物量に圧倒される紀伊國屋書店「今日の新刊」コーナー話題に すさまじい手間でも続ける理由と思いを聞いた(1/2 ページ)
気が遠くなりそうな作業。
紀伊國屋書店 新宿本店2階に設けられている、「今日の新刊」コーナーが圧倒される物量で話題です。思い付いても実施し継続するのはとてつもない手間のはずのこのコーナー、なぜ始めたのか、そしてどのような思いで続けているのか。話を聞きました。
「今日の新刊」は、その名の通りその日の新刊のみを並べているコーナー。「昨日の新刊」コーナーもある他、この一帯「BOOKSALON」には1週間の新刊が一堂に会しています。
「これらを毎日、出してしまってを繰り返していると……日が落ちています」というコーナー。見ているだけでも、その作業量の多さが伺いしれます。
これほどの手間をかけてでも続けるのは、どのような思いからなのでしょうか。紀伊國屋書店に話を聞いてみました。
―― どのようなきっかけで始めたものだったのでしょうか。
紀伊國屋書店: リニューアルオープンに際し、内装デザイナーから「柱を巻くかたちの棚に、本を縦ではなく横に積み上げていくのはどうか」と提案いただいたのがきっかけです。デザインを見た瞬間、パッと浮かんだのが「日々発売される新刊を1列ずつ並べていく」という考えでした。
書店の新刊台に並ぶのは、その日に入荷した新刊のなかの、ほんの一握りです。年間7万点弱の刊行があると、1日平均は200点前後という計算になり、毎日丸っと総入替でもしない限り、入荷した全ての本を新刊コーナーで紹介することはできません。一方で、以前から「できるだけ多くの新刊をご紹介したい」「日々の変化を楽しんでいただける棚をつくりたい」という思いはあり、デザインを見た際に「これだ」と思った次第です。
これは余談ですが、「今日の新刊」「昨日の新刊」コーナーは、社内では「BOOK WALL」と呼んでいる棚です。1階から2階にエスカレーターで昇ってくると、ガラス越しにこのコーナーが見えてきます。「本の壁」に見えるためには、ぎっしり本を詰めた方がよいのですが、1日の新刊の発売量にはバラツキがあるため、そこはあえて調整せず不ぞろいのままにしています。また、ジャンル別にもしていません。「ランキング」とか「イチ押し」とか、そういった「編集」を加えずに、ただ「新刊がこれだけ出ました」という事実だけをお見せすることにしています。ちなみに、雑誌、コミック、極端に入荷部数の少なかった新刊については陳列していません。
―― いつから実施していますか。
紀伊國屋書店: 2階文学売場がリニューアルオープンした2022年4月5日からです。
―― このコーナーに1日に何人で何時間ほどの作業が行われていますか。
紀伊國屋書店: 何人、何時間というのは日々の新刊の量にも拠りますし、回答は難しいところです。
作業は入荷してくる新刊の山から1冊ずつコーナー用に抜き取るのは仕入課スタッフ、並べるのは売場スタッフで分担して行っています。コーナーがなければ発生しない作業ではあるので、効率だけを考えたらできないですね。
―― 利用者からの反応はどのようなものがありましたか。
紀伊國屋書店: 店頭でお客さまから直接お声がけいただく機会はないですが、ぐるっと眺めて回る方、いろいろ本を抜いて立ち読みする方、近くにあるスツールに腰かけてジッと見上げる方、写真を撮る方、「この棚何なんだろうね〜」とお連れ様と話している方、「横に積んであるのって結構好きかも」と言いながら2人で首を横にかしげているカップル、いろんな姿を見かけます。「こう見てほしい」というのはなく、好きなように見ていただき、好きなように感じていただけたらと思います。
―― 撮影OKにしたのはどのような理由によるものでしょうか。
紀伊國屋書店: 本が横向きに積みあがっているのは自宅や古本屋さんではあるかもしれませんが、当店のような新刊書店では珍しいと思います。リニューアルに際し、世界の書店にも類を見ないオリジナルな場所を創りたい、という思いはありました。ネットで大抵のものは購入できる時代にわざわざ来店いただくわけですから、品ぞろえ以外にも来店動機に結び付くような仕掛けがほしいなと。2F BOOK SALONには、他にも「BOOK CLOCK」「BOOKサイネージ」という、ちょっとした遊び心のある仕掛けを用意しているのですが、基本的に4月3日〜4月5に投稿したリニューアル時の告知ツィートを除けば、店側からは情報を発信していません。「いい」と感じていただけたのなら、きっと拡げていただける、そう考えての「撮影OK」です。
画像提供:紀伊國屋書店
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