昭和のころ、山陽本線・糸崎駅と三原駅で「駅弁」がよく売れた理由(2/2 ページ)
アイドル並みの人気!? 駅弁の売り子にも「センター争い」があった!
―近年、(営業上は)無人化された糸崎駅ですが、昔は賑わっていたんですよね?
赤枝:糸崎のほうが「街」でした。糸崎は岡山鉄道管理局(現・JR西日本岡山支社)の管内で、ここから三原までで広島鉄道管理局(現・JR西日本広島支社)に変わります。昔は、駅長にもランクがありました。岡鉄管内の1位は岡山駅ですが、続くのが糸崎駅。3位は(四国連絡を担う)宇野駅でした。糸崎駅ではどの列車も、長い時間停車しました。蒸気機関車の石炭と水を補給していたんです。
―とくに年配の方は、糸崎駅での立ち売りの思い出が多いでしょうね。
赤枝:その後も糸崎では機関士が交代するため、列車が停まりました。とくに夜行列車で駅弁がよく売れたと言います。お客様からいただいたお金は、そのまま「たらい」に投げ込んで、勘定もする時間がないほどでした。最盛期には30人ほど売り子が居たと聞いています。当時は駅弁の売り子の間でも「センター争い」があったそうです。長い編成の列車では、真ん中はよく売れますが、端はどうしても売れにくいんです。争いは熾烈だったそうです。
お客様に愛された名物「売り子」
―どんな方が人気だったんですか?
赤枝:昭和の終わりごろ、最後まで立ち売りを務めて下さった丹羽良子さんという女性の方です。小柄でしたが、力はとても強くて、声がよく響く方でした。優等列車の停車がなくなった糸崎では、さすがに駅弁は売れないので、三原駅へ移って立ち売りを続けて下さいました。いつのまにかお客様と仲よくなっていて、弁当を売らずに、重い荷物を持つのを手伝ったりすることもあって、とても人情の厚い方でしたね。
―列車への駅弁の積み込みもあったでしょうね?
赤枝:私が糸崎に来てから驚いたのは、高校野球の応援列車の存在です。西鹿児島からの鹿児島実業とか、常連校になると、応援団がひと列車を貸し切って来るんです。すると1編成単位で駅弁の注文が入ります。「○号車と○号車の間に居るのでお願いします」と連絡があって、そこへ持っていきます。甲子園の試合開始時刻に合わせて運行されますので、糸崎に着くのは、だいたい早朝だったりするんです。
山陽新幹線開業! 松山行の水中翼船との連絡で賑わう三原駅
―昭和50(1975)年の山陽新幹線開業では、やはり大きな影響を受けたんでしょうか?
赤枝:三原駅は三原港に近くて、若い方なら徒歩5分ほどです。東京からの「ひかり」と水中翼船が接続して、四国・松山への最短ルートを担うことになりました。毎時1本の(新大阪以西各停となる)「ひかり」が三原に着きますと、だいたい10分程度ですが、駅弁は大変よく売れました。1本の新幹線で30食〜50食。列車が2本重なると100個くらいの駅弁をお買い求めいただいた記憶があります。
―確かに昭和50年代の時刻表で調べてみると、東京〜松山間は宇高連絡船経由より、三原経由にしたほうが、2時間くらい速かったりしますね。
赤枝:いまは東京直通の新幹線は、ほとんど三原に停まりませんが、当時は東京発着が多かったんです。ですから、昭和63(1988)年の瀬戸大橋開業は、三原の駅弁にとっては、大打撃でした。バブル景気のいちばんいい時代でしたが、駅弁の売り上げが、約1億円落ちました。あの時代の1億は大きかったですね。部長に昇進していた立ち売りの丹羽さんが、「昔はこんなものじゃなかった」と話していたのを思い出します。
瀬戸大橋によって本州と四国が鉄道で結ばれてから、尾道・三原周辺が、改めて脚光を浴びたのは、平成11(1999)年のしまなみ海道開通です。この時期、山陽本線沿線でも、新作駅弁が作られ、浜吉でも大三島の道の駅で弁当を販売したこともあったと言います。そのころから、リニューアルを受け、継続的に販売されているのが「あなごめし」(1390円)。こちらは、ファベックスの「惣菜・べんとうグランプリ2021」で優秀賞にも選ばれています。
【おしながき】
- 味付けご飯
- 焼き穴子
- 香の物
- たれ
ふんわり香ばしく焼き上げられた焼き穴子が、味ご飯の上、一面に敷き詰められています。そのままでいただいても十分に美味しいですが、お好みで浜吉オリジナル・秘伝の甘めのたれを“追いだれ”すると、アクセントが付いて、より深い味わいを楽しむことができるのが嬉しいもの。近年では、浜吉の駅弁を取り扱っている駅売店でも人気の上位にくることも多いということです。
尾道駅を発車した、上りの観光快速列車「ラ・マルしまなみ」が岡山へと戻っていきます。「ラ・マルしまなみ」は、5月に続いて7月も、三原まで延長運転が行われます。三原では週末中心に三原港〜広島港を結ぶ観光型高速クルーザー「SEA SPICA(シー・スピカ)」との乗り継ぎが可能です。1970〜80年代、水陸の結節点としてにぎわった三原のまちを思い浮かべて、瀬戸内の船旅を組み合わせた行程を楽しむのもいいですね。
(初出:2022年6月24日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
おすすめ記事
関連リンク
Copyright Nippon Broadcasting System, Inc. All Rights Reserved.
-
「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
-
大谷翔平、“3000万円超の高級車”ビジュアルに反響 「カッコ良過ぎるねん」「大谷が大きく感じちゃうw」
-
アグネス・チャン、米国の自宅が“度を超えた面積”すぎた……ゴルフ場内に立地&門から徒歩5分の豪邸にスタッフ困惑「入っていいのかな」
-
「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
-
「ハリー・ポッター」の“レプリカ剣”を回収 銃刀法違反の可能性か…… 運営謝罪「申し訳ございません」
-
「車が憎い」 “科捜研”出演俳優、交通事故で死去 兄が悲痛のコメント「忘れないでください」
-
ダイソーのライトを夜の海に落とすと…… 笑っちゃうほど想像を超えてくる釣果に「スゴい」「めっちゃ面白い」
-
ダイソーで販売「グミ」に回収命令……「深くお詫び」 使用不認可の着色料を使用、5万7000袋を回収
-
全国で販売「カシューナッツ」に“鎮痛剤”混入…… 「深くお詫び」 3万5000袋回収、企業が謝罪
-
辻希美の高2長女、“3日前から始めた”編み物作品を公開 手先の器用さが伝わる仕上がりに「3日前に始めたクオリティじゃなくてほんとう器用すぎる」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
- 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
- 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
- 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
- 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
- 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた