「SF映画の使命は未来を守ること」ジェームズ・キャメロンが抱く危機感 「アバター」13年ぶり続編で伝えるメッセージ(1/2 ページ)
劇場文化も「このままでは滅ぶ」と警告しています。
新作映画「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」が12月16日から公開。圧倒的な映像美と、独創的な世界感から全世界興行収入No.1記録を打ち立てた2009年の大ヒット映画「アバター」の続編となる作品です。
メガホンを取るのは前作に引続き、「タイタニック」「ターミネーター」「エイリアン2」と数々の人気映画を送り出してきたハリウッド屈指のヒットメーカー、ジェームズ・キャメロン。舞台となるのは約200年後の未来、地球からは遠く離れた神秘の星“パンドラ”。先住民ナヴィの一員となった元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン演)は、ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ演)と家族を築き、平和に暮らしていましたが、1作目での激闘で追い返した人類が再びやってきたことで生活が一変。神聖な森を出たジェイク一家は、海辺に住む別の一族の集落へ身を寄せることになります。
13年分の技術進化も手伝い、前作とはまた違うパンドラの魅力を描き出す一方で、ジェイク一家の苦難を通じて現実世界とも共通する問題を観客へ提起したキャメロン監督。ねとらぼでは、来日したキャメロン監督にインタビュー。作品についてだけでなく、映画の未来までを語ってもらいました。
「SF映画の使命は未来を守ること」 カイル・リースにも似たキャメロン監督の役割
ーー 「アバター」での地球は見るも無残な状態と言及がありました。「ターミネーター」から振り返っても、キャメロン監督が手掛けた作品の共通点として「こうであってほしくないと望む未来と、希望」が描かれていると感じますが、その意図は?
ジェームズ・キャメロン(以下JC) 未来への希望を失わないことは父親として重要な役割で、望ましくない未来を描き警告とすることがサイエンスフィクションの使命とも考えています。著名なSF作家のアイザック・アシモフは「確かにSFはただの現実逃避だ」と言っていましたが、私はSFがガードレールとして機能することで、私たちが望まない未来へ突き進むことを防ぐことこそが、SFの重要な役割だと考えてきました。
しかし、私はただ警鐘としての映画を撮りたかったわけではありません。美しいと感じられる世界へ観衆を引き込む映画を作りたかった。私たちがただのロボットやただの昆虫であれば、美しいものを見ても何も感じません。海の美しさや、魂のこもったキャラクターに感情移入したことによって心が動き、何かを感じてもらえたらそれこそが“希望”となります。
ーー 監督自身も環境問題には率先して取り組んでいらっしゃいます。そのため「ターミネーター」1作目でのカイル・リースのように、実はジェームズ・キャメロンは悲惨な未来を変えるために送り込まれてきた存在なのではと思うことも。
JC 「アバター」が世界中で受け入れられ、多くの希望を受け取りました。興行収入より、どれだけ多くの人に影響を与えられたかが私には大切です。公開後には、作品に感銘を受けて熱帯雨林や伐採地に暮らす先住民の生活、文化の危機を知り、保護活動へ乗り出した人たちがいます。映画が及ぼす影響の大きさに妄想を抱いているわけではありませんが、現実に「アバター」は一部の人々へ大きな影響を与えました。私自身も例に漏れず「私たちを助けてくれませんか?」とのアプローチを受け、現地を訪れ問題に取り組んできました。
続編ができるまで時間がかかった理由は、こうした持続可能社会の問題に取り組んでいたためでもあります。ファンタジー作品を作るより、現実世界の問題がはるかに重要だと感じたのです。でもあるとき私個人が現地を走り回るより、もっと良い作品を世に送り出すことの方が、より多くのことを成せるのではと思うようになりました。
多くの活動家が努力していても、彼らが何をしているかすら知らない人の方が多い。一方で、私は彼らにできないことができる。私は自分にできる方法で挑むべきだ、「アバター」を作るべきだと思ったのです。
ーー この映画は、外的な事情で家を離れなければならない家族について描いた物語で、彼ら家族の絆を描いています。いわば難民のような存在で、この問題も同じく現代社会を写すトピックですが、描きたかったものは?
JC 仰ったとおり故郷を追われた家族がテーマ。難民の話になりましたね。主人公たちは子どもを授かり育くんできた場所を去らなければならない。ネイティリが育ち、ジェイクが新たな故郷として住み着いた場所、彼らの美しい森。ジェイク一家はそこを離れ、全くなじみのない場所に行かなければなりません。海です。
とても美しく魅力的なものとして描いていますが、ネイティリにとっては自分の居場所と感じられず情緒が不安定になってしまう。きっとネイティリの思いに多くの人が共鳴するでしょう。それぞれの事情があり世界中で避難を余儀なくされた人はたくさんいる。そうでなくとも家族の物語は、誰の心にも響くものです。それは私たちみんなが家族の一員だから。しかしさまざまな事情があり家族を持たない人もいて、家族がいればみんなが幸せという単純な話でもありません。
家庭内での悩みはたくさんあり、最大の問題は簡単に切り捨てられないこと。今回の物語では、父と息子の関係、ジェイクと(次男)ロアクの絆、これは脚本を書く上でも重視したし私にとって重要なポイントでした。取材を受ける中で私自身はジェイクの立場もロアクの立場も経験したと気が付きました。周囲に溶け込めない誤解されがちな子どもとして育ったという意味では、キリのような「自分はみんなと違う」という寂しさも経験しましたし、ロアクのように父は私のことを理解していないと嘆いたこともありました。そして自分の子ども時代から半世紀以上たち、同じことを私は自分の5人の子どもたちを通じて経験しました。
10代の日々というのは誰にとっても困難です。私は60年代に育ちましたが、当時もベトナム戦争、公民権運動、冷戦と十分にひどい時代だったのに、今はかつてないほど悪化している。ご存じのように、今は大変な時期です。困難を抱える10代の若者がこの作品を見たとき「(作品の舞台となっている)200年後、4光年半先には全く別の惑星があり、人々は今の私のように思い悩んでいる。じゃあ私がうじうじ悩むことなんてないじゃない。未来の世界にすら私のような人がいるんだから」と感じてもらえる。それが目標の1つです。
この映画を通して頑張っている10代の若者たちへ伝えたいのは、「I see you(直訳はあなたが見える。ナヴィにとって重要な意味を持つ言葉)」、私たちにあなたは見えているというメッセージ。とてもパワフルなものだと思っています。
関連記事
- 「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」公開 たった1つのシンプルな目標をプロデューサーのジョン・ランドーに聞いてみた
ランドー「オスカー賞の受賞や世界一の映画興行収入は幸運なことですが、私にとっては重要な指標ではありません」 - 「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」12月公開 13年越しの続編に歓喜の声「やっとやるのか」「もう白紙になったのかと」
ようやく! - 「タイタニック」から20年 レオナルド・ディカプリオらキャスト再集合写真に歓喜の声
レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレットと食事ができる権利もオークションに。 - 「ターミネーター:ニュー・フェイト」シュワちゃん72歳がマシンガンをぶっ放すバトルシーン動画公開 負けるなシュワちゃん……!
生涯現役を感じる。 - シュワルツェネッガー、親友ビル・パクストンを追悼 「ターミネーターではパンク男だったな」
「エイリアン2」「プレデター2」「アポロ13」「タイタニック」など数々のヒット作に出演。 - プレスリーはなぜ毒親を断ち切れないまま亡くなったのか「古今東西親との関係は難しい」 “エルヴィス”主演オースティン・バトラー、来日インタビュー
知る人ぞ知る存在から、世界的スターに。 - 「エルヴィスって誰?」 プレスリーを知らない若者にムーラン・ルージュ監督最新作が刺さる理由 バズ・ラーマン来日インタビュー
パンデミック以降、フランチャイズ映画ばかりだったハリウッドに一石を投じる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
-
「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
-
大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
-
「大企業の本気を見た」 明治のアイスにSNSで“改善点”指摘→8カ月後まさかの展開に “神対応”の理由を聞いた
-
「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
-
「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
-
松田翔太、憧れ続けた“希少な英国製スポーツカー”をついに入手「14歳の僕に見せてあげたい」 過去にはフェラーリやマクラーレンも
-
「行きたすぎる」 入場無料の博物館、“宝石展を超えた宝石展”だと40万表示の反響 「寝れなくなっちゃった」【英】
-
スーパーで売っていた半額のひん死カニを水槽に入れて半年後…… 愛情を感じる結末に「不覚にも泣いてしまいました」
-
自動応答だと思って公式LINEに長文を送ったら…… 恥ずかしすぎる内容と公式からの手動返信に爆笑 その後について聞いてみた
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
- 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
- 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
- ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
- 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた