広島・三原の老舗駅弁店が、空港と福山に「進出」した理由:福原「福山ばら寿司」(1300円)(2/3 ページ)
空港に救われた、震災による長期運休
―平成7(1995)年の阪神・淡路大震災では、山陽新幹線が約3ヵ月ストップしましたが、どのような影響がありましたか?
赤枝:浜吉は広島空港に進出していたお陰で、空港の販路がありそこまで落ち込まずに済みました。逆に伊丹発広島行の臨時便がジャンボ機で運航されたりしましたので、その対応のため、夜通しで弁当の準備に当たったこともあります。当時は、広島空港発着の国際線におけるスーパーシートの特別食なども「浜吉」が手掛けていました。朝6時から夜11時までフル稼働だったと記憶しています。
―一方で新幹線の車内販売も、当時はまだあったそうですね?
赤枝:車内販売は、国鉄時代から新幹線になってもやっていました。「ウエストひかり」はもちろん、平成12(2000)年に「ひかりレールスター」が運行を開始した際は、大変よくお買い求めいただきました。基本は、三原から乗り込むわけですが、岡山〜広島間がメインで、列車によっては、新大阪へ行くこともあったと記憶しています。
突然求められた福山駅への「進出」
―東海道・山陽新幹線は、平成15(2003)年10月のダイヤ改正から、「のぞみ」中心のダイヤになり、福山駅にも「のぞみ」が停まるようになりました。この年、「浜吉」も福山駅にお店を出されたんですね?
赤枝:長年、福山駅の駅弁を手掛けられていた「鞆甚(ともじん)」さんが、年明けに突然、営業を終了してしまいました。私たちも冬の駅弁大会に出ている最中に、出先で知らせを聞いてびっくりしました。このため管轄するJR岡山支社から、売店の経営を含め、福山駅での販売をやってもらえないかと打診があり、約1ヵ月の短期間で、浜吉が福山の駅弁販売を手掛ける格好となりました。
―すぐに福山向けの新作も作られましたね?
赤枝:まず幕の内は、定番の浮城弁当を、「福山」と掛け紙を変えることで対応しました。次は「松茸すきやき弁当」です。広島・備後地方はもともと松茸の産地で、松茸をすき焼きと一緒に食べる食文化があります。逆に松茸のないすき焼きは、もう考えられないほどです。(上半期に開発していったので)実は包装に使っている松茸は、初夏に採れる「さまつ」で、スグに東京に出荷されるため、東京へ飛んで買い求め、写真撮影した記憶があります。
―そして、「福山ばら寿司」ですね?
赤枝:福山市は「ばらのまち」として有名でしたので、「福山ばら寿司」を新たに作りました。(瀬戸内の郷土料理ではありますが)ばら寿司は「駅弁」としては作っていませんでした。でも、仕出し弁当などで作っていてノウハウはあったんです。そこで鞆の浦名物の小鯛を載せて、スリーブ式の包装にバラの花の形を開けて透明な蓋とすることで、小鯛の輝きをバラの花に見立てました。
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