特急「わかしお」は50年前、房総の旅をどのように変えたのか?:鴨川「うにとさざえめし」(1200円)(1/3 ページ)
2022年、誕生50周年の特急「わかしお」。これまで国鉄になかった短距離を走るカジュアルな特急列車という、新しい概念を取り入れて誕生しました。
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
【ライター望月の駅弁膝栗毛】:あわびちらし
いまから50年前の昭和47(1972)年7月、鉄道100年の節目にできた東京地下駅の開業に合わせて運行を開始した房総東線改め「外房線」の特急「わかしお」号。それまで長距離を走る重厚な存在だった国鉄特急に、短距離を走るカジュアルな特急列車という、新たな概念を持ち込むことに成功しました。内房線の「さざなみ」と外房線の「わかしお」は、房総の旅をどのように変えていったのでしょうか。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第36弾・南総軒編(第3回/全5回)
昭和47(1972)年7月15日、東京〜安房鴨川間で運行を開始した特急「わかしお」号。現在1編成(5両)に来年(2023年)3月ごろまでの予定で50周年記念ラッピングが施されています。運転日時や運転区間はシークレットなので、出逢えるかどうかは運次第。この車内には、懐かしのヘッドマークや写真が展示されている他、記念ロゴが入った専用のヘッドレストカバーが付けられたシートで運行する列車もあるということです。
房総東線(外房線)の電化、そして特急「わかしお」の運行開始に伴って、昭和4(1929)年から、勝浦駅の構内営業者として駅弁を製造・販売してきた「南総軒」は、勝浦に拠点を置いたまま、安房鴨川駅へと進出しました。この鴨川進出の背景には何があったのか。合資会社南総軒の4代目・越後貫薫夫会長に、特急「わかしお」運行開始前夜、昭和40年代前半の、房総東線の構内営業からお話いただきました。
駅弁が売れた大網駅のスイッチバック!
―昔の文献を見ると、勝浦駅には昭和44(1969)年8月まで蒸気機関車牽引の列車がやって来ていて、両国や新宿からの気動車急行も、鴨川まで約3時間かかっていますね。
越後貫:大網駅にスイッチバックがあったんです。いまの大網駅は、カーブ上にホームがありますが、昔の大網駅はいまの東金線のほうへ進んだところにホームと駅舎がありました。千葉から勝浦へ来る列車は、大網で列車の進行方向が変わるため時間がかかりました。大網では列車の停車時間も長くて、駅弁は本当によく売れたと言います。最盛期には、富田屋さんと青木屋さん(後年は駅そばを製造・販売)の2社があったほどです。
(取材協力:大網白里市商工会)
―ほんの少し前までSLが走っていた房総東線は、昭和47(1972)年の夏を前に一気に変わっていったんですね。
越後貫:(昭和30年代の千葉駅のスイッチバック解消に続き)、この年に大網のスイッチバックが解消され、房総東線は電化されて「外房線」となりました。そして、(いまの総武快速線が作られて)東京地下駅が開業し、東京駅から直通する特急列車「わかしお」が走り始めたわけです。このとき、(ひと足早く電化していた)房総西線は「内房線」となって、特急「さざなみ」が走るようになりました。
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