幻の伊勢海老駅弁「波の伊八弁当」に託した、作り手の思いとは?(2/3 ページ)
地の利を活かして、鴨川の米・千葉の魚を駅弁に!
―南総軒の駅弁は、どんなお米を使っていますか?
越後貫:妻の実家が鴨川市内の農家なんです。そこから、長狭米コシヒカリを仕入れて使っています。ご飯はガスの丸釜で炊いています。また最近、鴨川では、福島から新しい品種「五百川」のモミを仕入れ、(温暖な気候を生かし)早場米として作付けし、通常より1ヵ月早く収穫できるようにして、観光客向けにひと足早く「新米」を出す取り組みもしています。このお米を駅弁に使用することもあります。
―魚介系の駅弁が多いですが、仕入れはどのようにしていますか?
越後貫:さんが焼きのワラサ(ブリの子ども)は、地元・鴨川に揚がった魚を使っています。獲れたてを仕入れ、その日のうちにさばいて、味噌でたたきます。味噌漬けにすると保存も利くんです。千葉の他の駅弁屋さんも、「さんが焼き」はやりたかったと思いますが、魚の鮮度がカギなので、難しくて商品化できていません。これは、鴨川の地の利ですね。あわびも地元産を使っていましたが、いまは価格があまりに高く、輸入ものに頼っています。
伝統の味を守りながら、地元の食材を「駅弁」で届けたい!
―駅弁づくりでいちばん大事なことは何ですか?
越後貫:最初に作った駅弁の味を守ることだと思います。材料費の高騰で、味を落としてしまう業者もありますが、それはやってはいけないと考えています。そして、地元の食材を、いかに「駅弁」として仕上げるかという努力が大事です。私は料理に造詣が深くはありませんでしたが、注目される駅弁を作る意識は持っていました。いまは都内の中華料理店で修業した息子に経営を任せましたので、これからどんな駅弁を創作していくか楽しみです。
―創作という意味では、「波の伊八弁当」はユニークですね。
越後貫:この弁当を開発した際は地元の食材を食べ歩きました。大原(いすみ市)でいただいた伊勢海老と蛸が商品化のきっかけです。合わせて、鴨川には江戸時代、波の伊八と呼ばれた彫刻家がいて、町おこしに活かす取り組みをしていました。そこで、伊勢海老と伊八の「伊」、たこの「八」本足をかけて、「波の伊八弁当」(2000円)と銘打って発売し、2016年のファベックス駅弁・空弁グランプリでは、金賞を受賞することができました。
房総の伊勢海老とたこの良さを伝えるために!
―掛け紙もこだわりのデザインですよね。
越後貫:「波の伊八弁当」の掛け紙には、初代伊八の代表作「波に宝珠」を使うことを、この彫刻を所有しているいすみ市の行元寺(ぎょうがんじ)さんに快諾していただきました。「波に宝珠」という彫刻は、のちに葛飾北斎が描いた名作「神奈川沖浪裏」に強い影響を与えたと考えられています。
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