老舗駅弁店のトップが語る、「駅弁」に大切な2つのマストアイテムとは?:広島「漫遊弁当」(1180円)(2/3 ページ)
郷土色と掛け紙のある弁当が「駅弁」だ!
―最近は、「駅弁」と総菜弁当、コンビニ弁当の区別がつきにくいですよね。
赤枝:駅弁ならではの特性を、明確に打ち出していかないといけないと思います。駅弁は「郷土色豊かな食材」で作ったものであり、持ち帰りたい「掛け紙」であることが大事です。捨てられない掛け紙であれば、「あの旅行のときの記念だよ」と、あとから思い出話に花が咲きます。ただ、(食材の高騰や漁業資源の枯渇などで)駅弁に使える食材を(地元産で供給できず)、輸入に頼らざるを得なくなったりしているのは、本当に残念です。
―ニッポンの駅弁を盛り上げていく方法は、何かありますか?
赤枝:力を入れた鯛の駅弁は当たらず、ご飯の上にあなごを並べた駅弁が当たるのが、駅弁の難しいところです。その意味では、手間をかけたものが評価される、しっかり売れる幕の内弁当を作りたいです。例えば、駅弁各社で幕の内をテーマに競作して(幕の内のブランド価値を上げる)取り組みをしても面白いと思います。(開発は)とても難しいですが(駅弁文化を守るためには)大事なことだと思います。でも、ここが駅弁の原点ですから。
瀬戸内海を眺めて「浜吉」の駅弁を!
―赤枝社長お薦め、「浜吉」の駅弁を美味しく食べられる車窓は?
赤枝:やっぱり、広島の駅弁は「呉線」でいただくのがいいでしょうね。三原駅を出てから、須波から忠海にかけて、瀬戸内海を眺めながらいただくのが、いちばん美味しいと思います。とくに、週末を中心に運行されている観光列車の「etSETOra」でしたら、ゆったりと駅弁も楽しめるかと思います。
―これから、どんな「駅弁」を作り続けていきたいですか?
赤枝:「etSETOra」の前身、「瀬戸内マリンビュー」が登場したころ、呉線をテーマにした「瀬戸内さざなみ弁当」という駅弁を作りました。そのとき、浜吉の駅弁の装丁を手掛けるデザイナーさんが、こんな詩を作ってくれました。
- 『波穏やかな瀬戸の海
- 島々を行き交う船を眺める旅は
- なんとものどかで心地よい』
赤枝:この詩に合う駅弁を、これからも意識して作っていきます。
掛け紙をじっくりと眺めて、旅気分を楽しめる浜吉の駅弁といえば、「漫遊弁当」(1180円)かも知れません。掛け紙に描かれている絵は、プロデザイナーさんがイメージを膨らませて描いた絵だということですが、少し前まで呉線を走っていた、2両編成の黄色い電車が、須波付近の海岸を行く雰囲気が感じられて、旅情を誘われます。「駅弁」は食べる前に掛け紙を「愛でる」ことも大事なんです。
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