「カーマカマカマ♪」 構想から40年「蒲蒲線」が度々話題になるワケ:月刊乗り鉄話題(2022年6月版)(3/3 ページ)
「蒲蒲線」に期待すること 都心直通ならば「必ず座れる電車」を設定してほしい
蒲蒲線はいくつかの構想変更を経て「新空港線」と呼ぶ計画になりました。
確定案と言うべき現在のルートは、東急多摩川線の矢口渡〜蒲田間を地下化、延伸して大田区役所の地下を通り、区道の地下を経由して京急蒲田駅地下、そして京急電鉄空港線の大鳥居に至ります。ここからさらに京急電鉄空港線に乗り入れて、羽田空港まで直通したいところです。
しかし、東急多摩川線と京急線は軌間(線路の幅)が異なります。直通するには、青函トンネルや箱根登山鉄道の一部区間のような三線軌条にするか、または近畿日本鉄道が開発に着手した軌間可変電車(フリーゲージトレイン)が必要です。かつての連合軍路線が行った「複線の片側を使う」はもう無理です。あるいは、直通を諦めて大鳥居駅で「同一プラットホームでの対面乗り換え」となります。
いずれにしても京急電鉄の協力が必要です。京急電鉄も新空港線の勉強会に参加しています。しかし慎重な態度です。新空港線は京急電鉄空港線と並行するため、強力なライバル路線です。しかも、品川〜羽田空港間の乗客を奪われる恐れもあります。
そこで、矢口渡〜京急蒲田間を第1期区間、京急蒲田〜大鳥居間を第2期区間とし、第1期区間を先に建設し、第2期区間は「結論を先送り」する方針としました。
しかし、第1期線も課題は山積です。特に「東急多摩川線の改良」をどうするか。東急多摩川線は多摩川〜蒲田間の路線です。多摩川駅で東横線と目黒線へ線路がつながっています。直通して、乗り換えなしで渋谷や目黒から京急蒲田へ行けたら便利ですね。目黒線と多摩川線は、かつての「目蒲線」を分離した経緯があります。直通すれば「元の鞘に収まる」感じです。
2022年現在の東急多摩川線は3両編成で、輸送力を限界まで上げるため、混雑時間帯に最短3分間隔で走っています。目蒲線時代は4両編成の運行もありました。各駅のプラットホームは4両編成まで対応します。ただし鵜の木駅はプラットホームの両端に踏切があるために3両が限界、1両だけドアを開けない処置をしました。
一方、直通先の目黒線は6両〜8両編成、東横線は8両〜10両編成です。東急多摩川線を走るには「長すぎ」ます。その解決方法として、「蒲田駅と京急蒲田駅だけ8両にして、多摩川線の途中駅は全て通過する」「多摩川線内は3両のまま、多摩川駅で5両を連結して都心へ」などが考えられます。さらに妄想を膨らませば「多摩川線を全線地下化」になるでしょうか。
もし8両編成で都心やその先、東武東上線、西武池袋線にも直通するのならば、トイレ付き車両じゃないと厳しいかもしれません。そして3両くらいは大井町線のQシート(関連記事)のような着席指定車両がいいなあ。羽田空港の弱点は「必ず座れる電車がない」です。これは京急電鉄の品川〜羽田空港の電車にもお願いしたいところです。
さらに京急電鉄グループに希望するのは、蒲田駅〜羽田空港間のシャトルバス「蒲95系統」の車両を大型化してほしいです。現在は一般的な路線バス車両なので、大きい荷物を積みにくい。高速バス用車両なら大型トランクに預けられます。いっそ、大鳥居駅バス停を通過するリムジンバスを新設していただければうれしい。ちょっとくらい運賃が上がってもいいので。
おっと、乗り鉄を自称する私のくせに「リムジンバスがいい」だなんて、とんでもないことを書いてしまいました……。
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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。日本鉄道全路線の完乗率は100%(2021年4月時点)
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