「VR温泉に入ったらバーチャル湯冷めで風邪ひいた」 メタバースで現実の感覚を覚える 「ファントムセンス」はなぜ生じるのか【バーチャル美少女ねむの寄稿】(3/4 ページ)
強くなる感覚と弱くなる感覚
ファントムセンスはプレイするほど強い感覚になっていくとは限りません。
2021年に情報処理学会ヒューマンコンピュータインタラクション研究会で「2021年度学生奨励賞」を受賞して注目された、慶應義塾大学の國武悠人さんの研究「HMD利用経験の有無がVR空間における落下感覚知覚に与える影響」では、「継続的にHMD(VRゴーグル)を利用したことのない」グループと「継続的にHMDを利用している」グループに分けて、感じる「落下感覚」の強度を比較しました。結果、実はVRを利用したことのないグループの方がより「強い」感覚を感じることがわかりました。
このように「落下感覚」は「触覚」などの事例と異なり、VR経験者の方が感覚が弱くなることが知られています。ソーシャルVRなどでは、現実より遥かに高いところからジャンプして飛び降りたり、ビルからビルへと飛び移ったりすることが日常茶飯事です。こうした経験の繰り返しにより、落下感覚がなくなるわけではないものの、ある程度非日常的な落下感覚に「慣れてしまう」といったことは原因として考えられます。
ファントムセンスを「生やす」方法
アバターの身体で感じることのできる「ファントムセンス」、みなさんもぜひ感じてみたいと思ったのではないでしょうか。ファントムセンスはトレーニングや催眠術により後天的に感覚を強めることができることが経験的にわかっており、ソーシャルVRの原住民の間では俗に「VR感覚を生やす」などと呼ばれています。
ファントムセンスを「生やす」トレーニング手法としては、5章でも解説した「スキンシップ」が最も知られています。ソーシャルVRなどでは、感じやすい頭や顔を中心に、友達に繰り返し手で撫でてもらったりすることで、触覚ファントムセンスを開発するトレーニングのような遊びがよく行われています。また、焚き火のワールドで温かさを感じるなど、「ワールド」を利用して一人でできるトレーニング方法もあります。
「クロスモーダル現象」は経験によって生じる感覚です。「想像力」を駆使しながらこうしたトレーニングを行うことで、物理現実における感覚の記憶がメタバースにおけるアバターの感覚に徐々にリンクしていき、ファントムセンスが生じていくものと考えられます。
コラム:催眠セラピーによるファントムセンス開発
催眠術を用いた専門家によるファントムセンス開発も行われています。VRヒプノセラピスト「Pyloricom(ぴろりこむ)」さんは催眠を使ってファントムセンスを開発する独自のセラピーを世界に先駆けて仮想空間内で多数行ってきました。「ヒプノセラピー」とは催眠を使って行うセラピー療法のことです。日本ではあまり知られていませんが、アメリカなどでは催眠療法は科学的見地から有効な治療法として広く認められています。
Pylorycomさんは「アメリカ催眠士協会(NGH)」の認定ヒプノセラピストで、仮想空間で行う催眠療法「VRヒプノセラピー」を受け付けています。対人関係やストレスなどさまざまなセラピーを行っていますが、実は現在ほとんどの依頼はファントムセンスの開発で埋まってしまっているらしく、アバターの身体のまま実施できる仮想空間のメリットを生かして、日々多くの人にファントムセンスを生やしているそうです。
Pylorycomさん曰く、必要な時間や獲得できる強度に差はあるものの、適切な催眠療法を行えば基本的には誰でもファントムセンスは獲得できるということでした。
これまで見てきたように、メタバースの原住民は「ファントムセンス」によって、アバターを通してさまざまな感覚を感じ取り、他の住人とコミュニケーションをしたり、メタバースの世界を感じ取っていることがわかりました。さらに、その感覚を開発したり強めたりする試みも行われています。もはやアバターは既に、私たちが世界を感じ取るための「感覚器官」であると言っていいのではないでしょうか。
今私たちが感じている「ファントムセンス」はほんの始まりにすぎません。その感覚や活用はこれからますます広がっていくことでしょう。
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