉田恵輔×「空白ごっこ」セツコが明かす激動の時代の創作(1/3 ページ)

世代の異なる2人で違った見解も。

» 2022年06月23日 12時00分 公開
[斉藤賢弘ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 「ヒメアノ〜ル」(2016年)や「BLUE/ブルー」(2021年)などの作品で知られる、吉田恵輔(「吉」はつちよし)監督の最新作「神は見返りを求める」が6月24日に全国公開されます。

 万引き疑惑のかかった少女の死を発端とした前作「空白」(2021年)から一転、カラフルでポップな印象を与える同作はYouTubeを舞台にした男女の悲喜劇。底辺YouTuber・ゆりちゃん(岸井ゆきのさん)の動画制作をひょんなことで手伝うことになった、イベント会社の中年社員・田母神(ムロツヨシさん)がある“出来事”をきっかけに豹変していく姿をカラフルかつ緊張感あふれる映像で描いていきます。

 また、ボーカリストのセツコさんを中心に、ボカロPのkoyoriさん(電ポルP)、針原翼さん(はりーP)の3人からなる音楽プロジェクト「空白ごっこ」も同作に参加。書き下ろしの挿入歌「かみさま」と主題歌「サンクチュアリ」は、ともに激しさと切なさがただよう楽曲へと仕上がっており、着地点が見えない2人の物語をグッと盛り上げています。

 吉田監督とセツコさんの2人に、両者が幸福な出会いを果たすまでのいきさつ、作品テーマのひとつでもある“クリエイターが創作する上で立ちはだかる壁”などについてうかがいました。

吉田恵輔監督と「空白ごっこ」セツコさん 吉田恵輔監督と「空白ごっこ」セツコさん

初コラボで「身構えていた部分も正直ありました」

―― 吉田監督の過去作、「純喫茶磯辺」(2008年)ではクレイジーケンバンド、「BLUE」では竹原ピストルさんといった“渋め”のベテランアーティストの楽曲が使われていました。結成3年目の「空白ごっこ」を同作で起用したいきさつは?

吉田恵輔(以下、吉田) 「空白」という重く暗い作品を撮った反動で、次作では振り切りたくなったんですよ。iPhoneでの撮影を導入したり、キモカワな着ぐるみを登場させたり、今までやったことのない試みをいっぱいやりたいと思った中で、自作に使ってこなかったアップテンポな挿入歌も入れてみたくなって。「君の名は。」の「前前前世」ぐらいの勢いがある曲を(笑)。

吉田恵輔監督の「神は見返りを求める」 存在感が強すぎる着ぐるみ

 映画に合いそうなアーティストを紹介してもらったところ、「空白ごっこが多分イメージにピッタリなんじゃないか」ということで曲を聞いてみたところ、「めちゃくちゃ期待値高いぞ!」って。スケジュールがタイトだったのですが、いい出会いができたなって思っています。

―― 同作に寄せた「空白ごっこ」のコメントでは、「楽曲についてディスカッションし、とても身の引き締まる制作期間だった」とありました。監督側から最初にお話をいただいたときの思いをうかがえますか?

「空白ごっこ」針原翼(以下、針原) 要望された楽曲のイメージが「19」だったんです。スタイリッシュな映画の雰囲気からして、やっぱり「カッコいい曲」「エモさ全開でガツンといく曲」を求められるかと思ったんですけど「そっちか!」って。「空白ごっこ」にとってチャレンジの意味もあっただけに、「これは難しいかも」と思いました。

「空白ごっこ」セツコ(以下、セツコ) 監督の今までの作品を見返したときに、クセの強さや皮肉っぽさをかなり感じつつ、大人向けっぽい部分もあるなと。「ちゃんといろいろ人生経験を踏んだ人たち」が見ているイメージを持ったので、身構えていた部分も正直かなりありました。

―― 「身構えていた」というのは?

セツコ 結構な要望が来るのでは、と思っていました。それだけに、どういう作品なのか知ったときは、「結構新しい方向性でいくんだな……」って。そもそも、作品の雰囲気が過去作品と違ってポップでしたし。

 やりとり自体も「自由にやっちゃっていいよ!」という空気感があって、思っていたよりわりと自由だなと。

針原 この“自由”が難しいんだよね。

セツコ (笑)。難しいですけど、監督とのファーストコンタクトの際、「あ、こんな感じでいいんだ!」って肩の荷が下りた分、よけいな力を抜いて思うようにできた気がする。

完成品から“本物の愛に近い”何かを感じた

―― グループにとって、「かみさま」「サンクチュアリ」は実写映画へ初提供した楽曲となります。自分たちが今まで作ってきたものと比べて、やり方などで違った点はありましたか?

セツコ 私はゼロからイチにするのがわりと苦手で。あるテーマを与えられて深く考えてみたり、相手とディスカッションしたりする方が好きなんです。だから、自分で無の状態から曲や歌詞を書かないといけない場合と比べて、主人公たちの思いになりきっての制作は案外やりやすかったし、面白かったです!

―― なるほど。吉田監督は2曲をもらったときの印象を覚えていますか?

吉田 いただいた楽曲をシーンに落とし込んだとき、田母神とゆりちゃんとの間にある距離がものすごく美しく、そこに一瞬「本物の愛に近い何か」が発生しているって思えたんですよね。

 楽曲がアップテンポなのにセツコさんの声と歌詞が切ないから、ワクワクドキドキさせつつどこか甘酸っぱさも感じられて。「俺が作った映画だけど、なんかすごい良いものになった」「すげぇいいの来た!」っていう思いです(笑)。「なんかアガる……!」って大事じゃないですか?(笑)。

―― 確かに(笑)。吉田監督が絶賛していますが、話を聞いていていかがですか?

セツコ 完成した作品を見るまでは「どうなるんだろう?」という思いがかなりあったんです。というのも、映像だけだったら2人の間柄が純朴でキレイに見える一方で、どこかよそよそしいというか、微妙な距離も感じてしまっていて。

 でも、映像と楽曲が組み合わさったものを見たとき、「ここからいい関係性に転じる2人になるのかも」っていう期待感が生まれましたね。監督と同じ感想なのですごくうれしいです!

「神は見返りを求める」に楽曲提供した「空白ごっこ」のセツコ
       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2407/24/news014.jpg 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  2. /nl/articles/2407/25/news017.jpg 「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
  3. /nl/articles/2407/26/news151.jpg イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
  4. /nl/articles/2407/25/news012.jpg 夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
  5. /nl/articles/2407/25/news007.jpg 水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
  6. /nl/articles/2407/25/news138.jpg 「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
  7. /nl/articles/2407/25/news050.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
  8. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  9. /nl/articles/2407/26/news119.jpg 工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
  10. /nl/articles/2407/26/news008.jpg 外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
先週の総合アクセスTOP10
  1. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
  2. 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
  3. 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
  4. 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
  5. ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
  6. 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
  7. もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
  8. アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
  9. スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
  10. 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
  2. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  3. 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
  4. 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
  5. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  6. かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
  7. 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
  8. 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
  9. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」