シリーズ異例の「プリキュアと共に戦う男の子」登場 デリシャスパーティプリキュアで描かれる新しい“プリキュア男子像”:サラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)
プリキュアの「男の子」の描かれ方も時代に合わせて変わっていきます。
ついに「プリキュアと一緒に戦う男の子」が登場しました。
2022年「デリシャスパーティ・プリキュア(・はハートマーク。以下略)で登場した「ブラックペッパー」。彼はプリキュア19年の歴史においてある意味、画期的なキャラクターなのです。
kasumi プロフィール
プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。
ブラックペッパー登場
2022年6月2日放送「デリシャスパーティプリキュア」第14話「初恋ってどんな味?恋するキモチと拓海のこたえ」において、プリキュアと一緒に戦う男の子「ブラックペッパー」が登場しました。
初期のメインビジュアルで姿は明かされていたもののなかなか登場せずファンをヤキモキさせていたのですが、その正体は品田拓海くん。主人公・和実ゆい(キュアプレシャス)に思いを寄せる1つ年上の幼馴染の男の子でした(一応正体はまだ伏せていますがバレバレですし、公式サイトではすでに公開されています)
異世界クッキングダム関係者の父親から不思議な力を託され、その力で「ゆいちゃんの笑顔を守るため」にブラックペッパーを名乗り、プリキュアを助ける決意をしました。
※立場的にはセーラームーンにおけるタキシード仮面的な存在といった感じでしょうか(もっともタキシード仮面様はそれほどセーラームーンを助けていなかった印象もありますが)。
男の子が一緒に戦うのは異例
実は19年間のプリキュアシリーズにおいてレギュラーで「プリキュアと一緒に戦う男の子」は異例な存在なのです。
これまでのプリキュアでは基本的に女の子のみが戦い、男の子が戦いに参加することは、ほとんどありませんでした。
歴史を見てみると、これは初代「ふたりはプリキュア」のとき、プロデューサーの鷲尾天氏が「女の子の自立」を描くため、いわゆる男の子の助っ人キャラを出さない方針をとったことに始まります。
鷲尾 主人公がピンチになったらサポートしてくれる男性が出てくる、という女の子ものの常套の設定を排除したんです。ふたりならふたりだけで解決させようと。その点は新しいと思います。男の子向けのヒーローものって助けをよばないでしょう。それを女の子向けの作品に当てはめてみたんです。
引用:『ふたりはプリキュアビジュアルファンブックvol1』(講談社)
以降、プリキュアに登場する男の子は精神的支柱になることは多々あっても「力は弱く、戦いには参加しない」のが基本となっていたのです。
プリキュアにおける男の子の役割
これまでのプリキュアシリーズにおける男子キャラの主なジェンダーロールは「導く存在」か「助けられる存在」でした。
主に年上の男性キャラは「プリキュアを導く存在」として描かれ、精神的な支柱となるものの戦闘能力は低く描写され、戦いには基本的には参加しません。「ハートキャッチプリキュア!」(2010年)のコッペ様や「スマイルプリキュア!」(2012年)のポップ君など男の子が戦う例もあるにはあるのですが、その場合には「異世界の妖精」が男性体を模すことにより強い力を持っている、という理由付けが行われていました。
さらにプリキュアと同じ年頃の「同級生の男の子」はプリキュアに「助けられる存在」として描かれ、共に戦う力は与えられずよくプリキュアに助けられお姫様だっこされていました(「Yes!プリキュア5」のココとナッツは人間形態では「導く存在」、妖精形態では「守られる存在」とハイブリッドな男性キャラでした)。
また、プリキュアの長い歴史の中では「男の子」がプリキュアになったこともあります。
「HUGっと!プリキュア」(2018年)では初の男の子プリキュア「キュアアンフィニ」が登場し大きな話題となりました。ただ彼も一緒に戦ったわけではなく「なりたい自分になる」という目的の変身でした。
むしろ「ハピネスチャージプリキュア!」(2014年)の相楽誠司君が闇落ちしプリキュアと対峙(たいじ)したことや、「キラキラ☆プリキュアアラモード」(2017年)に登場した男の子リオくんが、プリキュアと同じ力で変身し共に戦ったことが、男の子がプリキュアと同じ目線で戦った少ない例といえるかもしれません。ただ、それらも1回限りのイレギュラーなものでした。
基本的には、プリキュアはずっと女の子のみの力で戦ってきたのです。
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