廃業予定だった書店、覆したのは子どもの「やめないで」 営業継続を伝える貼り紙話題に、店主に思いを聞く(1/2 ページ)

» 2023年02月19日 10時00分 公開
[新谷翔ねとらぼ]

 2022年末で廃業しようとしていた書店が「皆様からの温かいお言葉をいただき」経営継続を決意した――そんな店頭の張り紙がTwitterで話題になっています。経営が苦しい中、なぜそのような思いに至ったのか店主に聞きました。

 Twitterで話題になっているのは、滋賀県立美術館館長のkenjiro hosaka(@kenjirohosaka)さんの投稿。横浜市南区の商店街にある弘明堂書店の店頭に張り出された一枚の「ごあいさつ」という画像が投稿に、がんばってほしいというメッセージが添えられています。投稿には約3万5000件の「いいね」が寄せられ、リプライ欄には「馴染みの本屋が廃業してしまうほど胸がかきむしられる思いをすることは無い」「電子がどんどん進出しても、街の本屋さん、残って欲しいですね」と街の書店を応援する声であふれました。

話題になった貼り紙画像提供:kenjiro hosaka(@kenjirohosaka)さん

 張り紙には弘明堂書店を2022年末で廃業しようとしていたところ、「皆様からの温かいお言葉をいただき、出来るところまで本屋を続けさせていただこうと思います」という言葉があります。

 出版不況もあり書店は全国で廃業が相次いでいますが、なぜ経営の継続を決意したのかそのいきさつについて店主の天野日出雄さんに聞きました。

―― なぜ当時廃業を予定していたのでしょうか?

天野さん レジのPOSシステムの更新があり、その経費が数百万円かかることが分かりました。コロナ禍で売り上げの減少もあり、私も高齢のためもう引退の潮時かと思い廃業を考えました。家族経営の小さな書店ですが、50年近く地域の皆さんに愛されて続けてきました。しかし、インターネット販売の影響もあり売り上げも落ちていますのでそろそろ限界かなと思いました。

―― お客さんからどのような言葉をかけられたのでしょうか?

天野さん やはり常連の方からは「残念です」というお言葉を多くいただきました。でも、漫画本をお小遣いで買いに来た小学生に「やめるんだよ」と話したところ、すごく残念そうに「やめないで」と言われたんです。その悲しそうな表情を見たときに、この子は自転車しか移動手段もないのだろう、ネットもまだ使えないのだろうと思ったのです。廃業に際して大人のお客様のお言葉は心配やねぎらいでありがたっかたのですが、小学生の本当に残念そうな表情を見て、この子から楽しみを奪うのかと思うと涙が出てきました。

―― そこで廃業を考え直したのですね?

天野さん やはり書店は地域の文化を提供するシンボリックな存在であると思いますし、そういった自負で経営してきました。確かにレジシステムの更新には多額の経費が必要でした。経営環境は私とパート1人で経営せざるを得ない大変厳しい状況ですが、教科書の取り扱いなどでまだ「ある程度食っていける」と思います。街の文化を守るとまでいえば大袈裟かもしれませんが、廃業をやめたのは子どもたちの喜びを守る「本屋の意地」ですね。


 商売は売り上げを作ることが確かに重要なことですが、店主は取材中「心でやっている」という言葉を何度も述べていました。書店経営は全国的に厳しい状況にありますが、商いの本質は何かを弘明堂書店のこの張り紙は語っているのではないでしょうか。

弘明堂書店(商店街のWebサイト)から
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」