宇都宮の老舗駅弁屋さんが語る、駅弁を未来へ繋ぐためのカギとは?:宇都宮「駅弁発祥の地宇都宮 御弁当」(1500円)(2/3 ページ)
【おしながき】
- うるち玄米ともち玄米と大豆の味噌焼おにぎり
- 刻み岩下の新生姜入りプレミアムヤシオマスの高菜おにぎり
- たくあん2切れ
- プレミアムヤシオマスの柚庵焼き
- 玉子焼き
- とちぎ霧降高原牛とごぼうのしぐれ煮
- 焼目付き巻きゆば
- 茄子の乳茸出汁含め煮
- かんぴょうの梅マヨネーズ和え
- 蓮根の酢漬け
―ひと足早くいただきましたが、なすの煮浸し、とても美味しかったです!
齋藤:ありがとうございます。あと、栃木の食材といえば「かんぴょう」です。この新作では、甘くクタクタに煮る和風の調理法から脱却して梅肉とマヨネーズという味付けを試みました。かんぴょうの白さを活かした、ポップな仕上がりになっています。今回は、その歯ごたえも含めて、かんぴょうの“新たな食べ方”のご提案が実現できたのではないかなと自負しています。この駅弁は「駅弁味の陣2022」にも参加しています。
地産地消と子どもたちへの食育で、「駅弁」を未来へ!
―「駅弁作り」で、最も大切なことは何ですか?
齋藤:「衛生」ですね。安全な駅弁を提供できないと、弊社だけの問題にとどまらず、駅弁業界全体の問題に発展してしまいますので。そして海のない県としてハンデはありますが、地元の食材をもっと発掘して面白い弁当を作りたいです。駅弁はもともと、地産地消です。私たちがやるべきことは身近なところにあると考えています。駅弁各社がしっかり地域密着を実践していくことが、駅弁全体の盛り上がりにもつながると思います。
―「駅弁」を次の時代につなぐためにどんなことをすべきですか?
齋藤:子どもたちへの「食育」です。昔、幼稚園に提供した玄米のお弁当を、子供たちが憶えていてくれたということもありますが、「宇都宮の弁当は、やっぱり松廼家だよね」と、憶えていてもらえる取り組みを継続していきたいです。今後、益子に移転するにあたっても、まずはそういったところから、町民の皆さんと交流を深めて、地元の味として受け入れて貰えるように努力していきたいです。
日光、那須の山並みを眺めて、宇都宮の駅弁を!
―齋藤社長お薦め、松廼家の駅弁を“美味しくいただくことができる”鉄道の車窓は?
齋藤:列車に乗って、改めてその良さに気づいたのは、栃木の山並みですね。青い空に白い雪がのった日光や那須連山がとてもきれいです。ゆっくりと走る列車に乗りながら、お弁当をいただいたら、とても美味しいと思います。日光線や黒磯方面は、紅葉も美しいですし。あと、栃木・茨城・群馬・埼玉の県境が入り組んだ東北本線の利根川を渡る辺りののどかな風景もいいですね。こちらはグリーン車も連結されているので、駅弁もいただきやすいのではないでしょうか。
宇都宮のまちをあとに、東北本線(宇都宮線)の普通列車がスピードを上げていきます。鉄道草創期から鉄道文化の一翼を担ってきた宇都宮駅の駅弁。鉄道駅の前で、駅弁を作り続けてきた駅弁屋さんもいま、高速道路での物流を考慮した立地へと、大きな変化の時を迎えています。駅弁文化を次の世代へ伝えていくために、できることは何でもやる。鉄道150年の秋、そんな駅弁の魂が詰まった宇都宮の駅弁を、じっくりと味わってみてはいかがでしょうか。
(初出:2022年10月28日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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