逆にサメが出ない 純文学的サメ映画「ノー・シャーク」レビュー(1/3 ページ)
高尚な純文学的コメディドラマだった。
サメが竜巻の中から出てきたり、幽霊になったり、頭が6つになったりするなど、世の中にはバラエティ豊かなサメ映画がある。その歴史が繰り返された結果、もう斬新なサメ映画の金脈は掘り尽くされたと思っていた。
だが「逆にサメが出ない」という発想を突き通すサメ映画が現れると、誰が予想しただろうか。それが、Amazonプライム・ビデオで現在レンタルできる「ノー・シャーク」である。
いや、確かにサメ映画の金字塔「ジョーズ」は、前半ではほとんどサメの姿を見せないにもかかわらず(だからこそ)恐ろしくサスペンスフルに仕上がっていたので、サメをぎりぎりまで出さない前例は大いにありえたと言える。しかし、この「ノー・シャーク」では正真正銘、1秒たりともサメが出ないのだ。
そのアイデアだけを見れば「出オチのZ級映画なんでしょ?」と思われるかもしれないが、そんなことはない。結論を申し上げれば「ノー・シャーク」は見る人をはっきりと選ぶ要素はあるものの、意外にコメディーとして笑えるし、純文学のような後味もあり、なんなら唯一無二と言ってもいい感動もある優秀な作品だった。具体的な魅力を記していこう。
超ストイックで見る人を選ぶ
本作を一行で言い表すのであれば、「サメに喰われて死にたいと考えている女性がビーチでひたすらに心情を語る」という内容である。
映し出されている映像のほとんどは、主人公がビーチで海を眺めたり、周りに話しかけたりするという、地味極まりないものだ。音声情報もほぼほぼ内面を語るモノローグのみで、音楽や効果音はもちろん、波の音や話し声すら聞こえてこない。
ひたすらにストイックな内容であり、これだけだと「そんな映画が面白いわけないだろ」と思われるだろう。少なくとも、その特徴の時点で見る人を選びまくることは間違いない。
毒舌ぶりがいっそすがすがしい主人公
だが、個人的には退屈せずに1時間50分という長丁場も耐えられた。その理由の筆頭は、「サメに喰われて死にたい」というゆがんだ自殺願望を持っているはずの主人公が、思いのほか強靭な精神力の持ち主であり、彼女の毒舌ぶりがいちいち面白いからだ。
軽く拾い上げるだけでも、初っぱなからビーチを「猫のトイレ」と言い放つとか、「私は本来は書籍化、ドラマ化、映画化もされる、それだけの価値がある人間だ」と自己肯定感に満ちたことを思い浮かべるとか、一方で自身のパーソナルスペースに近づきすぎた巨乳の女性に「アニメのようにアホみたいに弾む胸だ。スイカみたいなそれをサメに噛まれたら苦しいだろう」と自身の貧乳のコンプレックスの裏返し(?)の罵倒も心の中でつぶやいたりする。この他、ナンパをしてきたガリガリな青年コンビや、サメがいそうなビーチを教えてくれた親切なおじいさんへの言い分もパンチが効いていたので、ぜひ実際に見ていただきたい。
つまり、主人公は高慢かつ不遜で、はっきり他者を見下すこともある、決して褒められたような人物ではない。だが、それが「ここまで来るといっそスガスガしい」レベルにまで達していて、「思っていても決して口にはしない」こともあるためか、あまり不快にはならない。
しかも、周囲に排他的な言動ばかりかと思いきや、ビーチにいる魅力的な女性に対し尊敬の念を抱く場面もあるし、後述する「疎外感」を抱えていることも伝わってくる。ただ高慢不遜でイヤなやつというだけではない、複雑で矛盾を抱えた主人公の内面が、「徐々に分かっていく」ことに面白さがあるドラマでもあるのだ。
良い意味でひどい「ジョーズ」への罵倒
さらに面白いのは、主人公に垣間見えるサメおよびサメ映画についての知見や思い入れのあれこれだ。
関連記事
高級レストランの地獄のような裏側をワンカット90分で煮込んで沸騰させた映画「ボイリング・ポイント」レビュー
労働環境と人間関係の問題を正面から切り取った映画。映画「ゆるキャン△」レビュー 愛に満ちた「社会人物語」の大傑作
環境は変わった、でも変っていない、みんながそこにいた。いや、これは、けっこう良いのでは……? 「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー」レビュー
新キャストもハマりまくっていた。少女が卵を温める、イヤな予感しかしない北欧ホラー映画「ハッチング―孵化―」 最大の恐怖は息の詰まる“理想的な家族”
ホラー版「ドラえもん のび太の恐竜」だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
ダレノガレ明美、韓国でお気に入りのホクロを“ゴミ”だと除去されてしまう 「ドS Dr. ありがとう!」
堂々としすぎ! 浜崎あゆみ、大阪市街を普通にランニング ファンと出くわし「暑さでとんでもない顔してたと思います」
坂上忍、余命数カ月の“13男”・平塚コウタに「奇跡」 転移した腫瘍消失で喜びあらわ 「先生もビックリしてて」
朝日奈央が結婚、お相手との肩組み2ショット公開 「これから家族として、沢山の景色を一緒に見にいける事がとっても楽しみ」
大型犬の大好きなぬいぐるみを洗濯→心配そうに見守っていたが…… 再会したときのとびきりの笑顔にグッと来る 【米】
人気女優の顔じゃない! 川口春奈、ほぼ瀕死のグロッキー状態に心配の声「完全に目がいってます」
柴犬姉妹の“あご乗せ”3連チャン! 顔をぎゅうっとくっつけるかわいさに「ずっと見ていたい」「癒やされる」の声
「『リケジョ』って呼ぶのはやめてください」 高校生4人が性差別の改善を訴える動画制作 ジェンダーに関心を持った理由を聞いた
坂上忍、11歳“長男”・佐藤ツトムの旅立ちに涙 介護の日々経ての別れに「本当にありがとうございました」
子猫の様子がおかしい→動物病院へ行こうと思ったら…… 子猫ならではの結末に「成長している証」「スッキリしたね」
先週の総合アクセスTOP10
- 競技中とのギャップ! 高梨沙羅、キャミソール私服でみせた大胆“美背中”に反響 「背中ガッポリ」「魅惑の黒トップス」
- かわいい妹すぎ! 北川景子、義姉・影木栄貴の結婚で“お姉ちゃん愛”が爆発する 「姉がどこか遠くへ行ってしまう」
- 泣いていた赤ちゃんが笑い声に、様子を見に行くと柴犬が…… 優しくあやす姿に「最高の育児パートナー」の声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「若い君にはこの絵の作者の考えなんて分からない」→「それ俺の絵」 ギャラリーで知らないおじさんから謎の説教を受けた作者に話を聞いた
- 木下優樹菜、元夫・フジモン&娘たちとディズニーシーを満喫 長女の10歳バースデーを祝福
- 黒柴の子犬が成長したら…… 頭だけ赤色に変化した驚きのビフォーアフターに「こんなことあるんですね」「レアでかわいい」の声
- 子「ごめん、もう仕事できない」→母「はぁい了解っっ」 退職を明るく認めた家族のLINEが優しい
- スタバの新作が王蟲っぽくてファンザワつく 「怖すぎる」「キショいから買いたくなった」
- カナダ留学中の光浦靖子、おしゃれヘアのソロショットに反響 「お元気そうでなにより」「別人のよう」
先月の総合アクセスTOP10
- 安倍元首相、銃で撃たれて意識不明か 事件時のものとみられる映像投稿される
- 野口五郎、20歳迎えた娘と誕生日デート 家族同然の西城秀樹さん長女も加わり「楽しい時間でした!」
- 「大阪王将」店舗にナメクジやゴキブリが発生? 元従業員の“告発”が衝撃与える 大阪王将「事実関係を調査中」
- この画像の中に「さかな」が隠れています 猫に見つからないように必死! 分かるとスッキリする隠し絵クイズに挑戦しよう 【お昼寝編】
- ダルビッシュ有&聖子、ドレスアップした夫婦ショットに反響 「ハリウッド俳優やん」「輝いてます」
- 「auの信頼度爆上がり」通信障害でも社長の“有能さ”に驚く声多数 一方で「まだ圏外だぞ…」など報告続く
- スシロー、“ビール半額”で今度は「ジョッキが小さい」との報告? 運営元「内容量に差異はない」と否定
- スシロー「何杯飲んでもビール半額」開始前にPOP掲示 → 注文したら全額請求 投稿者「態度に納得いかなかった」 運営元が謝罪
- TKO木下、海外旅行先で総額270万円のスリ被害に エルメスの財布奪われた“瞬間映像”も公開「くっそ〜……」
- パパが好きすぎて、畑仕事中も離れない元保護子猫 お外にドキドキしながら背中に乗って応援する姿があいらしい