新しい「ひだ」で行く、高山の懐かしい「ボンネットバス」ツアー 「さるぼぼ」の駅弁でお腹いっぱい!(1/3 ページ)
新しいハイブリッド車両の特急「ひだ」と懐かしの「濃飛ボンネットバス」を存分に楽しみます。
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
【ライター望月の駅弁膝栗毛】:さるぼぼちゃんのおべんとう
2022年7月にデビューした高山本線の新しい特急「ひだ」が中山七里を軽快に進みます。HC85系の印象は一言で言えば「滑らか」。
見た目の滑らかな曲線的な雰囲気はもちろん、ディーゼルエンジンでモーターを回して走るハイブリッド式車両ということで、列車の走りも、加速が滑らか。突き上げるような揺れは少なくなったと感じました。車内も静かになって、全席に電源、フリーWi-Fiも完備され、快適な飛騨路の旅が楽しめるようになっています。
新しい「ひだ」がやって来た高山駅前の高山濃飛バスセンターに、珍しいボンネットバスが停まっていました。岐阜県飛騨地方を中心に路線バスを運行する濃飛バスには、昭和42(1967)年製のボンネットバスが約40年前から在籍、期間限定のツアー等で運行されています。今年(2022年)は7月〜11月まで予約制で『昔懐かしいボンネットバスで行く「飛騨高山」里山めぐりツアー』(15名限定・1100円)が開催されています。
今回は、8月に開催された「丹生川方面コース」のツアーに参加。丸みを帯びた車体に、木貼りの床。車内に踏み入れるとタイムスリップしたような感じがします。私はボンネットバスには間に合いませんでしたが、バス窓のある非冷房のモノコックバスにはお世話になりました。昔を知る方には懐かしく、そうでない世代には、新鮮な感覚でバス旅が楽しめます。乗車した日は、平日ながらほぼ全席が埋まる盛況ぶりでした。
高山濃飛バスセンターを発車したボンネットバスは、高山陣屋から古い街並みの周辺をゆっくり通って国道158号を丹生川方面へ向かいます。レトロな街並みにレトロなバスはベストマッチ。高山の街歩きを楽しむ観光客の皆さんも、すれ違うマイカーのドライバーも突然現れたボンネットバスに驚いている様子が印象的でした。そういえば、方向幕の横に据え付けられている“バス時計”も懐かしさを覚えますね。
高山市街から約30分、ボンネットバスは、丹生川町にある「荒川家住宅」で休憩します。荒川家は天正年間(安土桃山時代)から続くという旧家。本屋と土蔵は江戸時代の築で、国の重要文化財に指定されており、無料で見学することもできます。昔ながらの建物と、ボンネットバスもよく似合います。なお、側面には、高山市出身のグラフィックデザイナー・玉賢三氏による、飛騨の四季折々の風景が描かれています。
濃飛バスにも昭和30〜40年代、多くのボンネットバスが在籍していて、夏山シーズンに、乗鞍行きの登山バスとして高山駅前から何台も連なって走る風景は、夏の風物詩だったと言います。今回は観光庁の地域支援事業を活用。9月は朝日方面、10月は一之宮・久々野方面、11月は清見方面への運行が予定されています。濃飛バスによると、9〜10月は、御嶽山や乗鞍岳の風景、11月は紅葉も楽しめるのではないかということです。
ひときわ目を引く、赤いボンネットバスの旅を楽しんだら、高山駅・金亀館の駅弁売場でも、ひときわ目立つ赤い容器の「さるぼぼちゃんのおべんとう」(1100円)を手に取りました。飛騨地方で昔から作られ、縁起担ぎとして有名な「さるぼぼ」が、弁当容器になっているのが特徴。金亀館によると、駅弁の地産地消化を進めるなかで、食材だけでなく、容器についても郷土色を出したいという思いから「さるぼぼ」に着目したそう。スリーブ式の帯には、飛騨弁で「そしゃためらってな!(それではお気をつけてね)」と書かれ、作り手の皆さんの温かい気持ちが感じられます。
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