うつを発症し、泣いていると顔をなめてくれた祖父の柴犬 太陽のような明るさに救われ、失った今の思いと感謝とは
「ペットロスとの寄り添い方」第3回は柴犬・クロくんです。
多くの飼い主が一緒に暮らす動物を“大切な家族の一員”として捉え、人生をともに歩んでいます。動物と暮らした時間は長くとも短くとも、深い愛情を持って接した分、飼い主にとって人生のかけがえのない一部となり、別れは深い悲しみとなって心身に押し寄せます。
愛する動物との死別による喪失感や混乱、後悔など、抱えきれないほどの悲しみによって心身が不安定になる状態を指す「ペットロス」「ペットロス症候群」。2022年、全国47都道府県に在住する20〜69歳の男女5000人を対象に実施された「ペットに関する調査(2022年)実態編」では、「困りごと・気になる点」として「死なれるのがつらい」などの理由から「ペットロス」が上位にあがる傾向にあると発表されています。
飼い主にとって非常につらい経験となり、カウンセリングを要するケースもあることから、「ペットロス」「ペットロス症候群」は今、メンタルヘルス上の大きな課題として多くの人が向き合っています。動物とのこれまでの日々を忘れたり、死を乗り越えたりすることはできないかもしれませんが、時間の経過とともに受け入れ、いつかふと思い出したときにあたたかい涙がこぼれるような“寄り添い方”はあるはずです。
そこでねとらぼ生物部では「ペットロスとの寄り添い方」をテーマに、読者にアンケートを実施。寄せられたさまざまなエピソードから、愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事をご紹介していきます。現在動物と暮らしている人や、悲しみの渦中にいる人に寄り添うヒントとなれば幸いです。
第3回 飼い主・アンジュさん/柴犬「クロ」くん
―― クロくんのプロフィールと出会い、思い出や印象的なエピソードを教えてください
アンジュさん:クロくんは1歳のとき、前の飼い主が転勤で飼えなくなり、祖父が引き取ったワンコです。クロくんを引き取る少し前、私は鬱(うつ)を発症していました。
クロくんは私が泣いているときも「散歩に行け!」「なでろ!」と吠え、泣き顔をなめてくる子で、空気が読めない太陽のような明るさに救われました。
引き取った祖父は3年後に他界。祖父の死後、クロくんを見ると祖父を思い出してつらかったため、数年間は会えませんでした。だけどクロくんは私と会うと大喜びしてくれて、申し訳なさとありがたさでいっぱいでした。
―― クロくんと別れてからの心境や、救われた出来事などがあれば教えてください
アンジュさん:クロくんは11歳で虹の橋を渡りました。LINEで報告を受けたとき号泣し、その後も数日間は泣き続けました。もう一度なでたい、散歩したい、会いたい、悲しい、つらいの気持ちでいっぱいでした。散々泣いたある日、クロくんが元気な姿で夢に出てきてくれたことが印象的です。
クロくんを失ってからは、身近にいる動物の命を大切にするようになりました。罪滅ぼしにはなりませんが、私の死より先に来る動物の死に、後悔をしないよう心掛けられるようになりました。
―― 現在の心境を教えてください
アンジュさん:動物を見たときに、めでられるようになりましたが、今でも会いたいです。犬はあなたが一番かわいい。
―― クロくんに伝えたいメッセージ
アンジュさん:どうしても別れは来る。だから、後悔しないようにめでたかった、ごめんね、ありがとう。思い出はいつも暗くても、あなたのおかげであたたかいよ。
(了)
「ペットロス」「ペットロス症候群」になった場合、その苦しみを閉じ込めたり自身を責めたりせず、家族や仲間と共有する、生活に支障を来す場合は専門家のカウンセリングを受けるなど、焦らずに“死”を受け入れていくことが大切だといわれています。
また現在動物と暮らしている人は、「いつかは別れがくる」と理解し後悔のないよう接すること、同じ動物と暮らしている友人や仲間を見つけ、喜びや悲しみを分かち合うことが、いつかくるそのときと向き合う心身の準備へとつながるかもしれません。動物と暮らす喜びをかみしめながら、心のよりどころとなる思い出や関係を作っていきたいですね。
ねとらぼ生物部では、引き続き「ペットロスとの寄り添い方」をテーマにアンケートを実施しています。犬猫、小動物、爬虫類など、動物のジャンルは問いません。愛する動物との思い出や別れ、当時の心境や救われた出来事など、【こちら】までお寄せください。アンケート内容とお写真は部内で審査の上、記事で紹介する可能性があります。
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