「VR温泉に入ったらバーチャル湯冷めで風邪ひいた」 メタバースで現実の感覚を覚える 「ファントムセンス」はなぜ生じるのか【バーチャル美少女ねむの寄稿】(2/4 ページ)

» 2023年03月26日 19時00分 公開
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

ファントムセンス実態調査

どんなファントムセンスを感じるか:触覚が45%

 ソーシャルVR国勢調査で「ソーシャルVR体験中に以下のような感覚を感じたことはありますか?」と聞いたところ、数多くのメタバース原住民がさまざまなファントムセンスを感じてる実情が浮かび上がってきました。また、感覚の種類により、感じやすいものと感じづらいものの差が大きいことがわかりました。以下、「たまに感じる」「よく感じる」と答えた方の合計を比較します。

 「落下感(高いところから落ちる時の落下感)」は75%と、やはり一番多くの方が感じていることがわかりました。次いで「吐息(耳元で囁かれた時の吐息)」は53%と、半数以上の方が感じていました。これら二つは先述した通り、VRでなくても日常的に感じる人の多いものですが、VRでもやはり多数の方が感じていることがわかりました。

 これら以外では、「触覚(触られたくすぐったさなどの触覚)」が最も高く、なんと45%と半数近くが触覚を感じていることがわかりました。次いで「ワールドの風(うちわで仰がれた時などの風)」が28%、私が強く感じている「温度感覚(ワールドの熱さや寒さ)」は21%とやや少なく、「嗅覚(食べ物や相手の匂い)」は16%、「味覚(食べ物などの味)は8%」とかなりレアなことがわかりました。

メタバース進化論転載 どんなファントムセンスを感じるか - ソーシャルVR国勢調査

 さらに、これらファントムセンスの種類の間でそれぞれの相関関係を分析した所、全体として似ている感覚は同じ人が同時に感じやすいということがわかりました。例えば、同じ皮膚感覚である「吐息」と「触覚」(相関係数 r=0.57)、空気を通して感じる「風」と「温度」(相関係数 r=0.57)、化学物資に対する受容感覚である「味覚」と「嗅覚」(相関係数 r=0.66)などは、はっきりと「相関あり」と認められました。

メタバース進化論転載 ファントムセンス間の相関 - ソーシャルVR国勢調査

ファントムセンスを感じる部位:頭・顔が90%

 これらのファントムセンスの中でも、アバターの皮膚で感じるメタバースならではの「触覚ファントムセンス」について詳しく見て行きましょう。

 半数近くの人が「触覚」を感じていましたが、実際にアバターの「どの部位」の触覚を感じているのでしょうか? 「触覚を感じた事がある方は部位を『全て』教えて下さい」と聞いたところ、VRChatの場合、もっとも高かったのが「顔・頭」で90%、次点が「指・手」で54%、「胸・腹」が43%、「足」は30%、さらに「物理現実で存在しない器官(尻尾や猫耳など)」が18%でした。

 全体の傾向をみたところ、やはり視聴覚により想起される感覚であるため、視界に映りやすい部位ほど感じやすい傾向が見て取れます。「頭・顔」は自分の視覚に直接映るわけではありませんが、視界そのものなので一番認識しやすいと思われます。例えば、相手の頭を撫でるときなどは、頭の上の方を撫でると相手の視界に映らないため、敢えて手の一部が視界に映るように、顔の正面に近い部分を撫でるテクニックなどがあります。「足」は私は最も感じやすい部位なので、他と比べて低いのはとても意外でしたが、日常的にフルトラをしているかどうかなどが条件として作用しているかもしれません。

メタバース進化論転載 触覚ファントムセンスを感じる部位(VRChat) - ソーシャルVR国勢調査

 尻尾や猫耳などの「物理現実で存在しない器官」については、仮にこれを「クロスモーダル現象」が引き起こしていると考えると、物理現実では絶対に感じることのない触覚なので、一見すると難易度が高そうに思えます。そう考えると、18%はかなり高い数字だと言えるのではないでしょうか(先天性のものにしては数字が大きすぎるので、これが全て「共感覚」とは考えづらいです)。4章の「アバター種族」では、種族別でみると、こうしたファンタジー要素のある人間型「亜人間」が実はソーシャルVRでは人口比で一番多いことを示しました。日常的に猫耳や尻尾のあるアバターで生活している人の脳にとっては、それはもはや物理現実の身体と区別するほどのものではない、ということなのかもしれません。

 次に、「ファントムセンスを感じる部位」をソーシャルVRのサービス別で比較したところ、「頭・顔」はどのサービスでも78%以上とサービスに関係なく感じやすいのに対して、それ以外の部位はサービスにより極端な差が生じました。

 特にclusterは「頭・顔」以外の部位は全て17%と極端に低く、ほぼ「頭・顔」しか感じていないことがわかりました。clusterについては「イベント参加」が利用目的として大きいため、自分自身のアバターを視認する機会も比較的少なく、視界として見える「頭・顔」以外のアバターの身体の部位については、そもそも自分自身の身体であるという感覚が乏しいのではないでしょうか。

メタバース進化論転載 触覚ファントムセンスを感じる部位(サービス別) - ソーシャルVR国勢調査

ファントムセンスとスキンシップ文化

 「触覚ファントムセンス」を感じる割合をソーシャルVRのサービス別で比較したところ、感じる人の割合が「バーチャルキャスト」が50%、「VRChat」が46%と、この二つは高い値を示しました。一方で「cluster」は34%、「Neos VR」は31%とやや低い結果となりました。

 バーチャルキャストとVRChatの二つが特に高い数字を示すのは、5章の「距離感」「スキンシップ」の傾向とよく似ています。これらにおいては、近い距離感でスキンシップをするカルチャーが特に強いため、それが一種のファントムセンスの訓練となり、感じる人が多くなっているのかもしれません。

 一方で、clusterとNeos VRは、2章で見たようにクリエイティブ用途やイベント参加など、ユーザー同士でのコミュニケーション「以外」の目的で利用するユーザーも多くいます。結果に差がついた理由には、そうしたユーザーはあまりファントムセンスを感じるような局面が比較的少ないということも考えられます。

メタバース進化論転載 触覚ファントムセンス(サービス別) - ソーシャルVR国勢調査

ファントムセンスの鍵は「想像力」?

 さらに、「触覚ファントムセンス」を感じる割合とユーザーの「総プレイ時間」を比較しました。すると、プレイ時間が短いうちは時間が長くなるほどに感じる人の割合が増えていくのですが、500時間以上のユーザーでちょうど50%に達したのちは頭打ちになり、そこから先はプレイ時間が長くなっても大きく伸びることはありませんでした。5章で「恋に落ちた」や「恋人できた」が総プレイ時間とのはっきりとした相関を示していたのとは非常に対象的です。

 つまり、一定時間のプレイで触覚ファントムセンスを獲得できるユーザーは半分だけというわけです。ただ漫然とプレイしていれば獲得できるというわけではなく、なにか時間以外にも必要な要素がありそうです。

メタバース進化論転載 触覚ファントムセンスとVRプレイ時間 - ソーシャルVR国勢調査

 触覚ファントムセンスを獲得するための条件はいったいなんなのでしょうか。さまざまな調査項目と相互に比較を行ったところ「触覚ファントムセンス」を感じる人の割合と相関関係が特に高かったのが「スキンシップ」(相関係数 r=0.35)と「恋に落ちた」(相関係数 r=0.33)の二つであることがわかりました。これら二つははっきりと「相関あり」を示していました。

 これは完全に仮説ですが、キーワードは「想像力」ではないでしょうか。「スキンシップ」と「恋」に共通するのは、これらが相手が必要なアクションであるということです。そして、ファントムセンスの中でも「触覚」は他の感覚と比べ、アバターの身体感覚と特にはっきりと結びついた感覚です。つまり、触られる自分自身のアバター、そしてそれ以上に、それに触れる相手のアバター、それらを強く意識する「想像力」が必要な要素なのではないでしょうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/05/news190.jpg 「本当に迷惑」 宅急便の「不在連絡票」と酷似のチラシが物議…… ヤマト運輸「配布中止申し入れ」
  2. /nl/articles/2503/06/news108.jpg 「雨の日は大活躍」 ワークマンの“2900円ジャケット”に称賛の声が続出 「春先の外出に役立ちました」「言うことなし」
  3. /nl/articles/2503/05/news016.jpg 愛猫が見つめる先にいるのは……? “まさかの来訪者”に思わず仰天 「うそっ?」「お庭に来るんですね!!」
  4. /nl/articles/2503/06/news107.jpg 「まじで神商品」 かっぱ寿司が販売している「まさかの110円メニュー」に仰天 運営が明かす“意外な需要”
  5. /nl/articles/2503/04/news040.jpg そうはならんやろ ヤマト運輸公式とLINEで遊んでいたら…… 突然訪れた“予想外の展開”に28万いいね
  6. /nl/articles/2503/06/news026.jpg 【ダイソー】A4額縁にマグネットシートを入れるだけで…… 2児ママの天才アイデアに「こういうのほしかった」「感動」
  7. /nl/articles/2503/06/news018.jpg 朝起きて“ディズニーにいる”と気付いた3歳娘が…… 抱きしめたくなるリアクションに「やばい泣く」「一生の思い出だ」
  8. /nl/articles/1611/04/news117.jpg 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  9. /nl/articles/2503/04/news027.jpg 壊れて捨てるしかないバケツをリメイクしたら…… 想像もつかない大変身が830万再生「想像力がすごい」【海外】
  10. /nl/articles/2503/03/news065.jpg 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 【べらぼう】“問題のシーン”、「子供に見せられない」 身体張った27歳俳優へ「演技やばくない?」
  2. 40代女性、デートに行くため“本気でメイク”したら…… 別人級の仕上がりに「すごいな」「めっちゃ乙女感出てる」
  3. 30年以上前の製品がかっこいい ソニーの小型ラジオのデザインが「すごい好き」「いまでも通用しそう」
  4. 幼くてかわいらしい兄妹が4年後…… 同じポーズで撮影した“現在の姿”に「これはあかん」「よすぎて声出ました」
  5. 「早く買えば良かった」 無印の1490円“本格せいろ”が690万表示の反響 「ほぼ毎日使ってる」「まっっじでいい」と感動の声
  6. ごはん炊き忘れた父「いいこと閃いた!」→完成した弁当に爆笑「アンタすげぇよ!」 息子「意味ねぇことすんなよ」
  7. 使わなくなった折りたたみ傘→切って縫うだけで…… 驚きのアイテムに変身「こうすればよかったのか!」「見事」【海外】
  8. 高3女子「進学を機にイメチェンしたい」→美容師に依頼すると…… 仕上がりが「すげえええ」「鳥肌立ちました」と1000万再生
  9. とんでもない量の糸をくれた先輩→ママがお返しに作ったのは…… 完成した“かわいいアイテム”に「絶対喜ばれるやつ!」
  10. 「洗濯機が壊れた!」→修理を頼む前によくよく調べてみると…… 「えぇ〜」“まさかの原因”が200万表示「何度もやりました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に