変身シーンで振り返るプリキュア20年史 歴史に残る画期的な変身シーン10選:サラリーマン、プリキュアを語る(2/5 ページ)
6.炎の表現が圧巻「キュアスカーレット」変身シーン
「Go!プリンセスプリキュア」(2015年)以降の作品では、「お姫様」「魔法つかい」「スイーツ」など作品自体に明確なテーマが付与されます。それに伴い変身シーンにもそのテーマが反映されるようになり、変身シーンの「物語性」が強く出るようになっていきます。
「キラキラエフェクトの中で可愛くカッコよく変身する」だけではなく、キャラクターの内面描写やストーリーが付与されていくのです。
例えば、「Go!プリンセスプリキュア」(2015年)の変身シーン。
彼女たちが「戦うお姫様」となる変身シーンにおいて、頭に着ける王冠は自動的に装着されるのではなく「自らの意思」で頭に装着します。守られるお姫様でなく、自分の足で立つお姫様へ。そんな意思が見える変身シーンなのです。
そんな「Go!プリンセスプリキュア」の変身シーン中でも「キュアスカーレット」の変身シーンは、炎の演出がとにかくカッコよく派手でファンを驚かせました。
炎からできたクラウンを自ら付け、自らの意思で真のプリンセスへと変身していく彼女。炎を身にまとい体にパーツが装着され、さらに炎が髪に変わっていくシーンは圧巻です。原画は大田和寛氏が手掛けています。
これまでも十分に派手だったプリキュア変身シーンの派手さを更に引きあげ、以降の変身シーンの演出にも大きな影響を与えた名変身シーンなのです。
7.70秒の物語「キュアジェラート」変身シーン
変身職人・板岡錦が原画を手掛けた代表作としてファンの評価も高いのが、この「キラキラ☆プリキュアアラモード」(2017年)の「キュアジェラート」変身シーンです。
「お嬢様」からロックのプリキュアへ。抑圧からの解放としての変身でありながらも、お嬢様を象徴するクラシックバレエから始まり、自身の解放を楽しむように画面を縦横無尽に飛び回り、ジャケットを羽織り両足をしっかり地面につける。片足ソックスを上げてからのメロイックサインでギターをかき鳴らし変身フィニッシュ。
クラシックバレエをリスペクトし、お嬢様であることを否定せずにロックスタイルで変身が終わる。立神あおいの「お嬢様」と「ロック」を両立させていく意思がわずか70秒の変身シーンで描かれているのです。
板岡氏が描く原画は上下左右に動き回り、元気な表情からおしとやかな一面、背中で語る凛としたカッコよさまでが描かれます。板岡バンクの真骨頂は超絶な動きの隙間で見られる「女の子の表情」の説得力なのです。
8.お姉様をも魅了した「キュアショコラ」
世のお姉様方を虜にしたのが「キラキラ☆プリキュアアラモード」(2017年)のキュアショコラの変身シーン。
宝塚をオマージュした演出がとにかくカッコ良く華麗に変身します。重厚な音楽でスタートし、高速な展開でチョコレートから衣装へ変化、その凛々しい表情。手を挙げてのジャンプは演劇のワンシーンのようです。
「シルクハットを指でなでるしぐさ」は宝塚のオマージュ。同じく宝塚を意識した大階段を数歩降りてからの決めポーズ。決して「男装」ではなく、あくまで自分の似合うスタイルを貫く剣城あきらの姿が描かれました。
「演出で魅せる」このキュアショコラの変身シーンは子どもたちだけでなく、一緒に見ているお母様、そしてお姉様たちをも虜にしたのです。
9.歌って変身「キュアミルキー」
「歌いながら変身する」という画期的なスタイルが大きな特徴となった「スター☆トゥインクルプリキュア」(2019年)の変身シーン。
中でも、この変身シーンを見た者は、その圧倒的な動きに必ずもう一度見てしまう」。そう言わしめる程の変身シーンがキュアミルキーの変身シーンです。
「歌」「動き」「エフェクト」「演出」「背景」がこの上なく調和した、プリキュアシリーズを代表する変身シーンです。こちらも原画は板岡氏。
歌とぴったりシンクロした動きの中、波の流れるような動き、画面をタテヨコナナメ縦横無尽に動き回り、カメラも追随して回ります。ときおり見せるアップでのセクシーな表情からプクっと膨れるかわいい表情、自らソックスを身につける自己表現の演出。目が追い付かないほどの情報量が詰め込まれた超絶変身シーン。とにかく一度見てほしいのです。
10.ライブ演出がカッコイイ「キュアスカイ変身シーン」
最後は、最新作「ひろがるスカイ!プリキュア」(2023年)から「キュアスカイ」の変身シーンです。この変身シーンでは「音楽との調和」が一つのポイントとなっています。
もちろんこれまでのプリキュア変身シーンでも音楽との調和は取れていたのですが、今回はそれがさらに一歩前進しました。
変身のシークエンスが進むにつれ、音楽も段階的に盛り上がっていくのです。これまでの変身シーンでは見られなかった「バーチャル空間でのライブ的な演出」によりヒーローに変身していく姿が描かれます。マントを羽織るシーンがとにかくカッコイイ。
3軸回転で超絶高速に動きまくるキュアスカイ。そのカッコイイ変身の合間で一瞬見せる「カッコかわいい表情」にもハッとさせられます。
進化しつづけるプリキュア変身シーン
変身シーンはプリキュアの花形です。
表現的にも、毎年のように進化を続け「もうこれ以上はないだろう」と思った翌年に、新しい表現方法で僕たちを驚かせます。
「Yes!プリキュア5」のときは約30秒だった変身シーンは、最新作「ひろがるスカイ!プリキュア」では74秒と変身に要する時間も2倍以上と長くなり、その情報量も年々増えてきています(アニメ放送時は短縮バンクになることも多いですけど)。
今回紹介したもの以外にも、プリキュアには本当に素晴らしい変身シーンがたくさんあります。どの変身シーンも、そのときの最高の人材がそのときの最高の技術で作り上げ、子どもたちへと届けているのです。
プリキュア20周年。この機会にお気に入りのプリキュアの変身シーンを見返してみてはいかがでしょうか。
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